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(ⅩⅩⅠ)因縁の幕開き

 真夜中の時間帯に差し掛かっているせいか思っていた以上に殺伐としていやがる。

 俺が遠征任務に出ていなかった頃辺りは店や人が騒がしいながらも楽しく行き交う街の印象が強くイメージに残っているが、それはもう嘘のように消え失せている。

 俺はいつまで寝ていたんだ?そんなに長く寝ていないとは思うが念の為、ベルに聞いておくか。


「俺はどのくらい寝ていたんだ?」


「約一週間。お前はこの悲鳴が喚く状況の中で随分とスヤスヤした表情で眠っていたぞ」

 

 一週間寝ていたのか。俺が目覚めるまでにジェネシス王国は完全に崩壊へと誘われた。

 多分この状況だとクロノス本部はおろか以前通いつめていたジェネシス学園も跡形もなく崩壊しているだろう。


「崩壊させた奴の正体は未だに分からないが、こんな事を平然とやってのける奴の事だ……恐らく俺達に戦争を仕掛けたキング以上だと思っていた方が良いぞ」

 

 キングか。確かに奴は想像以上の戦力で俺を困らせてくれた。中でもビショップとかいう野郎にはかなり手こずったが。


「噴水広場は原型を留めていないか」

 

 もはや何の建物なのか分からない。周辺にはひび割れたコンクリートに有象無象に身体が冷めきっている遺体が沢山並んでいていて中には子供を抱えながら死んでいる母らしき人物も唇を噛み締めているような表情で息絶えている。とはいえ肝心の抱えられている子供も呆気なく死んでいるが。


「酷い事をしやがる。なんでここまでの事を平然とやってられるんだよ」

 

 理由は分からない。分かる筈もない。


「だが唯一はっきりとこれだけは言える」


「それは?」


「このジェネシス王国を崩壊へと導いた人物は相当の屑野郎だと言う事だ」

 

 哀れみすらない非人道的なやり方には俺でも殺意が湧く。こんなやり方をする人物をみすみす逃す訳にはいかない。


「まだ近くに居るかもしれない。俺はもう少し辺りを散策させてもらうが、ベルはどうする?」


「俺もついていく。もしかしたら生存者がこっそりと生きているかもしれないしな」

 

 こんな状況で生きている奴が居るのか?まぁ……最初から居ないなんて判断するのは良くないから、ベルの言っている事に賛成しておく。


「分かった。それじゃあ、行くぞ」


「あいよ」

 

 息をしている人間が居るかは分からないが生存していたら詳しい話を聞いてみるか。実際に何が起きてこうなったのか知っておきたいからな。


「悲鳴は止んだが、お前が寝ている間は随分とそりゃあ酷いもんだったぜ」

 

 道中歩きながら俺はベル話に耳を傾ける。話によると未だに信じられないが俺達が所属していたクロノス聖団の団員の殆どが敵のコントロール下に入り、そこらで何事もないようにのほほんと歩いている人達が斬り殺されているらしい。

 しかもよりによって死んでいる遺体から良く分からない不気味な黒い人のような形をした物体が思い思いに自由に散らばり、勝手な行動を繰り広げている。もはや俺が止める方法は無い……強いていうなら安らかに旅立たせる事だろう。


「生きている人は限りなく無に近いかもしれない。けど生きている人が今でも怯えながらも潜んでいたら」


「助けるか。全くお前は、案外お人好しなんだな」


「お前はもう少し感情を持った方が良いぞ。そっちの方が好感度がグッと上がる」

 

 この性格は小さい頃から引き継がれているから、そう簡単に直せるかよ。


(レグナス~)

 

 たくっ、一体何のご用だ?つまらん事で呼びつけたら許さねえぞ。


「何だ?」


(近くに生きている人の声が僅かにだけど、聞こえるよ。助けに行った方が良いんじゃないかな?)

 

 お前に聞かれずとも助けに行くさ。わざわざ生き長らえている人を放置する訳にはいかないからな。


「どうした、何かあったのか?」


「俺の中に潜むライアが近くで生きている人間をキャッチしたらしい」


「ほう、それは朗報だな!」

 

 辺りをくまなく走り回りながらも散策していくと、人が余り通るのを躊躇してしまいそうな裏の細い路地でブルブルと身悶えている人物を発見する。

 どうやら無事に見つけれたが、少々面倒な奴を見つけたようだ。早く手短に片付けるとしよう。


「あんた、何故そこで震えている。こんな所に隠れていても死ぬだけだぞ」


「怖いんだよ。調査に行ったは良いけど……まさか、得たいの知れない召還獣に追い回されるなんて。もう逃げたい気分だよ」

 

 こいつ、調査目的でこの街におめおめと来やがったのか。哀れな奴だな。


「でも君が居るなら、助かった。どうか私を街の外まで連れて行ってくれ!」

 

 俺の身体にすがりつくな。気持ち悪い。


「良いから、離せ!」

 

 怒鳴り付けると男はすぐさま離れ、プライドを投げ捨てた土下座をする。


「お願いだから、助けて。もう調査仲間の人も喰われたから私しか生き残っていないんだ!それに何としても、この情報を王国全てに発信したい!」


「あんたの目的なんて俺にとってはどうでも良い」

 

 正直、調査だろうが何だろうがあんたの目的に眼中は無い。


「そんなぁ」


「だが、息をしている人間を放置する程俺は人でなしになったつもりは無い。だから、俺の背中に付いてこい。出口までは案内してやる」


「ありがとう」


「礼は終わってからにしろ。まずはベルと合流して二人がかりで出口まで駆け抜けてやる」

 

