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ナインテイルス ~異世界九尾語り~  作者: クルマキ
三章 ごく短い日常
31/102

広がる謎

-1-


明かりは浮かべず、魔物避けだけを使って奥に進む。


明かりの代わりにラズリアの持っている剣を魔法で松明代わりにしている、ちょうどいい長さの物がそれぐらいしかなかった。


明かりを浮かべるよりは暗いが、それでも十分だ。


明かりを浮かべないのはさっき回収した一つしかないからだ、そんなに使うとは思っていなかった、この後も調査が残っている以上壊れると面倒くさい。


さっきブロブに食われていたのを探して拾ってもいいが、あまり使いたくない。


最大限周囲を警戒しながら奥へと進む。


「あ、いたっすよ!」


不意にラズリアが足を止める、明かりの光よりも少し先、何か大きい物が動いているのが見えた。


こっちに気付いているようで、ゆっくりした動きでこっちに近付いてきている。


「上手く行くといいけど」


ラズリアが半歩前に出ると即興で改造した明かりを取り出す、布で何重にも包まれていて元の大きさから二回り程大きい。


理屈は分からないが直接触らなければ流石に食われないだろう、とこうしたのだが大丈夫だろうか。


わざと負荷を掛けるようにしたのと色々付け足して派手に爆発するようにしたらしい。


他にも魔具免許の試験で見たことがあるような事を色々と説明してくれたがあまり覚えていない。


魔法陣同士の齟齬とか噛み合わないようにとか何とか言っていたが、要するには魔力を込めて少し経つと爆発する。


これをあのブロブの体内に放り込む、魔力に反応するなら勝手に取り込むだろう。


「ダメだったらその時考えるってことで!」


魔力を思い切り雑に込めると語気を強く、思い切り振りかぶって投げた。


思っていたよりもずっと速い球だった、薄暗い中にいるブロブに向かって迫る。


体を広げると球を包み込むように体の中に取り込んだ。


「……あ、目と耳塞いだ方がいいっす!」


言うのを忘れていた、とばかりに言うラズリアは投げ終えると耳を抑え、目を閉じ下を向いていた。


その直後、激しい閃光と爆音が響いた、風は感じなかった。


目を閉じていても回りが白く見えるぐらいには眩しい、思わず腕で目を隠してしまうぐらいに眩しい。


耳鳴りがする、自分が今真っ直ぐに立てているのか分からない。


それが数秒か、数十秒か続いて少しずつ何か声が聞こえてくるのにやっと気付いた。


「──い、先輩!」


やっとそれがラズリアが私の事を呼んでいるのだと分かった、まだ眩しいが薄目で声の方を見る。


「……ブロブは?」


「見当たらないんで大丈夫と思うっす、大丈夫っすか?」


「あんまり大丈夫じゃないけど、気にしないでいいよ」


「……うっす、あそこまで威力出るとは思わなかったっす」


凹んでいる様子のラズリアは置いておいて、ようやく目が慣れてきた頃、明かりを浮かべ改めて辺りを見渡す。


さっきまでブロブがいただろう場所の地面が抉れている、近くの木も一部がくりぬいた様に丸く抉られている。


「とりあえず……この辺りをもう少し調べよう、念のためあまり離れないで」


「了解っす」



-2-


一先ず抉れている地面に近付くと明かりに手を近付け影を落とす。


それを数度繰り返すと光を反射している何かをすぐに見つけることが出来た。


被っている土を払い除けるとそれが小さな刃のような物だということが分かった。


先端の尖った平たい銀色の両刃、柄が見つからないがブロブが食べたのだろうか、刃全体に何かの魔方陣が刻まれているようだ。


「何かの魔具みたいっすけど」


「最初見たときから気になってたんだけど、何の魔具か分かる?」


一度指先で軽く触れ、べたついてないのを確認すると拾い上げ角度を変えながら小さく唸る。


「んー既製品じゃなさそう、っすけど……もっとちゃんとした場所で調べないとわかんないっすね」


「わかった、ありがと」


