転生
嵐のような猛風吹き荒れる季節にして冬の晩。
叩きつけるような風にこんな野にぽつんと建っているあばら家など一瞬にして吹き飛んでしまいそうだった。
「ゴフッ──もうお迎えかぁ......」
酷く萎れた枯れ枝のような手についた真っ赤な真紅を見て自身の残り時間がもう既に少ないことを悟る。
見渡した部屋の中もボロボロで床も抜けかけておりそこに簡素な綿製の布団が1枚引かれてるだけで見届けるような奴も居ない。
ふと今までの生涯を思い出してみる。
しかし記憶のどこを探っても爛れた血の記憶と鉄臭い刃と人々の悲鳴の記憶しか思い出せない。
今思えば周囲の環境さよかったらもっとマシな人生送れたかもしれんな......
「俺ぁ死んだとしても地獄かな......」
一人で自虐に走るが事実だからしょうがない。
この世に生をもらってかれこれ六十年、産まれたその瞬間からひたすらな修羅街道。
人を切り続けた俺にゃあ悪鬼羅刹蔓延る地獄はお似合いだ。
......だが、もし、もし次があるんならそんときゃあそういったこととは無縁の暮らしを送ってみてぇなぁ......
暗転していく意識の中最後に男は一人はそう願った。
「⬛︎⬛︎......⬛︎⬛︎今すぐ俺もお前らのところに......」
〜〜〜
「お袋ぉただいまぁ」
酷く間の抜けた声があまり大きくない家に響いて奥の方からドタドタと走ってくる音が聞こえる。
まぁ、いつものことだ......
「大丈夫だった夜宵ちゃん!? 怪しい人とかに声掛けられたりしてない!? 」
「お袋さぁ心配しすぎだぁ......俺ぁもう12ぞ? そんな奴ぁ声掛けられりゃあどうとでもできる。あとほれ釣りの四文だ」
「文......? 」
怒涛のお袋必殺の心配質問攻めを軽く流してふかふかのソファーに重力に身を任せどっと倒れ込んだ......
「そういやもう十二年も経ったのか......」
何故か俺は輪廻転生していた。
ここが俺の以前生きていた国と同じところと知ったときは酷く腰を抜かしたものだ。
なんせ人が空を飛び、平たい板っころが何でも教えてくれて戦も今の日の丸では縁遠いときたものだ......社会の禿げ教師が教えてくれた内容はどれも新鮮だった。
それとこれはついでだがなんの因果か知らんが女になっていた。
まぁべっぴんなお袋に優しい親父がいるんだ多少不便に思うこともあるがそもそも生まれ変わらせてもらってる身だ、そこまで我儘言っちまったらバチが当たっちまう。
だけどてっきり俺ぁ地獄に落ちると思ってたんだがな......輪廻転生なんてペテン師共の空想だと思ってたものを俺にするとは物好きな神さんもいたものだ。
「あなた、夜宵ちゃんって何処であんな難しい言葉覚えてくるんでしょうね?」
視界の端でお袋が親父に話しかけてるのが見える。いつもの睦み合いかと思ったがどうやら俺のことらしい。
しっかし何回見てもべっぴんさんだなぁ......親父も俺の前世には負けるがいい男だ。
しかし仲睦まじいのは悪くはないがもうちょっとこの二人は愛情を抑えきれないものか......今でも夜まで声が響いておちおち眠りゃあしねぇ。
「さぁ親父のところでじゃないか?」
新聞片手に親父は心ここに在らずと言った様子だ。目が死んでいて新聞も読んでるのか読んでいないのか区別がつかない。
昨日のなんとかカップだか知らねぇが自分の応援していたチームが負けちまったらしい。
生粋の野球好きの親父だが俺にはあんな玉投げて打つだけのゲームのなにが面白いか分からんから家族でテレビ?を見てるのはいつも親父だけだ。
その時は俺は部屋でごろごろ、お袋は新しいお菓子作りに挑戦しているってのが日常風景。
「確かにお義父さん大分不思議な人だものね」
それと親父の言ってる人は親父の親つまり俺からすれば爺さんのことだ。
そんでその爺さんはとても愉快な奴でな、話も合うから俺も将棋でも指しによく会いに行っている。
まぁこの口調に関しては前世からの訛りだから爺さんは関係ないんだが......
〜〜〜
「魔法少女ぉ?」
学校に登校すると何やら騒がしかったため何があったかをすぐ近くにいた女子に尋ねるとクラスの男子が魔法少女の写真をゲットしたからみんなに自慢しているらしい。
魔法少女、魔法少女ねぇ......確かお袋が俺がもっと小さいときにテレビで見せてくれたやつだったか?
