↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/50

強敵登場

「見つかったか?」


 砂の上を数時間ほど歩いた頃、さすがに疲れが出てきたのかメリッサが言った。


「いやまったくだよ。 というのも君がいるからわざわざ……君でいうところの、ヤバいのを探しているせいもあるんだがね」


 ヤバいのを。 メリッサにはそれが気になる。 この男をおいて、ヤバいものが他にあるのだろうか。


「なるほど……値上げ交渉ならすぐ乗るぞ」


「さっきのやつでお釣りがくるくらいだと思うがね。 おや、こちらに気配がある」


 たわいもない話をしながら、レオナルドが見つめる方向に不穏な雰囲気が感じられた。 近づいていくと、異臭とともに生物の死骸が積み重なっているのが見える。


「お釣りねぇ……なんだよここ」


 骨だけになった狼のものの骨や、まだ肉のついたもの。 他にも、いくつか虫の死骸までみえる。 多くは古いものだが、やけに新しいものもそこに混じっていた。


「私もね、戦いは得意ではないからこうやって死骸を集めて……待て、やけに新しすぎる」


「たしかにそうだな……それはどういうことだ?」


 レオナルドに合わせてメリッサが警戒態勢をとる。 地面から、振動が発生。 だんだんと近づいてきて、それは顔を見せた。

 大型のミミズ。 頭には何本かツノのような器官を見せる。 砂ミミズにしては、やけに凶悪。 頭を揺らしてあるかと思いきや、唐突にそれをこちらにぶつけに来る。


「ハメられた。 来るぞっ!!」


 狙われたのはメリッサだった。 強力なスキルを持っていても、身体能力は並。 反応が少し遅れただけで直撃は避けられない。

 レオナルドが叫ぶと、メリッサを突き飛ばす。 それにより、なんとかことなきを得た。 ミミズは頭を引くと


「おっと、サンキュー。 こいつは……でかいな」


「でかいだけではない。 こいつはタイラントワーム。 サンドワームの上位種だ」


 レオナルドが叫ぶ。 その声に、恐怖の感情をこめて。


「どおりで見た目は似ている。 だが、なぜこんなにデカく?」


「虫は魔力を得て強くなるのは?」


「知っている。 自然や生き物の魔力を吸って……こいつもか」


 虫に限らないが、生物は魔力を摂取して強くなることがある。 虫は特にそれが顕著だ。 と言っても、通常の2倍以上の大きさになることは稀であり、メリッサも見たことがなかった。 今までは。


「この大きさ、おそらく魔石を食ったのだろう。 まったくやれやれだね」


「そうだな。 まさかレベル8の魔法使いと敵になるとは。 こいつも哀れな」


 余裕そうにメリッサが呟く。 それに対するレオナルドの反応は、予想の外であった。


「何を言っている。 君は逃げろ」


 迫真だった。 わざとメリッサの前に立つと、レオナルドは振り向かずに言った。


「なに? レオナルド、お前でも勝てないのか。 なら、2人で……」


 メリッサがなんとかレオナルドの横に立とうとするが、彼の腕で遮られる。


「貴様と私でも無理だ。 死を運ぶ砂ミミズ、こいつには魔法が効かん」


 そう言って、レオナルドは適当に魔法を放つが、それがワームを傷つけることはなかった。、


「うわぁ、なら2人で早く逃げよう」


「……そう言ってくれるのは嬉しいがね」


 パンパンと、太ももを彼は叩いた。 左の大腿、そこの布が破れ流血がみえる。


「お前、足が……俺を庇った時か」


 メリッサを突き飛ばした時に負傷したのだろう。 足を怪我した状態では、魔法使いは逃げられない。


「安心しろ、君が逃げる時間くらい稼げる。 こいつに限らず砂漠の生物は縄張り意識があるから、君なら逃げ切れるだろう。 巻き込んで済まなかった」


 メリッサは謝罪の言葉に、涙が出そうになるのをこらえる。


「謝るな。 最後まで諦めるな。 逃げるのはお前が先だレオナルド。 どちらかが死ぬなんて、俺はごめんだからな」


 当たり前だが、メリッサは人が死ぬのに慣れていない。 死にそうな人間がいたら、助けてしまう。 それを見捨てて逃げるなど、できやしない。


「だが、残った方は確実に死ぬぞ」


 死ぬという言葉に、迫力があった。 本当に、どちらかが、あるいは両方が死ぬ場面なのだろう。


「諦めなければ、道はついえない……だ。 なんとかなるか、なんとかする」


 メリッサは、思いついた言葉を適当に言う。 どちらかじゃなくて、両方生き残る道を探す。


「いい言葉だね。 誰の言葉だ?」


「知らねぇ。 誰かの言葉だ」


 声が震えた。 だが逃げなかった。 もう逃げられるタイミングはないだろう。


「だったら、私も逃げない。 魔法が通じずとも、やりようはある」


「無茶だ。 逃げたほうがいい」


 この状況、自分なら大丈夫だと根拠もなく思う。 だからレオナルドには逃げてほしいとメリッサは思う。


「……君には言ってなかったが、タイラントワームは2匹いる。 もう逃げられないのさ」


 レオナルドのため息とともに、地面が震えるのが分かる。 先ほどから上がる砂埃は、もう1匹が潜伏する音かとメリッサが気付く。

獣と虫

  戦士は獣に弱い。 どれだけ自信を強化しようとも、獣の恵まれた膂力には敵わない。

  魔法使いは、虫に弱い。 虫は魔力をくらうから、魔法そのものでさえ吸収してしまう。

  とはいえ、圧倒的なレベルの差でゴリ押す事も可能だ……相手が、強大でない限りは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。