2章 52話 魔導書の価値はおいくら?
下水道を彷徨うどのくらいの時が経過したであろうか。
整備も殆どされていないこともあり、悪臭が立ち込めていて長く居続ければ病になりそうだ。
スラム在住で悪臭に慣れているオストでさえも、いい加減気が滅入ってくる。
ソボックなどかなり前から口数が減っていて、明らかに体調に異変をきたしている。
そんな中、悪臭に負けず元気な者が一人。
「よっと!」
「グギャァ!?」
軽い調子で繰り出される前蹴り。
革命派の男はそれをモロに喰らうと、生き物が潰された様な声をあげて壁に激突する。
「ほっと!」
次は防御がガラ空きな男の頭をボールに見立ててオーバーヘッドシュート!
ボールはデジャヴのように音を立てて壁に突き刺さる。
最初の集団と戦闘してから数度目。
情報が行き渡っていないのか、こりもせずに毎度シナの実力を前に絶望的な敗走をしているのだが、毎度変わり映えもなく襲ってくる。
こうなると、オストの緊張もほぐれてきており、一対一であれば対応できるようになってきていた。
シナなど、二度目の襲撃辺りで「ちょっとした遊びをしようか」と口ずさんでから、剣を使わずに素手で相手を始めていた。
それどころか、まだ足りないと四度目からは、足だけで戦っているくらいだ。
もはや見慣れた驚いき顔の革命派は、慌てふためきながら武器を構えを取る。
流石に不謹慎と言うべきか、空気を読めていないと言うべきか。
シナはニコニコとして楽しそうにこそ見えるが、実のところ結構前からこの状況に飽きていた。
「君たちちょっとしつこすぎじゃない?いい加減あきらめてくれないかな」
構えを取ろうが、足だけで戦うというハンデを付けようが結果などみえているのだから。
蹴りであろうと一撃必殺を誇る威力を前には、革命派に許されるのは逃亡か死かの二択しか無い。
相手がいっそ哀れだと思いながら、オストは半ば発狂して襲ってくる男に意識を向け直す。
剣と剣でが重なり合い金属特有の音が鳴り響き、オストの剣が弾かれその隙を見た男が切り込んでくる。
「ふッ…!」
「ぐぁア!?」
だが、それはあえて作った隙だ。
短く息を吐きながら振るわれた一刀は、男の脇腹を深く切り裂く。
次、と集中を途切らせずに周囲の把握を努めると、撃ち漏らしである別の男が向かってきていた。
今切った男もそうだが、オストがある程度戦えると分かって以降、シナはわざと敵を流している素振りがある。
それに気が付いてからは、どうせ全員倒せるなら倒して欲しいと文句を言いたい所ではある。
しかし、自衛のために心優しい?革命派から貰った剣をシナから渡されており、それも言いずらい。
幾ら苦手な相手とはいえ、助けられている分際で文句を言うほどの恥知らずでは無い。
それでも不満は幾分があるのだが、次の革命派にもしっかりと殺意があると感じ取ると、一旦置いておくこととする。
よく観察をすると男の顔は恐怖一色に染まっており、冷静には見えない。
戦いにもやっと慣れ体も温まってきた。
なら、先手を取ってみるのも悪く無いと考えると、駆けてくる相手に初めて先に剣を振るう。
とは言え、相手も多少なりとも訓練を積んで武装をしている。
恐慌状態でも、男は命の危機となる攻撃を剣で受け止める。
軽く響く金属音に男がフェイントだと気が付き、しまったと顔を歪める。
そうなれば、実力が差して変わらない者同士の対決となれば勝敗は必然。
