(ⅩⅠ)華麗なる幕開け
いよいよスノウが匿われていると思われる場所に到着した僕とクレインとザインは遠くの方で見つからない場所に隠れておく。
普通に考えたら心臓がドキドキしてしまう状況にあるけれど、ザインはチラチラと見張り役を確認し終えると余裕そうな表情でにこやかに笑う。
「見ろよ、エイジ。さすがにヤバい状況だとヒヤヒヤしていたが全くの素人丸出しで助かったな。これなら命懸けでやり合う必要は全く無いって話だ」
次にザインはお世辞にも綺麗とは言い難い紺色の上着の胸ポケットからタブレットを取り出すと、何やらメールを開いて情報を取り出している。こんな状況でやる事なの?
「俺のビジネス仲間からの船の詳細をPDF形式で送ってこられた物を開示しているんだよ。決して、パズルとかリズゲーする為にやってる訳じゃないから安心しな」
別に疑っているんじゃないんだけど。ザインは、やると決めたからにはキチンとこなすタイプだし。
それにしてもこのメールは恐ろしくスノウが捕らえらている船の詳しい情報が網羅されている。
「詳細図を見る限りでは、中央下が怪しい。どうやらこの場に居る可能性は充分に高いかもな。後は船が動けないように動力部分をぶっ壊して、士気を下げてボスを撃破してしまえば余裕で撤退出来るな」
「撤退?完全に倒さないの?」
「お前から頂いた依頼はスノウ・ローゼンの救出だけだ。無理に戦う必要は一切無い!それにそこまでボコろうが俺にとって意味は無いからな。無駄な戦闘は避ける方が効率性が良い」
以前の彼だったら、立ち向かう敵は全員やってやるぜ!ヒャハータイプだったのに……一年の長いような短いような年月でこうも性格が変わるのか。
「おい、今さっき要らない事を考えていただろう」
「ちょっとだけだよ。まさか君がこうして敵が居るのにも関わらず落ち着いているのが不思議だなぁと思っただけだよ」
「そうか。まぁ……なんだ。一年も歳月が経てば色々と変わるんだよ。性格とかやり方がな。それよりもそろそろ準備は出来たか?さっさと船に乗り込んで、スノウ・ローゼンを救出して速やかに終わらせるぞ」
ザインは僕にタブレットの画面を見せる。どうやら見張りの奥に浮かんでいる船の詳細図のようだ。
詳細図には各部屋などの見取り図がとても細かく載っている。
一体どうやって、こんな情報を手に入れたのだろうか?ザインの知り合いが送ってきたメールだという事は分かるけど……考えるだけ謎が深まる。
「何でも屋としてある以上、ありとあらゆる事に網を張っておく必要がある。だから、俺は仕事を進めていきながらも確実に人脈を増やしておく。そうする事で今回のような依頼をスムーズに解決に導く事が出来るんだ。どうだ、エイジ。一年経って別人と化した感想は?」
「ザインかどうか怪しいレベルになったよ。以前の君なら……考え無しに暴れまわっていたのが目に浮かぶ」
「有り得るなぁ。学園に居た俺ならやりかねない話だ。だが……今は違うぜ」
左手と右手それぞれに紫に帯びた拳銃を取り出し、クルクルと綺麗に回すと両方の拳銃の照準はザインの真上で止まる。
「どうするつもりなんだい?」
「今から俺がこの拳銃を乱射して見張り5人をぶっ倒す。その間にお前は船のモーター部分である船の後方に配置されているであろう動力部を完膚無きまでぶっ壊す。それからは各自各々暴れまわる」
そんな作戦で大丈夫なのだろうか?シンプルで分かりやすいから、別に良いんだけど。
「ん?何か不服そうな表情を浮かべているな?」
「これで上手くいくのかい?」
「やってみない事にはなんとも言えないな。だが、お前と俺なら……成功するさ。じゃあ、練習無しの本番いくぜ」
ザインはしばらく間を置く。その間にも見張りの人達は各自きびきびと見張りという役目を果たしている。
始まりは中々訪れなかったけど、上空で羽ばたいている鳥の鳴き声と同時にザインは両手に携えている拳銃をたっぷりと発砲する。
「あらよ!天下のザイン様の華麗なる幕開けだ!」
周辺に大きく聞こえてくる叫び声に見張りは一斉に注目。
その間に僕はクレインの手を繋いで、紅の剣に形を変えさせてから速攻で地面を蹴って動力部であろう部分に魔力の元と伝えられているルナを紅の剣に流し込んで必殺技の準備が完了した直後に僕はありったけの力をぶつける。
「うぉぉぉ!ブレイズ・バースト!」
紅の剣を一直線上にぶれる事無く振り下ろすと、燃え上がる紅蓮の炎は狙い通りの部分に燃え上がり動力部であろう部分は大爆発を起こしていく。
よし、これで逃げられる可能性はぐっと低くなった!
