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狂愛  作者: 坂田ゆう
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先輩からの告白

まだまだ表現しきれていない部分も多くありますが、皆様を【ドキドキ】【ハラハラ】させるようなお話を書いていきたいと思いますので、そういった感じで見ていただけたら幸いです!

そして、15歳未満またはヤンデレが苦手な方はご覧頂かないようお願いします。


 …始まりは一枚のハンカチでした。

 

 

「俺、詩織の事が好きなんだ」

 放課後の校舎裏で私は生まれて初めて告白をされた。相手は一つ年上の生徒会長・神田悠斗先輩。それは昼休み、先輩が一年生の教室へ来たことから始まる。

 

 

「詩織、今日の放課後ちょっと付き合って」

 そう言ってやってきた先輩。一気にざわめきだす教室。まぁ一年生の教室に他学年が来るのはあまりないというのもあるし、ましてやイケメン生徒会長ときた。しかも平々凡々な私を呼んでいるのだからクラスメイトの視線は全て私に降りかかる。

「なんなのよ、あの子…」

「生徒会長に媚売って感じ悪くない?」

 そんな声が次々に聞こえてくる。皆さん普通に聞こえちゃってますよ、と言ってやりたいくらいだ。まぁ口が裂けても今はそんなこと言えないけれど。

「なんで詩織のことそんな風に言ってんだよ」

 先輩が口をひらいた。私は聞いていることしかできずただただ先輩を見ていた。どうして私なんかの為にそんなことを言ってくれるのだろう。

「…行くぞ」

 そう言って先輩は私の手首を掴んで引き寄せた。その掴んだ手に力が入っていて少し痛かった。けれど先輩はどんどん進んでいく。私はこんな先輩を見るのは初めてだった。

「先輩…先輩っ」

 私は先輩に声をかけた。先輩は驚いた表情を見せたがすぐにいつもの先輩に戻った。私の知っている先輩は堂々としててかっこよくて頼りになる生徒会長で、私の憧れだった。だからすごく驚いた。これが本当の先輩なんだなって。ただそう思った。

「ごめん。俺…」

「先輩のせいじゃないです。彼女達は…」

「彼女達は?」

「いえ、何でもないです」

 私は言葉を飲み込んだ。実際私にも何が言いたかったのかよく分からなかったから。

「そっか」

 昼休みの中庭で風に髪を風になびかせながら先輩は微笑む。そして私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「先輩っ…」

「悪い悪い。詩織が可愛くてつい」

 先輩は恥ずかしいことも平気な顔をしてさらっと言ってしまう。私はいつも先輩に驚かされてばかりだ。多分今の私は真っ赤な顔をしている。だってすごく顔が熱いから。

「じゃあ本題に入ってもいい?」

「はい」

 なんだろう?なんかまじめな話みたいだけど…。少し不安に駆られる。

「今日の放課後、校舎裏に来てくれないか?」

 校舎裏…?どうしてそんなとこ…。だってそこは“恋が実る場所”と言われる、この学校の恋愛スポットのようなところだ。どうして先輩が私に?

「どうして…ですか?」

 私がそう聞き返すと、先輩は顔を赤くした。

「そ、それくらい察してくれ。じゃ、じゃあ…」

 先輩は自分の教室に戻っていってしまった。だけど取り残された私はそれ所じゃなかった。だって、そんなことって…。

 先輩ももちろんそのスポットのことは知っていると思うし…。そう考えるだけで顔の熱が一気に上昇したような気がした。

 先輩と関わる事になったのはほんの小さな偶然だった。

 私が落としてしまったお気に入りのハンカチを拾ってくれたのが先輩で、その時私は先輩に一目惚れてしまった。その日以降、私達は会うたびによく話すようになって一緒に帰ることも多くなった。日に日に先輩への想いは大きくなる一方で。

 私はしばらく教室へ戻ることができなかった。

 嬉しくて嬉しくて、今にも顔が緩んでしまいそうで。結局戻った後も授業に集中できず、放課後を迎えた。

 