オストは剣を素早く引き戻すと、余裕を与える間も無く胴体を切り付ける。
苦痛に男が声を上げて倒れると、それが最後の一人のようでシナがパチパチと拍手を送る。
「オストくんが動けるのは知ってたけど、思ってよりやるね」
「やめろ。お前に褒められても世辞にしか聞こえない」
「そんなことないんだけどなぁ」
一人で数十人を蹂躙出来る者が言えば、オストで無くとも世辞に聞こえるだろう。
それはソボックも同じ気持ちなのか、何とも言えない苦笑いを浮かべる。
世辞と言うのもオストは、謙遜では無く事実だと思っている。
確かに、ある程度鍛えていて筋力は一般人に比べると高いの間違いない。
しかし、戦いを専業としている者と比べれば間違いなく下であり、オストを戦闘階級に当てはめるなら下級くらいだ。
今でも空いた時間でラフスに稽古をつけてもらっているが最初は兎も角、最近は強さに伸び悩んでいる。
原因もはっきりと分かっており、身体強化魔法と呼ばれる戦いにおける必須技能が使え無いこのだ。
オストには魔力はあるのだが魔力操作の才能が壊滅的に無いために、並外れた力の行使が出来ない。
本業は鍛治師なので、ゴロツキに勝てる程度の実力があるだけにそこまで問題にもならないので困ってはいない。
だが、オストには強くなれる才能が無いことの証明でもある。
だからこそ、シナの褒め言葉に照れる素振りすら見せない。
「ソボックは大丈夫か?」
「はい、お陰様で怪我ひとつありません。そんなことより、シナさんが言うようにすごいと思いますよ!僕なんて守られるだけですし…」
「そりゃ、仕方ないだろ。むしろお前の方が凄いだろ。こういうのに慣れてないだろうに、俺が守りやすい位置取りしてただろ」
「そうだね。視野が広くてよく動けてたよ」
オストとシナのベタ褒めに、なんとも歯がゆい思いをして頬をかく。
ソボックは困ったような顔をしているが、実際に敵が襲って来た時の場所取りは完璧で、毎回敵と自分の間にオストが来る位置取るように移動していた。
さらに、オストは気がつけていないが敵が攻撃する瞬間に物を投げるフリをしたりと、些細なことではあるが手助けもしていたりする。
こう言った荒事が苦手なのに加えて、慣れている風には見えないのだが、不安げだった表情とは裏腹に非常に冷静かつ的確な行動だった。
なにより、オストとしては己の身を弁えているのが非常に好印象であった。
なにかと人助けをしたりしているので、彼は人を庇うといった場面が多少ある。
そういう時に、勝手に逃げ出されたり逆に変な行動に出られたりすると、大抵事態は良く無い方へ行くものだ。
余計なことをしないだけでも上出来だったのだから、正しく守られることが出来ただけで満点なのだ。
「くどい様だけどオストくんも本当にいい動きだったよ?少しは自分を誇りなよ」
「お前に言われても嫌味にしかきこえねぇよ」
「シナさんと言う通りですよ。僕なんて後ろでかくれているので精一杯で…」
「そんなことねぇよ。それに、俺みたいなのは荒事に慣れてるだけだ。スラムじゃ自分の身は守れないと死ぬだけだしな」
「それでも凄いですよ!戦ってる姿もカッコよかったですし」
そう言われると、才能が無い身とは知りながらもオストとて嬉しい物だ。
しかし、ソボックの目には格好良く見えても、内心かなりやばかった。
(はぁぁぁ、剣術少しでもラフスに習って感謝だな。場慣れしてるだけじゃ強くなんてならねぇよ!死ぬかと思ったわ!)