「くそっ、たったの一撃で船を破壊しやがった!」
「こうなったら、持てる限りのルナを使って攻撃しろ!殺す気で掛かれ!」
「殺されるのはお前らだよぉぉ!」
ザインの持っている拳銃ブリアルまたの名を埋葬と呼ばれし物が発砲された青く澄んでいる上空に広がる弾は一斉に見張りの人達を一網打尽にしていく。
上空から弾が降ってくる姿は正しく大気の雲から発せられる大量のゲリラ豪雨の姿。それが弾になったのだから、避けるというのは非常に難しい。
「次行くぞ。干渉に浸っている時間は無いからな。奴等も気づいている頃だろうし」
そうだった、早く急がないと。どこかに逃げられてしまう!その前に救出しなければ。
「やれ!殺すつもりで掛かれ!」
「おいおい、随分と喧嘩が早い奴だな。こっちの方が分かりやすくて非常に助かるが!」
「ザイン、悪いけど」
「言わなくても分かってる。スノウは恐らく、この船の中心地の下辺りにある部屋にだろうよ。急がないと船が沈むから俺についてこい!」
頼りがいのあるザインと共にボイラーの匂いが立ち込めている船内に侵入を果たした僕達は両挟みからやってくる敵を速やかに打ち落とす。
「喰らえ!」
一人の敵が手のひらから強大な火の玉を精製して投げつけてきたので僕は剣を振り落として直撃を避ける。
危ない危ない……あんな攻撃をまともに貰ったら大火傷を患う所だったよ。
「しかし、相手が悪すぎたな。エイジより俺狙いでやらないと勝ち目が無いのによ」
「君狙いだったら、事態がマズイ方向に向かうから良かったと思うよ。それより……」
さっきの攻撃もそうだけど、最初の大爆発で周辺で待機していたと思われる敵が集合し始めた。こうなると強行突破でスノウが捕まっている場所に赴くしかない!
「暇人集合だな、俺達二人はお姫様を助けるという大変重要な任務があるのによ」
横で三人で並ぶのが一杯な通路に囲まれる状況でもザインは僕の肩を軽く叩いて平然な表情を保つとやがて両手に持った拳銃を左右に構えて挑発する。
「天下に轟く俺がこんな場所で早々簡単に死ぬわけにはいかないんでな。お前等に悪いが……あの世に逝ってもらうぜ」
「ほざけ、死ぬのはお前達だ。たっぷりと悲鳴を上げて死んでゆけ!」
「あほらし。エイジ、ここのバカ連中は俺がサクッと綺麗に片付けてやるから、お前は自分の役目を果たせ!」
そこまで言ってくれるなら、信用するよ。
「分かった、必ずまた会おう!」
「おうよ、お前もな!」
自分の進みたい方向に敵が立ち構えているけれど、僕は一閃奮って敵を追い払う。スノウが居ると思われている場所な確か……中心地の下だと言っていた気がする。
となると入口の近くにある階段から降りていくと、自然に到着する筈。
「ここは通さなーー」
「邪魔だぁぁぁ!」
呪文を詠唱して僕に攻撃を与える算段か。けれど僕の方が一歩早い!
