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堕天のお使い2



「はあ。春の先輩・・・・・・ですか。随分と大人びてる子ですね」


翌日────というべきか分からないが、結局お昼まで日向の家で寝ていて日向の親に先輩を紹介することになった。お母さんなんて敬語を使ってる。確かに大人びてるよね、先輩は。


「それに外国人か。聞いた通り相当な美人さんだな! はっはっはっ!」


お父さんに関してはテンション上がりまくってる。娘の先輩見て興奮するなよ。バカ親父・・・・・・。


「美人なんてお上手ですわ、お父様。お母様もどうか肩の力を抜いて、春と同じように接してくださいませ」

「俺と同じじゃ駄目じゃないですかね・・・・・・。結構無茶言いますよ、この人達」


家事の手伝いや日向の宿題の片付けとか言ってくるからな。先輩にそんなことはさせられないよ、流石に。

前なんか福引で1等当てなかったら1週間アルバイトさせるとか言ってきたぞ。当たったからいいけど当たんなかったらと思うと・・・・・・。恐ろしい。


「レヴィちゃん! ボール! ボールで遊ぼ!」

「ボール?」

「うん。ボール! これを投げたり、蹴ったりして遊ぶんだよ」


日向はボール片手にレヴィの手を引いて外へと駆け出していってしまった。ここに残ったのは日向の親と俺と先輩の4人。・・・・・・お母さんは先輩にどう接していいか分からず黙っている。お父さんは外国人の先輩見て緊張してるみたいだ。俺を見て目で何かを訴えている。


「あー。えっ・・・・・・と、そうだ! 先輩は総合成績トップなんですよね。他にも色んな知識持ってますし」

「そうなんですか! 家の娘に見習って欲しいです。あの子いつも赤点取って補習受けてるんですよ」

「ふふふ。でも日向さんは明るくていい子だと思いますわ。春もいつも助けられてると言ってますもの」


日向の愚痴と擁護を繰り返すお母さんと先輩を傍目にお父さんが俺に耳打ちする。


「おい、春。あの子と付き合ってるんだろ。どこまでいったんだ? 羨ましいな、おい」

「はあ! 何言ってるの!? 先輩はそんなんじゃ────」

「隠しても無駄だぞ。日向から聞いてるんだよ。春が学校の先輩と桜ちゃんとで二股かけてるって。若いっていいな! 俺なんかが二股かけたら母さんに殺されるぞ!」

「俺だって許されてるわけじゃないよ。一応別々に会ってるし」


絶対聞いてないな。先輩と俺を交互に見て変な笑みを作ってる。俺も人のこと言えないけど何考えてるか丸分かりだぞ、バカ親父。

今まで気づかなかったけどこの人もなかなか変態だ。もしかして────


「太ももとおっぱいどっちが好き?」

「俺は断然胸だ。外国人のおっぱいにはロマンがある! 外国人の巨乳も日本人の慎ましい胸も最高だな!」

「あー。そっすか」

「なんだよ、何か文句あるのか? お前・・・・・・もしかして足派か!? チッ! 小さい頃から仕込んでおくべきだったか」


顎に手を当ててブツブツ言ってるバカ親父。妻子持ちとは思えねぇ。ってか思いたくない。しかも俺の親代わりだぞ。親がおっぱい好きになるように仕込むとか言ってるとか悲しくなる。

そう考えるとため息がこぼれてしまう。


「いや、俺はどっちでもいけるから。なんかさ、今の父さん見てると知り合い思い出すんだよ」

「知り合い? 白泉くんか? お前の男友達は彼しかいないからな。すぐにわかるぞ」

「違う。白泉は二の腕派だから。あの先輩のお兄さんだよ」

「本当か! 今すぐ連れてこい! 家に泊めて夏休み中話をしよう。お前も混ざれよ、春」

「嫌だよ! それに連れくるのも無理だ! お兄さんは忙しいんだよ、貴族だから」

「そうか。貴族か。なら仕方ないな。あー! くそっ! 折角仲間が増えると思ったんだけどなぁ」


頭を掻いて笑うお父さん。どうしようもないな、この人。


「分かったよ。すぐには無理だけど会えるように話してみる。それでいい?」

「おう! 絶対だ、約束だからな」


お父さんと小指を絡めて約束する。約束。その時は俺も一緒に話せたらいいな。いや、絶対に話そう。だから早くアザゼルさんのお使いを終わらせてセラって幻想体ファンタズマを探すんだ。


「じゃあ俺、用あるから行くよ。あと先輩にはもっと気楽に接してあげて。固いの好きじゃないんだって」

「分かった。昼ご飯は食べてくんだよな?」

「俺はいらないや。レヴィと出掛けるから外で食べる」

「そうか? 久し振りに食べてけばいいのに」

「次の機会にでも食べさせてもらうよ。じゃあね」


そう言って部屋を出る。よし、先輩は気づいてない。お使いを再開しよう。

まずは取り忘れたグリム鉱石を取りに行こう!