と言った具合である。
荒事に慣れているとは言ったものの、怖く無い訳では無いのだ。
本当は愚痴の一つや二つ言いたいところだが、自分よりも弱いソボックを見ていると不安よりも、守りたい気持ちが勝った。
だからこそ、クールぶっているのだ。
心の中で粗方弱音を吐き出し、改めて気持ちを引き締める。
「それより、シナ。ここはあとどのくらいで抜けられる?」
「もう直ぐだよ。と言うより、革命派が近くにいたからそれを潰すためにこっちに来ただけで、さっき通り過ぎたよ?」
「それを先に言え…!」
こんな劣悪な環境で喋り続けても良い事などないのだから、照れ隠しを兼ねて先を急かす。
実際には通り過ぎた後とは。
言わんとすることは分かるが、それでも一言欲しかったとオストは声を低めて返す。
そうして、シナが言った通り少し道を戻り別れ道に出ると、先程行かなかった方へ行く。
曲がって少し歩くと心無しか匂いが和らいでゆき、さらに進むと微かにだが風や物音などの外の気配がしてくる。
悪臭のする石レンガで出来た、ボロい下水道の中を歩き始めてから早数時間。
「そろそろか?」
「そうだね。早く出て外の空気が吸いたいよ」
「臭いもキツイですし早く出たいですね」
数度にわたる革命派からの襲撃を乗り越え、久々にすら思える外に、オストは引き締めた集中は緩めると心がふわつく。
ソボックもゴールを感じらると、少し早足気味となる。
唯一変化が無く、下水道の悪環境をものともしていなかったシナでさえ少し足が早くなる。
そうしてたどり着いた先には、隙間だらけの古びた扉が姿を表す。
「はい、とーちゃく。あ、因みに遠回りした場所だから革命派は居ないと思うよ」
外に出れるのは嬉しいが、外に革命派がいないか一抹の不安があったオスト。
そんな心情を見抜いているかの様なシナの物言いに、ビクリと肩を揺らす。
大切なことを言わない秘密主義に振り回されている身としては、多少思うところがあるが今はそんなことよりも一刻も早く外の空気を吸いたい。
シナが扉を開けると、そこはどこかの地下室と思われ薄暗い。
元々視界の悪い場所にいたと言うのもあるだろうが、地下にも関わらず真っ暗では無いのは階段から刺す光のお陰だ。
やっとの思いで外に出ると、数日ぶりとも思える新鮮な空気を味わいながら吸い込む。
こうすると、自由って素晴らしいな…とらしくも無いポエミーなことを考えてしまう。
ソボックも解放感から大きな背伸びをし、外の偉大さを全身で味わう。
「二人とも感動してるところ悪いんだけどいいかな?」
各々が外の偉大さを噛み締めていると、シナが呼びかける。
何だと、二人して状況を理解していない様な顔で振り向くと所を見ると、感動で大切なことを忘れてるなと苦笑する。
「ボク達革命派に追われてる状況は変わりない訳なんだけど、この後どうする?ここで解散するか、ボクと一緒に行動するか。一緒に来るなら話の続き、出来る範囲の質問に答えるけど」
そういえばそうだった。
異臭や視界の悪さ、狭いとこの圧迫感など、ストレスになることからの解放で忘れかけていたが、状況は変わってないのだ。
念の為にソボックの方を見てみると、同じ様に見返す。
取る道など素手機に決まっている。
「お前と行動するのが一番いいだろ。癪だけどな」
「何をするにも、僕達には情報が足りません。それに、少し怖いですけどシナさんは信頼できると思います」
「え、怖い?」
ここまで来て、シナと別れるのはどう考えてもあり得ない。
得体の知れなさに恐怖がありはするが、それ以上に頼れることは下水道で行動するうちに分かっていた。
それに、ソボックが言ってように情報が無ければ何もできない。
目の前に情報源があるのだから、これを活用しない手は無い。
「よし、決まり。話は歩きながらしようか。因みに、ゆっくり話ができる場所とか無い?ボク土地勘ないから、無ければ適当な廃墟になるんだけど」
「それなら良い場所がある。そこに人も待たせてるだろうしな」
「おっけー。案内大丈夫?」
