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ナインテイルス ~異世界九尾語り~  作者: クルマキ
五章 その手を取って君の名を呼ぶ
88/102

召喚機と呼ばれる理由

-1-


ある日、人の腕がマーチェスで発見された、大きさから見て子供の腕、切断面はねじ切られていたのか潰れていた。


同じ日、マーチェスの各地からいくつもの人の体の一部が見つかった、同じようにねじ切られた体の部位を集めるとそれは一人の子供の物だと分かった。


それが三日間続いた、二日目は三人、三日目には七人分の体の部位が見つかった。


発見場所はマーチェス全域、規則性も無く目的も分からない犯行、共通点は発見場所に落ちていた金属片のみ。


唯一の証拠だったこの金属片を調べると一部の魔具師やテスターしか扱っていない貴重な物だと分かった。


容疑者が絞られると当時マーチェスにいた該当者全員は隔離され、監視、尋問された、それと同時にこの金属の生産及び使用された道具の所持が禁止された。


隔離から数日、体の一部が発見される事は無くなった、間違いなくこの中に犯人がいる、そう確信した折、容疑者全員が隔離されたにも関わらず事件はもう一度起きた。


今回はこれまでとは少し様相が異なる、発見されたのは人の物に酷似しているが明らかに人の物ではない体の一部。


発見者は全員同じ事を言っていた、黒い穴が空いたと思ったらそこからこれが落ちてきたと、青白い肌は明らかに人の物ではなく、断面から見える血は白く、大きさは人のそれの倍以上はあった。


召喚機って呼ばれたのはそれが理由、どこかから何かを召喚する不可思議な魔具、召喚機呼びなのは容疑者が魔具師だったから。


犯人は捕まっておらず目的も不明のままだけど推測では実験が目的だったのではないか、と言われていたらしい。


捕まえた容疑者の中に犯人はいなかった事から一先ずは釈放、それでも魔具師への批判は避けられなかった。


噂はすぐに広がる、当時の容疑者の潔白は証明されたが怪しむ目は止まらなかった。


魔具師が犯人であると決まった訳でもない、ただの噂……少なくとも隔離されるような何かをしていたのではないか、という疑念。


それ以降事件は起きていない、いくつかの真実を嘘で脚色して今に至る。


丘の村へ戻る道中、事件の顛末はこんな所。


「……その時にヴァルニールって竜人いませんでしたか?」


「いや、調査指揮してたのがその人なんだけど……え、何、そういう流れ?」


「まぁ、はい」


話の流れで察したらしい、調査をしていたのが犯人と共犯関係だったのなら見つけられる訳がない。


少なくとも三十年前の時点から何かしらの目的があって行動していたのは分かった。


「はー……まぁいいや、三十年前の事愚痴っても仕方ないし、ちゃちゃっと炉心返して帰ろうか」


いつもより長い溜め息を吐くと気を取り直して、不機嫌そうにさっきよりも歩幅を広げて歩く。


急に歩幅を変えたビバさんの横に並んで歩いていると、そう言えば聞かないといけない事があったのを思い出した。


「そういえばなんですけど、あの魔動機の値段聞いてもいいですか、ざっと見ただけで云百万はするって言われたんですけど」


ラズリアに言われてからいつか聞こうと思っていた事、貰った当時は断るのも野暮だと思ってそのまま受け取った、価値を知った今更になって掘り返すのもどうかとは思うけど


「あれ、シルバには言うなって触れ回ってた筈だけど、誰かに聞いた?」


「そういうのに詳しい後輩が出来まして」


「おー、見ただけでそれとはなかなかいい目してるねその子、中身ばらしたらびっくりすると思うよ、今だと家が建つぐらいにはなってるかな」


私が本当は何を聞こうとしていたか分かった上で、はぐらかすようにそう答える。


値段そのものを聞きたかった訳じゃない、そんな高価な物をどうして私に譲ってくれたのかを知りたかった。


私がしばらく返事をしないでいると諦めたのか、続ける。


「……片腕じゃ運転出来ないってのと、どうせなら知ってる人に使ってほしいってのと、後はまぁ……シルバにならいいかなって、恥ずかしいからこの話はここまでね」


やや気恥ずかしそうに手をひらつかせながらそう言う、私もそれ以上掘り下げたりはしない。


「にしても後輩かー、シルバが担当してるって事は女の子だ、どんな子?」


「どんな……」


話題は変わってラズリアの話、どんな子と聞かれると少し考えてしまう。


紹介状付きで来たときはどんな厄介者が来るのかと思ってたけど、ちゃんとしてる子で、魔動機に詳しくて人見知り、その割にはすぐに人と打ち解けて、妙な所で行動力があって、それから


「酒クズ……?」


色々考えて、一言で説明できる程度にまとめてから言おうと思ったけど不意に口から出たのはそれだった。


「一発目に出てくるのがそれだと不安になるよ、私は」



-2-


「……いや、あんたらを頼ったのは確かに俺だけどよ、こう、加減ってのをだな」


村に戻ってくるとちょっとした騒動になった、盗まれた筈の炉心を浮かせて戻ってきたんだから、それはそうなる。


ランディさんにその場を納めてもらって、炉心は取り戻せたけど犯人には逃げられた、とだけ説明するとそれ以上は聞いてこなかった。


改めて炉心を倉庫に戻して、この件はこれで解決……と言い切れる程すっきりした終わりじゃない。


倉庫を出るとランディさんは私たちの前に立つと辺りを一度見渡し、深々と頭を下げた。


「あんたらには世話になった、礼をしたいのやまやまなんだが、やってくれた仕事に見合う礼ってなると悪いが今すぐには用意出来なかった、村でかき集めれば何とかなるだろう」


「そもそも正式な依頼じゃなかったんで、報酬については気にしなくて大丈夫ですよ」


「いやしかしな……」


「それなら代わり……って言うとあれなんですけど冒険者の宣伝してくれません?今回みたいな事から些細な困り事の解決まで、手広く困ってる人を助けるのも仕事のうちなんですよね、あ、無理にする必要は無いですから、解決法が分かんないときとか手が足りない時に頼れる場所って思って貰えれば」


代わりにとビバさんから提案を一つ、確かに今回の件でこの村での冒険者の印象はかなりよくなっただろう、少なくともただの飯屋と思われる事はなくなる。


「……本当にそんなのでいいのか?」


「広告費って結構馬鹿にならない値段するんですよ、新聞の端に載せるだけなのに云百とか……」


未だに納得出来てないランディさんを納得させるように広告が如何に金の掛かる事なのかを熱弁する。


その辺りの事には手をつけて無かったけど、ビバさんの熱弁ぶりからはあれだけの額を払ったのにほとんど載せて貰えなかった、みたいな不満を感じる。


「……あーそうだ、恩人の名前を聞いてなかったな、改めてランディだ」


もう聞き飽きたのか、話を遮るようにランディさんが割り込む、熱弁していたビバさんも流石に止まり、自分と私を順に指差す。


「私がヴィーヴァル、でこっちが」


「シルヴァーグ・フラットワーズです、何かあればハーリングの冒険者組合まで」


「機会があればまた来てくれ、何にもない所だが景色は綺麗なんだ」


お互いに社交辞令を混ぜつつ、この場を後にする。


予定よりもかなり帰りが遅くなってしまった、飛ばせば組合が閉まるまでには帰れるか。


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