焼かれた土地
グレンブルク侯爵邸にある図書室で、私は本を読み漁っていた。
エドワードのことも助けたいし、困っている人たちも見捨てたくない。私のことをあれだけ大事に思ってくれるエドワードのことだ、私に魔法を使わせないことで自分が悪く言われても構わないフリをするのだろう。
でも優しい彼が傷つかないわけない。あんなに領地と領民のために日々頑張っているのに。
分厚い本を何冊も出しては、ページを捲り続けた。
「......っこれだわ!」
私はとある本に解決の糸口を見つけた。
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エドワードは相変わらず忙しそうで、今日の領地の視察に行く。視察先はランディールという町で、グレンブルク領の西にある。エドワードは最後まで反対しているし、今もすごく嫌そうな顔をしているが、頼み込んで無理やり私も同行する。
エドワードには内緒だが、彼の書斎で何通ものランディールからの嘆願書を見かけた。
私の魔法で土地を豊かにしてほしいと切実な願いが書かれていたのだ。魔法を使えなかったとしても、なんとかしなくては。
彼も私の魔法を使わずになんとか土地を守る方法を探しているようだった。それで最近は毎日夜遅くまで仕事をしていた。
「...ソフィー、手を」
馬車に乗るときにエドワードがエスコートしてくれる。本当に私を連れて行きたくなさそうだけど、こういう所はしっかり優しい。
私はエドワードとともにランディールへと向かった。
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「お待ちしておりました!来てくださりありがとうございます」
ランディールの町長や農民たちが盛大に出迎える。
「早速、我が町の田畑の状況を見てください」
農民たちの中の代表者が私たちを案内してくれた。
「これは...」エドワードが問題の畑を見つめる。
「そうなんです。ここ数年、害虫によって作物が育たず土地が枯れてしまって...今はこの区画だけなのですが、他の畑にも被害が移らないか心配なのです」
農民たちが不安そうに言った。
ソフィーは土を触って静かに言った。
「エドワード、この畑をあなたの魔法で焼き払ってくれないかしら」
エドワードは目を見開いてソフィーを見た。
農民たちもソフィーの言葉に耳を疑う。
「大丈夫」
ソフィーは笑って言った。
農民たちは不安げだが、エドワードは彼女を信じた。
「......わかった。やってみよう」
エドワードが炎の魔法で畑を焼き尽くす。延焼しないように緻密なコントロールで畑のみが燃え上がった。
鎮火したあと、上がる煙を見て農民たちは愕然とした。
「いったいこれからどうしていけば...」
ーそのとき、ソフィーが言った。
「これでいいんです。土を見てください」
みんなが一斉に焼けた畑を見ると、そこには灰がつもっていた。
「この灰が肥料となり、この土地でまた作物がとれるようになります。エドワードが焼いてくれたおかげで、害虫の被害もなくなるでしょう。
これは焼畑という東の国で行われている農耕方法です。土地を焼き、自然の力で土地が再生するのを待つのです。長い時間がかかりますが、私の植物を育てる魔法でサポートすれば数年で再生し、また豊かな土地にできます」
淡々と説明するソフィーを、エドワードが驚いた顔で見つめた。
農民たちが涙を流しながら口々に感謝の言葉を述べる。
「ソフィー様、エドワード様、ありがとうございます」
「これでこの土地を捨てずに済みます」
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私たちは再び馬車に乗り、侯爵邸に戻っていた。
エドワードが私を優しい眼差しで見つめて言った。
「...ありがとう、ソフィー。君のおかげだ」
「ランディールの土地はなんとかなったけど、全部がこうはいかないわ。帰ったら、他の嘆願書の内容も一緒に確認しましょう。きっと色々と解決策があるはずよ。....それに、言ったでしょ?あなたが救うものは私が守るんだから」
得意げに微笑むと、エドワードが私にキスをした。
「俺も負けてられないな。君が幸せをくれた分をまだ全然返せそうにない」
エドワードも笑って言った。
ここ数日の疲れが溜まっていた私たちは馬車の中でお互いに寄りかかって眠った。