「ああ、ここは知ってる場所だから大丈夫だ。ソボックも取り敢えずそれでいいか?」
「はい、問題ありません」
特に異議が出ることもなく話が纏まる。
オストは人気の無いラフスの縄張りを思い浮かべると、そこを提案する。
そうして、案内することになると先頭をシナと交代して歩き始める。
「で、聞きたいことは何かな?」
「そうだな。まず、結局お前が何をしたいのか知りたい。さっきは肝心なことは聞けなかったからな」
「うーん。ボクとしては、教団へ嫌がらせ。簡単に言うと革命派の計画を潰すことかな。これが一番丸く収まりそうだしね」
今までの話から、シナの目的は何となく当たりはついていたが、改めて聞くとやはりと言う思いを抱く。
そして、オストとしてもその話を聞いたからには、見て見ぬ振りは出来ない。
良心や義心からと言うのもあるが、仮に内戦を今起こされれば多くの被害が出る。
それは自分であり、罪の無い多くの一般人だ。
何より、多少この国の情報があれば、一回の内戦すら耐え切ることは不可能であることは目に見えている。
「そのちょくちょく出てくるクロフォード教団ってどんな集団なんだ?」
「宗教団体だよ。覇神を主神として崇めているけど、実際はテロが大好きな邪教だね」
「覇神を崇める宗教なんてあったのか」
「それは僕も初耳です。邪教なのは有名な話でしたが」
「活動内容が基本テロだし布教もしてないからねあまり知られてないね。それに他の覇神信者はテロ集団と同じ神を信じてます、なんて公言しにくいからね。そもそも、覇神が加護や祝福をくれる事なんて滅多にないし」
かつて神が地上で暮らしていた時。
人の愚かさに怒り狂い、滅ぼそうとした当時の主神。
太古の昔、たった一柱で現在の主神である創造神を含む多くの神々と地上の生命を相手取ったと言われていた。
その隔絶した強さから戦闘階級に神の上、覇神級なるものを作らせるに至った正真正銘最強の神と言われている。
現在、主神が創造神セフィラトラだというところから分かるように敗れこそしたが、それでもその座が揺らぐことはない。
そんな覇神であるが、知名度に反して崇められていると言う話はあまり聞かない。
一説によれば封印されている為や、そもそも創造神に討たれた、人が嫌いな為になど色々な推測があるが、分かっていることとして加護を与えることがないと言われている。
神が存在しているこの世界において、何もしない神など居ないに等しいために、信仰の対象になり得ないのだ。
それを知っているからこその発言だが、シナの言う通りクロフォード教団などがあれば、存在していても言い出しにくいのは納得だ。
「気になる事があるんだが、クロフォード教団はなんでこんな何も無い国で動いてるんだ?お前らの言い方から世界中で悪さをしてるんだろ?」
「悪さじゃ片付かないけど、まぁいいや。目的は単純に戦いを起こす事だよ」
「なんだそりゃ」
疑問に返ってきた答えは、何とも要領を得ないものだった。
意味が分からないというのもあるが、なんて傍迷惑なと言う思いが強い。
「これは今話した覇神の加護の話に繋がるんだけど、結論から言って教団の狙いは覇神の加護持ちを探す事なんだよ」
「どういうことだ?」
「覇神の加護持ちって性格が歪んでる事が殆どだから、こういうので結構炙り出せるんだよね。他にも戦争でおかしくなった人が加護をもらう事もあるし、戦争を起こすのが手っ取り早いんだよ」
「なんだ、その迷惑すぎる話は…」
「全くですね…」
話を詳しく聞いても全く理解が出来ないと、オストは辟易する。
つまり、クロフォード教団が革命派に手を貸しているのは、覇神の加護持ちを探し出す為と。
ん?
頭の中で纏め、やはり纏めても酷い理由だと呆れているとふと閃く。
足がピタリと止まり、その不審な様子にソボックが心配そうに名前を呼ぶ。
そこで、ハッとオストの意識が戻ると大丈夫だと答える。
それよりも、もしかしなくてもこれ…
「なぁ、もしかしてこの本が革命派の手に渡らなきゃ、解決じゃないか?」
「うん、そうだね」
うぉぉぉおお!??
