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(ⅩⅩⅣ)黒き剣を手にレグナスは立ち上がる

「やっと言い争いも終わった事だし本題に入ろうぜ」


「本題?まさか、これからの事についてか」


 本題という言葉にピクリと反応を示すレグナスにザインは自信満々に口を開く。


「その通り。これからはエイジをリーダーとした新たなる組織として使徒に立ち向かう。無論、平和を目指してな」


「ふ~ん、平和ね。私の場合、エイジと二人で居れるならどうでも良いけど」


「100年前に滅ぼされた生命体が蘇ったのか。俺達は随分と厄介な存在に巡り合わせたな」


「ちょっと、私の話を遮らないでくれるかしら!」


「黙れ」


「おいおい、これから力を合わせていこうという時にこんな調子じゃ、チーム崩壊も時間の問題だな」


 もう、そろそろ見飽きてきた二人の言い争いを事前に止めてから今後の目標についての事を伝えるとレグナスは暗い顔を浮かべている。一体どうしたのかな?


「レグナス、何かあったのかい?」


「お前には関係無い」


 駄目か。こうなるといつか時間がある時に聞いておいた方が良いかもしれない。今はただそっとしておこう……と決意を決めた直前にレーナがレグナスに何が起きたのかを詳細に伝える。

 どうやら、レグナスは途中の大規模な戦いで剣が粉々に砕け散るのと同時に力を失っているらしい。


「黙ってないで正直に吐けば良いのよ。恥ずべき事は何も無いわ!」


「ちっ、余計な事を言うな」


「それは本当かい?」


「本当だ。レーナが話した事は間違いなく事実。嘘は無い」

 

 レグナスの持つ青き剣の力は消滅となると、やはりレーナの力で使徒に立ち向かうのが最善だ。


「君はレーナと力を合わせるんだ。君ならきっと彼女を上手く使いこなせると思う」


「……正直、俺の呪いは解けたから戦う理由なんて物は存在しない。だがアイツには負けたという屈辱をリベンジ出来るのならレーナを有効に扱わせて貰う」


 レーナはギロリと怖い表情でレグナスを見るが、当の睨まれた本人は気にせずにくつろいでいる。

 さて、次に僕がやるべき事はスノウの安否だ。

 母の事などで事態に追われていたから、すっかり抜け落ちていたのは僕のミスだけど……無事で居てくれ。

 僕はポケットからタブレットを取り出してスノウに連絡を入れる。


「頼む」


 1コールに2コールに3コールといつまでもなり続けていき最終的には留守番電話へて移行する。

 僕はスノウに伝言を伝えてから通話を終了すると隣でクレインが心配そうな顔を浮かべている。


「スノウに何か異変があったのかもしれません。エイジ、ここは一刻も早く向かうべきです」


 スノウに何か起きたらまずい。またとんでもない事が起こる前に助けに向かわないと!


「おい!いつまで、この場所に居座るつもりだ?」


 次の目的が定まった僕は皆の正面に立ちあがり、目的を伝える。


「今からユニバース王国に向かう」


「理由は?まさか……お前のお姫さんか」


「うん。個人的な事情で申し訳無いけど、僕はスノウの安否を確認したいんだ。出来れば付き合って欲しい」


 レグナスとベルは快く承諾しない。その代わり、レーナとザインとクレインは大いに賛成してくれた。


「リーダーはお前だ。俺はお前の言う事に従うぜ。スノウの安否を確認してから、奴等との決着をつけるぞ」


「あの糞女に出会えるのなら、賛成。ふふふふっ」


 取り敢えずレーナはどこか離れた場所で待機させておこう。直接スノウとレーナが鉢合わせをすれば、結果的にどうなってしまうか目に見えている。


「決まったのなら、行くぞ。こんな荒れた場所に居座っても使徒とやらは顔を出さないからな」


「ちょっと、単独行動は!」


「はぁ、分かった」


 今は迂闊に一人で歩かずになるべく集まって行動した方が良い。剣を持たないレグナスは特に。


「よし、さっさとユニバースに行って無事かどうかの確認をしてから戦いを終わらせるぞ」


 後もう少しで僕達の力をお前達使徒に実力を見せてやる!それまでは首を長くして待っていろよ、イスカリア!