 空は紅く染まり、沈みかけた夕日が綺麗に見える放課後。

 私は一人教室に居た。この静かな教室に聞こえてくるのは部活動をやっている生徒達の声。野球、テニス、サッカー、陸上…他にもさまざまな部活動がこの学校には存在する。

「青春だなぁ…」

 その様子を見て私は思わず声を漏らしてしまった。私は慌てて辺りに誰もいないか確認する。

 …良かった。誰もいないみたい。正直ホッとした。こんな帰宅部の私が言うのも変な感じがするから。

 そしてもう一度机に突っ伏した。

「何が青春なんだい?」

「汗水流して勝利の為に…って…えっ!」

 勢いよく顔をあげた。そこには私の友人である後藤せおら。

「な、なんでせおらがここに…」

 あたふたと動揺を隠せない私にせおらは言う。

「忘れ物取りに来ただけだよ」

 せおらはにっこりと笑った。無性に嫌な予感がした。

「いつからここにいたの?」

 思わず聞き返してした。

「詩織が“青春だなぁ…”って言ったときからかな」

 ほぼ最初からじゃないかっ、そう突っ込みたかったが、今反論すればこちらの身が危ない。

 私は高まる気持ちを抑え、冷静になることにした。

「そ、そーなんだ…」

 人事のように流しこの場を切り抜けようとした。が、しかし。

「何々?なんかわけがあるんじゃないの?」

 ギクリ。

 体がはねる。いやいや…そこ流してよ。

 せおらは変なとこですごく鋭い勘を働かせる。正直に言うとすごいとは思うのだが、こっちが当てられる側になると結構厄介な存在だ。

「べ、別に…」

「何か隠してるんでしょ」

 これほど迫られては隠し通せる自信はなかった。

「わかったよ。話せばいいんでしょ」

 私は渋々話すことにした。別に隠していてもその内ばれるのだから同じだよね。

「私ね、今日神田先輩に呼び出されたんだ。…あの場所に」

 静かな沈黙。

 しばらくして、せおらが口を開いた。

「え、ええええええっ!」

「反応遅っ!」

 思わず突っ込んだ。

 まだせおらは口をパクパクさせている。そんなに驚くことなのか…。

「ま、まぁ…頑張って」

「あ、ありがと…」

 二人きりの教室に変な空気が流れる。

「そ、それじゃあ私…行くね?」

「う、うん!いってらっしゃい」

 私は教室を出た。いつの間にか教室の外へ出ている。

「し、しまったー!」

 でも出てきてしまった以上、ちゃんと決心を決めないと。

 よし、行こう。

 そう思い私は覚悟を決め、先輩の待つ校舎裏へと向かった。

 別に決闘とかそんなんじゃないけれどやっぱりすごく緊張するな…。

 私の胸はドキドキとうるさく鳴っていた。

 

 校舎裏にはすでに人がいた。

 …先輩だ。

 私はゆっくり先輩に近づいた。どんどん縮まる先輩との距離。

「先輩」

「うわっ…って、詩織…びっくりした」

「遅くなってすみません…」

「もう来ないのかと諦めてたところだったんだ」

「ええっ、そんなこと…」

 確かに遅かったのは事実である。

 私の勝手な行動が先輩にも迷惑かけちゃったんだ。

「すみません」

「だ、大丈夫だよ。現に今ここに詩織がいるから」

 優しい優しい先輩。

 私はますます先輩が好きになった。

 恥ずかしくて俯く。先輩の顔が見られない。

 今どんな表情で私を見ているのか、今どんな思いで先輩は私の目の前にいるのか…気になってしまう。

「詩織、こっちを向いて」

 先輩は言った。

 胸がドキドキして息苦しい。酸欠状態。

 私はゆっくり顔をあげた。もちろん当たり前だけど先輩が目の前にいる。

 あの有名な生徒会長が目の前に、いる。

「俺、詩織の事が好きなんだ」

 先輩は私の目を見てそう言った。嬉かった。

 だって今まで一度も告白なんてされたことなかったし、しかも生徒会長だ。私には遠い存在に過ぎないはずだった。奇跡に等しいくらい…。

 私はすぐに返事をした。

「よ、よろしくお願いしますっ」

「はは、よろしくね。俺の彼女ちゃん」

 その場を和ませるように先輩は言った。今日から私は先輩の彼女になった。今までとは全然見える景色が180度変わってしまったようだ。

 昨日までとは違う先輩と歩く道が、すごくきらきらと光っている。

 まるで紅いじゅうたんの上を歩いているみたいで。

 幸せすぎて怖いくらいだった。

 これからもこんな幸せがいっぱいあるんだろうな。期待に胸を躍らせた。

 

 でも、これで終わりなんかじゃなかった。

 これはまだ始まりに過ぎない、序章だった。

 

 

 私達の後ろである一つの人影が動いた。

「お姉ちゃんは、絶対に渡さない…。誰にも…」

 ギリッと歯軋りをする、詩織の弟・みちるの姿がそこにはあった。

「バカだなぁお姉ちゃんってば…僕がいるのになんで他の男といるんだよ!」

 怒り狂ってしまいそうな気持ちを抑え、じっと二人を見つめていた。

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