それが分かると、途端に本が重くなった様に感じる。
元々凄い物だと薄らとでも理解していたつもりだが、改めて明確に気がつくと見方が変わる。
この国の運命が今まさに、オストの腰にくっ付いていると思うと尻すぼみしてしまう。
変な冷や汗がどっと流れるのを感じるくらいに。
「ど、ど、ど、どうする…?これ、どうする??」
「お、お、お落ち着いてくださいっ!し、深呼吸!?」
「お、お前こ、こそ落ち着け!」
「いやいや、二人とも落ち着いて」
グサリ。
ブリキの人形二体に、シナの貫手が鳩尾に刺さる。
グハッ!?と強制的に息を吐き出す二体は、その場に膝を突いてえずく。
「ゴホッ!ゴホッ!何しやがる…!」
「深呼吸できなそうだったから手伝ってあげたんだよ。少しは冷静になった?」
シナの急な攻撃に、オストは苦情を入れるがひらりと躱される。
言うことはもっともなのだが、もっと穏便に済ませられる方法は無かったのだろうか。
冷静を取り戻すよりも先に怒りを蓄積したオストは、その内からなず殴り倒す!と心に誓いながらも息を整える。
「シナは後で殴るとして」
「なんでよ」
「胸に手を当て考えろ。それより、この本どうするか。捨てる…のは勿体無いな。…魔導具だし、高く売れるか」
「売るんですか!?」
悲しいかな。
人生を通して常に貧乏な生活を強いられているオスト。
そんな彼には、高価なものを捨てるという決断はとてもでは無いが下せない。
ここにきて下心が出てしまい、ならどうするかとなった時、売るのはダメなのだろうかと悪魔が囁く。
国の運命よりも、明日のご飯の方が大切なのだ。
その発言に、ソボックは声が裏返ってしまう。
それとは対照的に、シナはお腹を抱えてクックックッと笑いを堪えていた。
「クククっ。そう、だねっ…。死霊魔法の魔導書だし、人によっては国家予算だってだすだろうね」
「コッカヨサン?こっか…?国家…よ、予算…!?…いくらだ?」
「虹貨一枚くらい?」
「虹貨??」
「あー、そうだなぁ。金貨は分かる?」
「ああ…」
シナの口から出た、知らない硬貨の名前。
オストはわからなそうにするのを見て、一般人には通じないかと考えを改める。
この世界に流通している硬貨の単位は銭貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、光金貨、虹貨、大虹貨、黒貨の順に高価になる。
この内、大金貨から上は貴族や商人などの裕福層しか使うことはおろか、みることさえ叶わない。
普通の一般人の常識では、硬貨など銭貨から金貨までしか知らないのだ。
その為に、シナは一番有名で価値のある硬貨を出すと、流石のオストでも金貨くらいは知っている。
「一万枚」
「何が?」
「金貨」
「一万枚で金貨と同じ額なのか?」
「いや、金貨一万枚」
「そうか、これが金貨一万枚…一万枚?」
キンカイチマンマイ…
きんか。
きんか…
きん…か…
金貨一万枚ッ!!?
オストの人生史上聞いたこともない様な単位。
その衝撃に歩く足が止まり、石像の如く固まる。
再びシナの貫手が鳩尾に入り、涙目で咽せることとなるが今度は注意するどころでは無かった。
思い返すは今までの貧乏生活。
苦しいこともあったが楽しかったなと思えるくらいには不満に思っていなかったが、想像を絶する大金を前にすれば流石に霞む。
「売ろう」
「ちょっ、オストさん!!」
「売れないよ?」
「え?」
これを売れば億万長者。
夢を見せられた人は、目の前の誘惑に弱い。
だって人間なんだもの。
即断でオストは売ることを決意すると、再びソボックが正気かという目を向ける。
しかし、硬い意志が揺らぐとはない。
俺は…お金が…欲しいッ…!!
そんな鋼の意志なのだが、シナの一言で綻びを見せる。
「だって、その魔導書オストくんから剥がせないし」
なんだって?