「直接、ぶっ殺してやる!」
通り道に潜んでいた複数の男性がバラバラに殺意を持って迫ってくる。僕は複数人の奇襲を慌てずに冷静に対処。
それほどの時間を掛ける事無く、下へと続いているコンクリート製の階段を1歩ずつ丁寧に歩いて道なりに進むとスノウを監禁していると思われる部屋に到着。待ってて、スノウ。
「侵入者ーーがはぁ!」
悪いけど、そこで眠っていてくれ。終わったら君は牢屋行きだけど。
(突入あるのみです)
首を軽く縦に振ってから躊躇せずにドアを蹴破ると目の前にはスノウと今回の一件の犯人であるガウェインそして側近らしき人物が目に写る。
側近は僕の姿を確認した瞬間に腰に携えているサーベルを引き抜いて迫りかかってきたので、僕は手に持っている紅の剣もといブレイズ・セイバーで何発か火花を撒き散らして撃退するとガウェインはそれでも余裕の表情を見せつける。
「覚悟は出来てますね?」
ガウェインは何も無い空間から複数の槍を取り出すと、両手に大きく広げ挑発をする。
「悪いが、ボスの為にも簡単には死ねないんだ。手加減無しで命のやり取りを教えてやる!」
「覚悟しろ、ガウェイン!」
「覚悟するのは貴様だ!白姫をたったの二人で救いにいく愚か者がぁぁぁ!」
複数の槍が一斉に放射。ここは一つずつ落としていく戦法で本丸を叩く!
「ちまちま潰す作戦か。ならばこちらはその思惑を潰してやる!」
ガウェインは両手を使って地面に転げている槍を素早く拾い上げて高く跳躍してからの叩き落としの攻撃を仕掛けてきた。それからは無駄の無い突きと切り上げをしてくる。
「勝ちは貰った!」
(エイジ、動きを止めて下さい。なるべく)
えっ?止めるの?そんな簡単にいくのかな……でも、やってみなければ分からない!
「くっ、分かった。やってみせる」
宙に浮かんでいる槍の投降をブレイズ・サークルの技で周辺一体を吹き飛ばしてからガウェインを力押しで押し出す。
今の状況は僕が持っているブレイズ・セイバーと敵であるガウェインの槍が互いに混じりあっている状態だ。一応クレインの言われた通りに出来た筈だけど。
(これで……終わりです)
「おいおい、これで引き延ばしているのか。そんな事をしたら我々と共に果てしない底にいくだけだぞ」
「いいえ、果てしない底にいくのはあなただけです!」
ガウェインはハッとした表情で顔を向けるが、時すでに遅し。彼の足は思いっきり凍りついてる。というのも後ろの柱で縄と一緒に固定されていたスノウが自力で抜け出して不意討ちを仕掛けたから。
「スノウ!」
「助けに来てくれてありがとう。後はこの人を仕留めるだけだね」
「まさか、時間稼ぎだったのか。おのれ、小癪な!」
僕は一歩遠くに離れてブレイズ・セイバーに力を蓄える。足も動かない今ら、これで終わりにする!
「ブレイズ・バースト!」
一直線上に振り下ろすと凍りついてる足で自由が効かないガウェインは見事に直撃。彼は余りの威力に悲鳴をあげる。
「ぐあぁ!ちくしょうがぁぁ!」
攻撃を直に受けたガウェインはその場で大の字になって倒れるのと同時に船が沈んでいく感覚が……早くここから脱出しないと、取り返しのつかないことに!
「スノウ、怪我は無い?」
「ううん、全然大丈夫。それよりも」
「ここを離れよう」
もういつ沈んでもおかしくない状況になっている。今は脱出を優先しなければ
「お前ら無……事そうだな。首謀者が大の字で倒れているのを見ると」
「ザイン、この人を担いでくれ」
「おいおい!俺は男を担ぐのなんてーー」
「頼むよ」
「ちっ、仕方ねえか」
渋々従うザインは大の字で倒れてしまっているガウェインを嫌そうな表情で担ぐと
「行くぞ。さっさとこの場から脱出する」
それからは船を沈没する前に無事に脱出。
スノウは紐を引き剥がした勢いで手の部分が軽症ではあったけど大きな怪我も無かったので、救出作戦は成功を果たした。
ザインは安全な場所まで待避すると背中に担いでいたガウェインを地面に投げて今日はロハだとか言って去ちゃったけど……
後はガウェインの裏に潜むアヴァロンやボスの実態を調べる事になりそうだけどガウェインは硬く口を閉ざしていて、まだ証言が取れそうにない状況だからまだまだ解体には時間が掛かりそうだ。一年前に裏ビジネスを営んでいたと思われるファングがつい2ヶ月前に解体したというのに。
一体いつになったら平和が訪れるのだろう……そんな裏がひしめく状況に一週間。事態は思っている以上に良くない事へ発展していくのであった。




