叫ぶコヨコヨ
たどり着いたのはそれなりに広い、いくつかの遊具があるような場所。 コヨーテは何を思ったのか、おもむろに板の上に乗ると、そのままの体勢で滑りだす。
「はっはぁ!! 楽しいぜ……なんだよその顔は」
メリッサは彼が何をしたいのか、まるで理解できなかったのだろう。 表情を指摘されても、少しもそれを崩さずまるで子どもでも見るかのようにメリッサは彼を見つめた。
「互いのことを知るのに……公園か?」
「やっぱり遊ぶのが1番だと思ったんだけどよ、こっちのほうがいいか?」
コヨーテは肩を回しながら、メリッサの前に向かう。 軽い重圧を当てられながら、メリッサはため息とともに重心を落とす。
「最近、どうも慢心しがちと言うか……一応、お手合わせ願おう」
「ふっ、それはいい。 俺はこっちも大好物なんで……なっ!!」
いうやいなや、コヨーテはメリッサへと襲いかかった。 それを目算で避け続けるメリッサ。 今ここに、公園で喧嘩し続ける男たちが現れる。
「ちょこまかと……さっすがメリッサ。 やるじゃねえか」
単純思考にありがちな短気さを持たず、避け続けることを褒めるコヨーテ。 そんな彼に気を許したのか、メリッサが回避をやめ、彼の拳を身体で受け止める。
「もういいだろう……お前はなぜスキルを使わない?」
「ふっふっふ……知りたいか?」
「……いやいい。 帰る」
いい加減呆れたかのようなメリッサを止めながら、コヨーテは聞いてもいないのに自分のことをベラベラと話しだす。 メリッサはそんな自分が聞いたわけでもない長話は嫌いだから、当然ボケーっと突っ立っていた。 それに気づかず、彼は聞いてもいない話を気持ちよさそうに言い切って、どうかと聞いてくる。 メリッサは少し考えた後、笑顔を作ってからいった。
「その通りだな。 さすがだと思うぞ」
便利な言葉だとメリッサは思っていた。 何を言われても大抵これでごまかせると。 だが、コヨーテは微妙な顔をする。 しまった、間違えたかとメリッサが思った瞬間だった。
「やっぱりだぁ……お前は、いい奴だ。 いやさ、俺はお前の顔見てよ。 こいつは話を聞いてないんじゃないかと思ったんだよ。 でも、聞いていてくれた。 すまねえ、そして俺を殴ってくれ。 俺はお前を疑った」
メリッサは、このような熱い男を友に持ったことがなかった。 メリッサには、熱さは分からぬ。 だが、自身が罪な男であるということだけがわかる。
彼はコヨーテをかるく叩くと、いやん。 と、嫌な声を言われた。 少しだけ、本当に少しだけ悩んでから言った。
「お前も俺を殴れ……理由は聞くな」
「理由を聞くなだと……ならば、聞かん。 メリッサ、君の思いを……」
久しぶりだった。 人に殴られるのは。 メリッサは、コヨーテの拳を顔面で受けると、耐えきれずに身体を後退させた。 口元から血が流れて、顔は痛みで歪む。
「いい……拳だ」
「メリッサ、何故だ。 お前は、この程度の拳では……」
「スキルを使っていたんだよ。 でなければ、お前は強いからな」
涙。 コヨーテはメリッサに涙を流した。 それは拭っても拭っても、後から流れ続ける。 大きな声で笑って、コヨーテはメリッサを抱きしめる。
「兄弟!! どちらが上でも構わねえ。 お前を兄弟と呼ばせてくれ!!」
「暑苦しい離れろ……俺は兄弟なんかいらん」
無理やり彼の身体を突き放し、メリッサは地面に座り込む。 ダメージが抜けきれておらず、足元がまだふらつくのを誤魔化すためだ。
「そりゃ……そうだよな。 で、メリッサ。 1ヶ月だろう。 早いほうが良くないか」
「そりゃ……早いほうがいい」
話に具体性がないから、メリッサは想像で答えるしかない。 少しの不安とともに言ったが、それが正しい答えだと、すぐに知ることができた。
「明日、ここへ行きなよ。 俺を除いて3人だ。 お前に協力してくれやすそうな奴のうち、1人がそこにいる。 そこで待ってるように言っておくよ……悪いな。 割とまじに殴っちまって」
少し反省しているのか、先ほどとは変わってテンションが低い。 コヨーテに紙を受け取ると、メリッサは立ち上がって背中を見せる。
「何から何まで、ありがとう……兄弟」
「……はっ。 マイブラザァアー!!」
叫び声が、公園にとどまらず近隣に響いていく。 後日、コヨーテはかなり怒られたという。