 刻一刻と迫りかかる戦いに向けて僕の思いはより一層強くなっていくのであった。


 この先に信じがたい光景が待っていたとしても。


※※※※


 ジェネシス王国と回りを囲んでいる王国の中心にある大陸の真下にある薄暗い地下で大きく空洞が出来ている一ヶ所に巨大な城がある。

 ユダヤは城の扉を開いて奥の部屋へと進んでいき、イスカリアの待つ部屋へ入る。


「よく戻ってきたな。身体中にアザは出来ているみたいだが……大きな事故は無くて安心したよ」


「イスカリア、すまない。私が不甲斐ないばかりに」


「ユダヤ、報告を聞きます。詳細に伝えなさい」 

 

 イスカリアの側近の人物にユダヤは詳細に伝えると目的が達成出来ていないのか、呆れている表情を表に出す。


「やれやれ、ユダヤでさえ目的を達成出来ずにノコノコと戻って来られるとは」


「そういうシモンは目的のエイジを見つけたのか?」


「いや、見つけられ無かったよ。あったのはアンドロの無惨な死体さ。哀れ哀れ」


 適当に嘆いている男を余所にイスカリアは何かを決意した表情で高らかに叫ぶ。


「もはや、無駄に待つ時間は終わりだ!これからは我々の真なる時代を作るべく本格的に世界を終わらせる!その為には憎きレグナルドを引き継ぎしエイジの絶大的なるルナが必要不可欠!」


「見ましたか?現在イスカリアはいきり立っています。私達は互いに力を合わせてエイジを捕らえる事に全力を尽くさなければならないのです」


「だが肝心の材料が無ければ動けない。何とかしてエイジがルナを出すように仕向けなければ」


 僅かばかりの沈黙が城内に漂うが、しばらくして何かを思い付いたのかシモンはクスクスと笑い出す。


「ふっ、良いことを思い付きました。確かエイジ・ブレインは白い髪を腰まで伸ばしている女らしき人物と仲良く歩いていたと生前のバルトが仰っていました。という事は……」


「なるほどな。つまり、その白い髪を持っている人物を拉致すれば」


「いや、拉致なんてつまらない。私なら……彼女の心を操る」


 ユダヤの意見に真っ向から切り捨て、自ら赴く事に立候補するシモンにイスカリアは快く承諾すると同時に中央の廊下に立ち大きな魔方陣を空中で絵描きながら宣言する。


「新世界の幕を開く為、我々は滅びの行く末を眺める!」


 イスカリアの叫びと同時に地下の空洞に建てられていた城が地下を突き抜けると同時に地上へと姿を表す。


「中々の絶景ですね」


「これはまだ序章に過ぎない。シモン、まずはお前が実行する策を速やかに実行しろ。残った私とユダヤはあらゆる群れの召還獣を味方につける。それからは……滅びの時間を緩やかに見守るだけだ」


「では私が帰るまでは良き報告をお待ちください」

 

 準備が出来たシモンはイスカリアに別れの挨拶を済ませると速やかに地上へと降りていく。

 そうしてポツリと残ったユダヤはイスカリアが見下ろしている所の隣に立つ。殆どの国が謎の生物とクロノス聖団の連中が武器を持たない人達を無差別に殺している姿を。


「もうすぐだ、もうすくで我々が望むユートピアが垣間見える!」


 イスカリアの望む世界は刻一刻と迫ってくるのであった。


※※※※


 地面が大きく揺れているのか車内はグラグラと忙しなく揺れると同時に車の定員の事情で剣に変貌させておいたクレインが何かを感じ取ったのかすぐに心の中で伝え始める。


(エイジ、何やら地下でとんでもない質を感じます)


「質?とんでもないという事は、それなりに大きいの?」


 何かが地上に姿を現したのかな?今の所、窓から覗き込んでも全く見えないけど。


「どうした?心配事か」


「エイジが心配事!?エイジ、私に包み隠さずに報告しなーー」


「黙ってろ」


 レグナスの淡々とした一言でヒートアップしたのか、またもや

レーナが怒り出すがレグナス本人は全く気にしていない様子で車の天井を眺めながら深い眠りに入る。なんというか……レグナスは大した度胸がある人物だと思う。

 レーナは自分の意に沿わない反論など言ってくる相手に対しては本格的にイライラすると良くない方向へと流れていく。だからその点、レグナスは一向に変わらない程の堅いタイプだからレーナとは微妙に釣り合う。

 僕は心の中で安心感に浸ると車は突然止まる。余りにも急ブレーキだった。どうしてこんな急に止まったんだろう?


「ザイン、どうかしたの?」


「正面を見れば分かるさ」


「あぁ、これはヤバイな。まさか、俺の想像を越えるとは」

 

 前屈みで正面の方をじっくりと窺うと、そこには巨大な穴があった。確かにこのまま進んでいたらもう少しで取り返しのつかない事が起こるかもしれないからザインの判断は的確と言える。

 けれど車内から、召還獣の鳴き声がこちらに押し寄せてくる。これはかなりまずい状況だ!