受け取ると布で包んで仕舞う、帰ったらダレン爺に詳しく調べてもらおう。


少なくともブロブ化した後に誰かがここに来ていた、ということだろうか。


疑問は残るが先に調査を終わらせよう、考えるのはそれからだ。


抉れている場所はこれぐらいか、骨が残っていれば何の魔物を食べていたのかが分かったのだが無いものは仕方ない。


広がり続ける謎に溜め息を吐きつつ森を見上げ


「ちょっと上から見てみるよ」


「あ、私もやるっす」


私が何か言うより先に慣れた様子で木をよじ登っていく。


手慣れてる、そう言えば足跡が残らないように木の上を通っていたと言っていたか。


そんなことを思い出しながら私もラズリアの後に続き登っていく。


登っていく私にラズリアが手を差し伸べてくれた、枝は太く二人乗っても軋まない程度には頑丈だ。


「ありがと、さてと……」


上から見ると何か分かるかも、とは思ったがあまり違いはない。


視線を上げていくと枝の一部が妙に光を反射している、さっきのブロブの粘体の跡だろう。


木の上を通って、さっきの罠に近付いた魔物を上から襲っていたんだろうか。


魔力を食べるブロブ、ガルムの縄張りが変わった原因はあのブロブのせいかとも思ったがそうだとすればブロブ化した原因は別にある。


それに、魔力の違和感の事が少しも解決していない。


「ん?あれ、先輩、何かあるっすよ、ちょっと取ってくるっすよ」


ラズリアの指差すのは真上、見てみると確かに何か金色の物が枝に引っ掛かっているのが見えた。


枝から枝に器用に飛び移り登っていく、念のため落ちたときのフォローを準備しておいたが引っ掛かっていた物を手に取るとまた器用に降り、隣まで戻ってきた。


「何かの魔物の毛……っすかね、これ」


金色の綺麗な毛を私に見せるように差し出す。


ガルムの物ではない、木の上にいるような魔物でこんな目立つ色の体毛をしているのはいなかったはずだ。


どういうわけか、ティルの尻尾と同じ色の毛。


「それとあの辺りの枝、何本か折れてたんすけど何か関係あるんすかね?」


「分かんない事多いな……」


調べれば調べるほど分からない事が増えていく、報告書に書くにしてもなんて書けばいいのやら。


「とりあえず……引き返そうか、もう少し調べたら今日は終わりにしよう」


「了解っす、あの、帰り運転させてもらってもいいっすか!」


「別にいいよ、その前にちょっとやることあるけど」


ミノタウロスがここへ向かってきた足跡があるはずだ、今度はそれを辿る。


結局見つかったのは森の入り口に停まっている大型の、恐らく丸太を運ぶための魔動機だけだった。


何か手掛かりがないかと調べたが妙な物は見つからなかった。


見つかったのは魔動機の予備の鍵と仕事の予定表、丸太を運ぶ為の台車、それから


「……魔具免許あったっすけど」


恐る恐ると言った様子で裏向きにプレートを差し出してくる。


気にせず裏返してみるとあのミノタウロスの写真、魔具免許準二級であること、それから名前が書かれていた。


「フィルスト・ダグザック?」


殺した相手の名前を知った、それだけだ。


それ以上の何かを考えるべきじゃない、気が滅入るだけだ。


「……これ持って帰らないと」


どこで管理している物なのか調べて返してもらわないといけない。


「持って帰るんなら私、運転やるっす!」


さっきの様子はどこに行ったのか、興奮気味にそう言う、無理をして暗い雰囲気を作らないようにしているように感じた。


改めてちゃんと座ると窓枠に頬杖をつき、外を眺めながら溜め息を吐く。


低い音が聞こえて、ラズリアの気味の悪い声が聞こえて、少しすると景色が流れていく。


結局謎が増えただけだ、何もはっきりしていない。


順を追って考えて、推測して、よくわからないのがよく分かる。


決定的な何かが足りてない、まだ何かあるのかもしれない。


目を閉じているとそのまま眠ってしまいそうだが、もう少し考えていよう。

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