表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナインテイルス ~異世界九尾語り~  作者: クルマキ
三章 ごく短い日常
29/102

暴食の軟体

-1-


足跡を辿って奥へと進む、日の光があまり射さないせいで辺りは薄暗い。


今の時期だと葉が落ちていないおかげで探しやすいが、もう少し後だと大変だった。


明かりを一つ浮かせると何故かラズリアが嬉しそうだった。


「何?」


「あ、いや、両手塞がらなくて便利っすよね、それ」


すぐ前に浮いている球体を薄目で見上げながらそう言う。


手で握れる程の大きさの丸い透けた石だ、中には何かの魔方陣が入ってる、魔力を込めると込めた魔力を光源に変える、ある程度明るさも調整出来る。


使った人の魔力を感知して追従したり、その場に留めておく事も出来る、手が塞がらないから便利。


今はラズリアが足跡を追ってくれている、やってみたかったと言っていたが今のところ上手くやれてる。


私は周りの警戒をしているが今のところおかしな所は見当たらない、ラズリアが足跡を追うのに集中しすぎているのが気になるぐらいか。


「あんまり集中しすぎると危ないよ、急がなくていいから」


「あ、すみません、にしても結構奥まで来てるっすね、この人」


「この辺りまで人が来る事そんなに無いんだけどね、危ないし」


理由は単純、この辺りまで来るとガルムの縄張りが近いからだ。


この辺りまで来ないと取れない物もあるからその時組合に依頼が来るぐらいだ。


他の足跡に混ざってガルムの足跡がいくつか見られるが魔物避けを使っているおかげで魔物の姿は見えない。


魔力にも意識を向けてはいるがあの時感じたような違和感はないままだ。


「……あ、ここまでっすかね」


真っ直ぐに向かっていた足跡が途切れたのか、足を止め顔を上げる。


「ん、ありがと、じゃあこの辺りを手分けして調べてみようか、明かりはここに置いておくからあんまり離れないようにね」


「あっちの方見てくるっすよ」


何かあるはず、とここまで来たがこれで何も見つからなかったらまた足跡を探す事になるか。


短く息を吐いて気持ちを切り替える、何か見つかるといいけど。


ラズリアの言ったように大きな足跡はこの辺りに来ると散らばっている、この辺りを調べていたのだろう。


流れ星がこの森に落ちた、ガルムの縄張りが変わるような事があった、違和感のあった魔力と同じ魔力を放っていた、最初は友好的で私が名前を名乗ると豹変した、死体が消えていた、違和感のあった魔力が無くなっていた。