見たときは「今の日本はすげぇなぁ! 」と戦慄したものだが親父に詳しく聞くとあれはふぃくしょん? とかいう虚構の物語らしく本当は存在しないらしい。
人が空飛ぶようなってたから呪いの類もできるようになったと期待してたためあのときの喪失感は凄かった。
まぁ勝手に期待した俺も悪いが......
だけどもその写真で自慢してるってこたぁつまり魔法少女に繋がりのある声優とか有名人の写真とかだったのだろう。
「おい夜宵!これ見てみろ本物の魔法少女だぜ!」
「あぁ?」
少し寝ぼけた声で応える。
どうやら一人で納得してるうちに自慢野郎がこちらに来たらしい。
正直もういないと分かってるものに時間を割くなんざより今すぐに仮眠して頭をスッキリさせることに集中したかったが......この自慢野郎は大層泣き虫で自尊心が高いことで有名で気に入らないことがあったらすぐに泣く。
まぁ体良く表しゃあ唯のクソガキだ。
無視することは簡単だがコイツの親は子より親の方が有名で過保護の鬼......えぇと......もんすたーぺあれんと? だったかな?
まぁ要するにコイツを無視して泣かせたら親父とお袋に迷惑かけちまう訳だ。
それだけは絶対に避けたい。
今すぐ眠りたいと叫ぶ頭を無理やりたたき起こし自慢野郎が自信満々に掲げる写真を見る。
「.....」
「どうだ凄いだろ! 」
写真を見て首を傾げる。
なぜならそこに写っていいたのは空に浮かぶ、ブレっブレのピンクの何か......ピントが合ってなさすぎてかろうじて人型っぽく見える程度のお粗末なしれ物。
「おい? どうした? 」
「あぁいやぁ大したもんだなと思ってな......」
あまりにも酷いものだったため反応するのが少し遅れてしまったな。
大方どこかのいべんとに使われたばるーんが飛ばされたものだろうがここはもう少し機嫌を治さねば......
「そういやその写真はどうやって手に入れたんだ? 」
まぁこの辺りが無難だろう......
俺はお前の話に興味がありますよってのを伝えつつ相手の自尊心を逆撫でずに満たすことができる。
前世ではお偉いさん相手の話のときに大変お世話になった手法だ。
「へぇ夜宵のくせに良い目の付け所してんじゃん! これはな俺の従兄弟の兄さんがくれたんだ! その従兄弟の兄さんはな......」
話が長くなりそうだったので話が終わる朝のホームルームまで聞いてるふりをしながら仮眠をとった。
〜〜〜
「はぁ〜もう今日は疲れちまった......」
帰路につきながら溜め息を零す。
あいつの話に興味を示したのはどうやら愚策だったらしい。
実際のところあの写真に関してはクラスのみんながみんな合成したものだろうと思ってたらしく唯一ちょっと興味を示した俺に自慢話のおんぱれーど、おどれは念仏でも唱えてるのかと思ったわ。
いつもは軽く感じるランドセルも疲れている今だと二倍程度には重く感じる。
「家さ帰ったら甘味でも食って息抜きでもしようかなぁ?」
思考を楽しいことに回しながら家までの疲れを無理やり押し流す。
よしこの角を曲がったらもう少しだ......
「やめてぇ! こっちにこないでぇ! 」
すぐそこから女子の叫び声が聞こえた。
壁に体を隠しながらそっと声のした場所の様子を確認すると俺より2つぐらい歳が上でとんちきな格好をした娘っ子が地面に倒れ泣き崩れている。
よく見ると体はところどころ擦りむけてボロボロになっていた。
「なんだぁ? 喧嘩か? 今の日本で見るにゃあ珍しいな......」
相手の姿を捉えようともう少し顔を覗かせると俺は衝撃を受けた。
「あれは......犬か?」
娘っ子にジリジリとにじり寄っているそれは体長が7尺あまり程ある巨大な犬のようなものだった。
犬と断定しなかった理由としてその犬の体の部位は全てあべこべになっていた。
目には口が口には目が毛は全て人間の腕のようになっている。見るからに化け物だ......
それが今まさに目の前の娘っ子を呑み込もうと少しづつ近ずいていっていた。
「ん〜どうしたものか......お、これでいいか」
夜宵はおもむろに足元に落ちている枝を拾うと軽く鼻歌を歌いながら化け物に向かって歩いていった。
私、永久の初心者と申します。名前通り初心者なのでお手柔らかに......カクヨムで活動してきた者ですがこの度は試しになろう様へと足を運んでみた次第です(ちょっとなろうはハードル高いイメージがありまして......(´∀`))よろしくしてくれると幸いです