「こっちに引き寄せられてんのか!」


「車内に居たら、車ごと潰されるぞ!」


 僕を含めた一同は速やかに車から離れて、だんだんと近付いてくる群れの召還獣に僕は車内で予め剣の状態にしておいたブレイズ・セイバーを身構えると遥か天空にそびえ立つ城が浮いているのが見えたと同時に召還獣に囲まれている状況になったと同時に一匹の召還獣が放つ光線のお陰で一瞬にして車は廃車となる。


「こいつら……どうやら制御されてるみたいだ。目玉の色がおかしい」


「それよりも俺が頑張って購入した自慢の車がぁ」


 すまない、ザインがようやくの思いで買い上げた車は落ち着いてから弁償するよ。


「喚くな。今はこいつらに集中しろ」


 召還獣は100年前に研究者達が平和維持システムとして使徒と共に造り上げた物。召還獣はさまざな種族で、現在では上手く交渉すれば味方になってくれる。

 だがどうにもベルの言う通り目の色がおかしい。通常なら赤い目をしているのに今はレーナと同じく紫の瞳でこちらを睨み付けている。


「突破するぞ!」


 これより先は進ませる気は無いのか。だったら僕は立ち向かうだけだ!


「クレイン、ここを正面突破してユニバース王国に向かうよ!」


(分かりました。私の力を存分に使って下さい!)


「愛しきエイジの為、私はあらゆる手を使ってでも手加減無しで壊してあげる!」


 レーナはやる気に満ち溢れた表情で空を舞うと四方八方に取り囲む召還獣に黒いトゲを背中に展開している黒い羽から一斉に射出して黙らせるも、操られているお陰か妙に打たれ強くなった召還獣は地に足をつける。


「へぇ~。私の攻撃であろうが立ち上がるなんて、随分と粘るわね」


「だったら、俺の銃弾と!」


「俺の雷撃を味わえ!」


 ザインとベルの息を合わせた攻撃により大半の召還獣は大ダメージを与えられるものの、やはり立ち上がる。


「くそがっ、なんで沈まないんだよ!」


「無理矢理に制御されているからか。普段ならこれで大抵の敵は泡を吹いて一件落着なんだが」


 こうなったら、一か八かの強力攻撃で沈めるしかない!この状況から早く離脱する為にも!本当はは身体の中に潜めらしルナを温存して置きたかった所だけど仕方ない!

 覚悟を決めた僕は四方八方に囲んでくる召還獣の前に立ちはだかろうとすると、僕の後ろでじっくりと落ち着いて待機していたレグナスが呼び止めた。


「こいつらはお前の実力なら簡単にぶっ倒せるかもしれないが……お前は先にユニバース王国に行ってこい。この場は俺とレーナで片付ける」


「なんで私が含まれているのかしら?」


 レグナスは目で先に行けと合図を送る。ここは僕とクレインだけでも終わらせようと思っていたけれど、任せるべきかもしれない。こうして囲まれてる状況でもスノウの身に何かが迫っていたら、取り返しのつかない事態に陥るから。


「そこまで言うなら……任せた。レーナの力は強大で暴走チックな所もあるけれど、あらゆる事態でも冷静に対処出来る君なら使いこなせると信じている!」


「分かったから、さっさと行け!」


「ありがとう!」

 

 レーナは隣に立っているレグナスを差し置いて僕の元に向かおうと試みるも、すぐにレグナスに無理矢理に掴まってしまったので結果的に僕に付いていくという事は出来ずに終わる。そんな状況の中、レグナスはレーナをしっかり見つめて説得する。


「来い、今の俺にはどうしてもお前の力が要る。例え呪いが失われ戦う理由が無くなったとしても」


「あなたごときに私の偉大なる力を使いこなせるとでも?」


 レーナは素直に指示を聞かない。その間にも迫ってきているというのに。こうなったら、レグナスには悪いけど……


「俺がお前の力を最大限に振るってやる!それでもわがままがあるなら終わってから聞いてやる」


「そこまで言うなら……私を失望させない事ね」


「保証は出来ない。俺はお前が望むエイジでは無いからな」


 レグナスの言葉に負けたレーナは今度は素直にレグナスに手を差し伸べる。

 すると紫の髪を腰まで伸ばした妖艶な少女は黒き剣へと形を変えて新たなる力が宿ると、レグナスは数回素振りをしてから一気に加速して正面で行く手を阻む牛や猪タイプの召還獣をいとも簡単に蹴散らす。


「ここは俺とレーナで食い止める。お前達はエイジと一緒にユニバース王国に行け」


「レグナス……分かった。任せる!」


「おいおい、こんな状況でおいてけぼりはーー」


「この状況じゃ、レグナスが適している!さっさと行くぞ」


 僕を含めたザインとベルは召還獣が沢山囲んでいる状況から突破してユニバース王国へと目指す。レーナと手を組んだレグナスにこの場を任せて。

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