一つずつ状況を抜き出し再確認する、どれか一つでも分かればそこから一気に広がっていくような気がする。


土、草、木、何か手掛かりが無いか何かおかしな所はないか、調べてみるといくつか気になる事を見つけた。


何かを引き摺ったような跡があった、かなり大きい物を引き摺った跡だが途中で途切れていてどこに向かったのかは分からない。


ガルムの物ではない足跡があった、形こそ似ているがかなり大きい、別の魔物の足跡だろう。


足跡を少し追ってみようと思ったが、引き摺った跡に消されてしまっているようだ。


何とはなしに見上げてみる、鬱蒼とした木々が隙間なく広がっている。


上から見下ろすと何かに気付けるだろうか。


「せんぱーい!ちょっと来てほしいっすー!」


声の方に顔を向けてみると少し離れた所からラズリアが口元に手を当て呼んでいるのが見えた、何か見つけたんだろうか。



-2-


「これって何なんすかね」


ラズリアが指差す先を見てみると木の根元に白い丸いものがいくつか転がっていた。


試しに一つ、鞘の先で軽く触れてみると弾力がある、念のため他の物にも触れてみると同様に弾力があった。


「スライムの核……かな、なんでこんな所にあるのかは分かんないけど」


スライムは死ぬとこんな感じに核だけが残る。


この核を目当てに他の魔物から襲われる事もあるのだが今の状態はよくわからない。


他の魔物に襲われたのなら核が残っているはずは無いし、自然に死んだにしては数が多い上に固まっている理由が分からない。


それに死んでからあまり時間が経っている訳ではないようだ。


立ち上がろうとした時、不意に辺りが暗くなった。背後を向くと同時、身構える。


光源が消えたせいではっきりとは見えないが何かがいるのが分かる。


「……スライムかウーズっすかね」


「何でこんなっ……!」


明かりを取り出しつつ、所に突然、と続けようとして気付いた、すぐ上に何かいる。


ラズリアの手を掴み、そこから飛び退くようにして離れる。


バランスを崩して倒れそうになっているラズリアを受け止め、明かりを浮かべるとさっきまでいた場所に体を向ける。


「ごめん、大丈夫?」


「ちょっとびっくりしたっすけど、大丈夫っす!」


上から落ちてきた巨大な塊、一目見てただのスライムもしくはウーズだと思った、透けた体の中にいくつもの核が無ければ。


透けた体の中に目のようにも見える白い核がいくつもあった、その全てがこっちを見ているような気さえした。


よく見ると消化できなかった様子の魔物の骨がいくつも、それに光を反射している物が見えた、何かの刃だろうか?


「うわっ気持ち悪っ!」


「核が何個もあるようなのは初めて見たけどっ!」


明かりのあった方から勢いよく飛んできた何かを反射的に正面に弾き飛ばす。


どうやってあんな勢いで飛んできたのかはわからないが、弾き飛ばしたのは体の中に明かりを取り込んだ別の個体だったようだ。


魔物避けが機能していない理由は後で考えるとして今はあれを何とかしないと。


「多分ブロブ化してる、ここで仕留めよう」


「とは言えどうすればいいんすか?あれ」


普通のスライム種なら核を潰せば死ぬのだが、目の前のあれは普通ではない、全ての核を潰せばいいんだろうか。


試す意味でも一度やってみようか。


刀を抜き軽く地を蹴る、勢いを殺しすぎないように加減しつつ、核目掛けて真っ直ぐに突き刺す。


泥の中に刃を沈めるような感触、刃は通った、核を一つ貫いてみたがやはりその程度では死なないようだ。


体の一部を伸ばし鞭のようにしならせ私に向けてくるが対応は十分に間に合う。


捻るようにして勢いよく刀を引き抜き、向かってくる体に向けて振り上げる。


切り飛ばした部分が勢いのまま宙を舞うとそれが地面に落ちるよりも早く地を蹴り、一度ラズリアの隣まで距離を取る。


「核全部潰さないと駄目かな、あれ」


「……なんか増えてないっすか、あれ」


げんなりした様子で指差す先を見てみると確かにラズリアの言うように切り飛ばした部分が動いている。


切り飛ばした部分に核があったからだろうか。


「とりあえず核潰せばいいんすよねっ!」


あまり近付きたくないからか、分裂した個体に薄緑の短剣を勢いよく投げ付けた。


のだが勢いが足りなかったのか、核までは届かず体に深々と突き刺さるだけだった。


その様子を見て引き戻そうと手のひらを向けるが


「……あれ、戻ってこないんすけど……ってあぁー!?」


手元まで戻ってくるはずだが変わらず深々と突き刺さっているままだ、それどころか飲み込んだ。


それと同時、何かに蹴り飛ばされたような勢いで真っ直ぐに向かってくる。


咄嗟に防壁で受け止めると思った以上に重い一撃に体が後ろに倒れそうになったが何とか踏ん張る。


辺りが暗くなっている、さっき突っ込んできたのにまた明かりを食われたらしい。


反動で宙に浮いているブロブの核をそのまま貫くと体が崩れ落ち、取り込まれていた物が落ちた。


「って!大丈夫っすか!?」


「大丈夫、一旦退こう、先に行って」


「了解っす!うへぇ……」


粘体まみれの剣を拾い上げ、その様子を見てげんなりしているラズリアを先に行かせる。


逃がさないとばかりにさっきのように小さいのがラズリアに飛び掛かってくるが遮る様に体を滑らせ短剣を突き立てる。


飛びかかる勢いもあってか刃は深くまで沈み核を貫いたようだ。


体を維持できず、溶け落ちるようにして貫かれた核だけが残った。

一応食われていた明かりを一つ回収しておこう。


貫いた核を剣を振って落とし、警戒したまま後ずさり距離を広げていく。


でかいのがこっちに向かってきてはいるがゆっくりした動きだ、走れば追い付かれる心配はないだろう。


あれについてはわからないことが多い、一度情報を整理しないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