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日常を諦めません

最終話です。当社比…どれぐらいだか知らないけど、ちょっとボリューム感(字数だけ)アップです。内容はいつも通り…。



お姉さんの光の魔法と神聖の魔法の前に、手も足も出なかった。召喚する魔物は一瞬にして浄化され、死霊魔法は無効、精神系も呪術系も同様だった。


フェイントも罠も偶然のヒットでさえ、真実の魔法の前には意味をなさない。すべてが把握されてしまうのです。


「お姉さん、もう許して…。痛いのはもう嫌…殺してください」


完全に心が折れた。ドクロの杖も消失している。魔女っ子ローブもボロボロだ。


「そうね。私は茜ちゃんに嫉妬していないし。茜ちゃんを殺せば、すべてが終わり、私も死ぬ。最後に、誰が私を導いていたか、教えてあげましょう。もう気付いているかな?


”世界の要”であり”魔法の要”よ。つまり”要”は限界で崩壊寸前だった。増える人口、汚染される地球、それらを抱えるために消費する魔力…。だから地上から人類を消し去る計画を実施するため、金剛寺 忍に白羽の矢を立てた。でも師はできなかったのよ。偽善者だから…。


それに業を煮やした”要”は、一条 茜に忍を殺すことができる力”死霊の魔法書”を託した。でも師の巧みな誘導と茜ちゃんの優しさにより、計画は進展しなかった。でも残り少ない魔力で打つ手がない”要”は、私の心の闇に付け入ったの…その先は、もう知ってるわね。


そして全人類の膨大な魂を抱える茜ちゃんが、”要”に、自身の魂を託せば、世界の崩壊は防がれるというわけ。これは知ってるよね? じゃ、なぜ私が出てきたか? それは魔法使い・魔女を正しく導かせるため…。そのために茜ちゃんを殺し、”要”に魂を補充し、世界を救ったという実績が必要だと”要”は考えているのね。


でも、私は、茜ちゃんを殺し、その魂を浄化してしまう…。”要”なんかに絶対に渡さないわ」


私の目の前に、お姉さんが立つ。悲しそうな顔で笑い、とどめを刺そうとしていた。


私では絶対に勝てない。私では…。


お姉さんにとどめを刺される前に、魂をほんの少しだけの残しながら、その殆どを触媒にして、最後の魔法を連続で唱える。”死者の降臨”、”死者の棺桶”、”死者の復活”…。


死霊魔術とは異なる真紅の魔女っ子衣装…。燃え上がるよな赤に白い羽の刺繍。ラグビーボールほどの大きさのルビーが浮く真っ赤な杖…。それらが神々しく太陽の光を反射していた。


お師匠様の衣装…。その魔女っ子衣装を着衣する理由は…世界に金剛寺が本気だと示すとき…。


一条 茜は、魂の殆どを、金剛寺 忍の復活に使った。肉体に宿る金剛寺 忍の魂と器官があればこそできた奇跡だ。残されたカスのような魂には、全人類の膨大な魂が紐づく。


「この馬鹿が…なんてことを…」


”お師匠様、ごめんなさい。最後の最後で、逃げちゃいました。へへへへへっ”


「さて、美羽。お前にも辛い思いばかりさせてすまなかったな」


「ひぃっ!!!」師の姿を見るや否や、踵を返し走り出すお姉さん、背中に光の翼を顕現し必死に逃げようとする。


「私は化物ではないぞ…。さらばだ。我が弟子よ…。審判の爆雷!!」


超魔導級戦艦大和の自爆と審判の爆雷の爆発に飲み込まれた、美羽は跡形もなく消滅する…。


「さて、茜。私には、お前を救ってやりたいが、復活させる魔法はない。このまま、お前の魂を”魔法の要”に差し出すぞ…。すまないな…駄目な師で…」


”はい。お師匠様、私の計画通りです。へへへっ。”

「馬鹿が、もっと悲しめ」


”それよりも、音海ちゃんは、師匠の卵子で作った子供ですからね。ちゃんと育てて下さいよ?”


「作った言うな。わかってるさ。感謝している」


”それに、私の計画は、これだけじゃありませんからね。早く、要にぶちこんでください”


お師匠様は、掌よりも小さい青い宝石のような”要”に私の魂を移す…。


***** ***** ***** ***** ***** 


茜の容姿で、真紅の魔女っ子衣装。トーストラリアにいるその衣装の意味を知る者は驚く。


「一条 茜の肉体だが、魂は金剛寺 忍だ。それよりも、今後だ。みなの意見を聞きたい」


真のリーダーは、私ではない。やはりお師匠様がぴったりだ。


***** ***** ***** ***** ***** 


元艦長のマイケルと結婚した忍は、第二子を出産した。立会出産のため夫も子も一緒だ。


取り出した子を抱きながら、夫のマイケルは、音海ちゃんに見えるようにしゃがんだ。


「おお〜。わたしの子ね! わかるかな? お姉さん、音海ちゃんだよ」


「妹、かわいい」と4歳になる音海ちゃんも大喜びだ。


「ふっ。私にも見せてくれ」疲労した声で忍が言った。


忍と赤ちゃんの目線が合う。赤ちゃんはニコリ笑い「帰ってきましたよ、お師匠様!」と言った。



日常物が書きたかったのに、いつの間にか、いつも通りの展開に…。


もっと、こう…何ていうんだろう? こじんまりした魔法使いで良かったんじゃね? と思う。


第二章は蛇足中の蛇足でしたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。

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