 目的が決まると俺はすぐにベルをタブレットで呼びつけて合流させると先程まで怯えていた男が自ら自己紹介を始める。


「私はムカイ・ヤマト。全王国のニュースの一部を現地で調べてお届けしている者だよ」


「俺はベル。短い間になるが宜しく。それとそこで無表情で俺を呼びつけた男の名前はレグナス・ハート。非常に無愛想だが根は良い奴だから悪く思わないでくれ」


「余計な事をべらべらと語るな。さっさとその間抜けな記者を出口まで案内するぞ」


「はいはい、了解」

 

 裏路地を抜け、出口まで向かうにはやや複雑な道を抜けてから中央の噴水広場へと向かう。

 それからは真っ直ぐに進めば自ずと出口に辿り着く。


「それにしても大変助かりましたよ。こんなにも心強いベルさんとレグナスさんが居てくれて」


「そう言ってくれると何か照れるな」

 

 おかしい。どうしてこんなに堂々と歩いているのにも関わらず敵が襲ってこない?


「どうした?また考え事か?」


「お前ら、気づかないのか。余りにもこの場所が静けさに満ちていると」


「考えてみたら確かにおかしい。さっきまで随分と暴れまわっていたが、レグナスが目覚めてからは一向に見ていない……!?」

 

 周辺の地面から黒くて不気味な物体が俺達を囲んでいる。くそっ、先手を打たれたか!


「俺がぶっ潰す!ベルはその頼りないムカイを出口まで連れて逃げろ!」


「レグナスさん」

 

 そんな場所でおろおろとされていても意味がない。この場は俺一人で切り抜けて、ベルには男を出口まで連れていってもらう。

 もっとも、ベルなら俺がはっきりと告げなくても意図を理解すると思うがな。


「ここで、固まっていても邪魔なだけだ!さっさと行け!」

 


「分かりました、あなた達の事に関しては必ずやニュースに取り入れます!」


「勝手にしやがれ」

 腰にぶら下げている鞘から剣を引き抜き、ライアの力を借りて青く透き通った色の剣を周囲に構えて睨み付けて出口を塞いでいる敵を容赦無く斬り倒すとその隙を見計らってベルとムカイは出口まで走り抜ける。

 後は出口まで向かわせないように全員容赦無く殺す。


「行かせるつもりは無い。お前らはこの場で間違いなく俺に殺されるからな!」

 

 襲い掛かってくる正面の敵を華麗に斬り伏せて、後方からやって来た奴には蹴りを入れて地面に張り倒す。

 そして最終的に俺の回りを囲んで襲ってくる連中に素早く斬って終わらせる。


(レグナス、まだ湧いてくるよ!)

 

 無限に湧いてくるのか。


「このままやっていても体力が持たないだけだ」

 

 どこかに術者は居ないのか。もしかしたら俺が注目していなかった場所に居るかもしれない。

 敵をぶっ倒しながら、ふと上空を見上げて未だに倒壊していない建物をチラリと眺めると気になる人影が俺の目に写る。


 真夜中の満月に照らされた薄い青髪をした人物が!!


 足は勝手に噴水広場の近くに建っている高い塔に足を伸ばす。道中湧いて出てくる敵を剣の一閃で吹き飛ばし、とにかく奴が座っている場所へと向かい建物の壁を地面を歩くように素早く走って頂上に到達する。

 やはり、あの夢の中に出てきた男に違いない!

「ちっ、アンドロめ。しくじったか」


 溜め息をついているのか。


「砂が舞う国に居たのか。そこまで逃げていたとはな……私も動くとするか」


 そうはさせるかよ。ようやく見付けたんだ!俺は……ここで。


「てめえを見た。夢で朧気だったが、記憶にあるのは薄い青髪。何よりも……お前のその声は聞いた事がある!」


 俺に呪いを与えてのうのうと生きているお前だけは断じて許さない!


「ほぅ。何者かと思ったが、久しき再会を果たせたな」

 

 振り向くと、俺がぼんやりと見ていた夢からはっきりと写し出される。男は殺意を向けられている状態であろうが平然と笑いだす。


「幼き頃から俺に殺意を持っていたとは。随分と熱心だな。それでこそ私が、唯一夢中にさせてくれた男だ」

 

 今ならはっきりと分かる!奴の名前はユダヤ。

 名前が無い頃に奇妙な形をした大剣を悠々と振り回し何も出来なかった俺に呪いを掛けた張本人。


「どうやら無事に成長を果たしたようだな。見た所……お前から俺を強く憎んでいる復讐心と俺を倒す為に鍛えた強さを感じる。やはりお前を生かしておいたのは間違いでは無かったようだな。今日ここで出会うのは想定外だったが」


「覚悟しろ。ユダヤ!俺に命を対価とした呪いを与えたお前にこの呪いでぶち殺す!」


「わざわざ、ご苦労な事だ。私も先程まで同志を失って忙しくなってきたという状況に至っているのだが……」

 

 両手を広げて満月を浴び、身体中にオーラを張り出すと奇妙な大剣を俺に差し向けると口調が大きく変わる。


「俺を探してくれたのなら!じっくりと可愛がってやるよぉ!」

 絶対に負けられねえ。俺は……今日ここで、呪いを授けやがったお前を殺す!例え、この身体が血に染まられようとな!

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