思い描いたのは敵わない敵。俺はそれを自分の力として使える。だから英雄、ディルムッドやジークフリートの動きを死ぬほど見てコピー出来るようになった。

でもラーヴァナには勝てなかったんだ。力、魔力、速さ。全てが俺を超えていて、俺の知る英雄を超えていた。

アモンもそう。少し戦っただけでもわかる。あれには勝てない。ヴリトラが悪いわけじゃない。俺が、俺自身が弱すぎる。

俺がもっと強くならなきゃ、竜の強い力を生かせないんだから。


「────ル。・・・・・・ハル」


肩が揺らされて誰かが呼ぶ声がする。目の開くと目の前にはレヴィの顔があった。泥だらけの体は俺の膝の上に乗っている。


「うん? どうした?」

「いっぱい、遊んだ。丸いの、蹴って、投げた」

「うんうん。もう何回も聞いたよ。楽しかったんだよね」


無言で頷くレヴィの頭を撫でてまた目を閉じる。日向の家を出てレヴィを迎えにいって、そのまま魔界の電車に乗った訳だが・・・・・・。

レヴィはそれが不満らしくずっと俺の膝の上で日向と遊んだ話を繰り返している。よっぽど楽しかったんだろう。その話をしてる時は見たいことないくらいの笑顔を見せてるんだから。


レヴィには悪いけど俺にはやることがある。瞼の裏に描くのは逃げ場のない闘技場の場。そこに佇む白い大剣を持つジークフリートさんと俺。

刀を握って────駆け出す!


バルムンクと火花を散らす刀。この人の攻撃は重くて鋭い。いつだって俺の隙を突いてくる!

ジークさんの連撃を刀で弾いてガードする。手がビリビリする。力負けしてる証拠だ。でも────


「────黒炎こくえん!」


刀に黒い炎を走らせて薙ぐ! ジークさんはそれを後ろに飛んで躱す。当たらない・・・・・・。でも攻撃は何とか凌げてる。

本番はここからだ。ジークさんの動きが加速する。右手から金属音が弾けて刀が飛んでいく。

振り下ろされる白銀の大剣。それは俺を両腕で受け止める。


第二段階セカンド・ギア


体を黒炎が包み竜の鱗を作り出す。それでも大剣の動きは止まらない。竜殺しの特性を遺憾無く発揮して俺の腕を切り落とした。

無くなった腕に視線を移した瞬間────


「なっ!」


首に大剣が当たる。鱗を貫いて肉を抉り、骨を断つ。落ちた俺の目に映ったのは血を噴出してる俺の体だった。





「あー。また負けた!」


ジークさんとの妄想《戦い》が終わって両手を伸ばしながら呟いた。何回やっても勝つイメージが湧かない。他の英雄とやってもだ。

因みに・・・・・・、レヴィは俺の両頬を引っ張って遊んでる。何やってるんだろうか。


「ハル、負け。レヴィ、勝ち?」

「いや、レヴィじゃなくて。ちょっと私用だよ。頭の中で戦ってたの」

「殺し合い、だめ。ハルが、言ったのに」


レヴィがプーっと頬と膨らませた。殺し合いではないんだけど。似たようなものだから否定はしない。


「そうだな。殺すのは駄目。でも、戦わなきゃいけない時もあるんだよ。例えば・・・・・・意見がどうしても合わない時とか。皆が傷つかないっていうのは難しいんだ」

「じゃあ、殺す?」

「そうしなきゃいけない時はね。でも、誰も彼も殺すのはいけないんだぞ」

「殺す、いけない。でも、殺さなきゃ、だめ?」

「うーん。そういうわけでもない気がする。結局のところ強ければ見逃すって選択肢も出来るわけだからなぁ。要は出来るだけ殺さないように戦おうって話」


なんて話してるうちに目的地に着いた。レヴィを膝の上から下ろして移動する。

さて、最初は山に行こう!




山には人の姿はない。ラーヴァナ来襲の次はレヴィの出現だもんな。普通の人なら絶対寄り付かない。

レヴィの作った死体の山はまだ残ってる。改めて見るとすごい数だ。20や30ってレベルじゃないぞ。


「グリム鉱石ってなんだ? どれを取ればいいのかな────」

「これ」

「速っ! えっ、これなのか?」


レヴィが持ってきたのはカブトムシみたいだ。いや、銀色のカブトムシだ。それを両手いっぱいに持ってるもんだから気持ち悪い絵になっている。


「俺が探してるのは石だと思うんだ。虫じゃなくて」

「これ、石」

「絶対石じゃないよ! だって動いてるぞ! わさわさしてる。大丈夫なのか? それ」


っていうかどこから見つけて来たんだよ。なんか怖いよ、それ。気持ち悪いよ。


「真面目に探そうか。間違えるとアザゼルさんに怒られるから」

「これ、合ってる。溶かして、使う」

「これ溶かすの!? 生きてるよ! 大丈夫か? なんか・・・・・・気持ち悪いぞ」

「・・・・・・ん」


レヴィの口数が少なった。虫を握り潰すくらいに拳を握って体を震わせている。


「こっち」

「えっ? ちょっ! 嘘────」


レヴィに手を掴まれて死体の山に突っ込まれた! 体中に血が垂れてきて気持ち悪い。あと臭い。

腕から伝わる感触でレヴィが震えてるのが分かる。何か・・・・・・あったのか?


『悪魔が数体。全員最高クラスだな』


頭からヴリトラの声が響いた次の瞬間、足音が複数聞こえてきた。


「なんでこんな所まで調べなきゃいけないんですか?」

「ここでセラ様を見たって情報があったんだ。真偽を確かめなきゃいけない」

「でも、いないですね。あるのはラーヴァナが作ったらしい死体の山だけ。そのラーヴァナも数で押されて死体になってる。殺した犯人は鉱石を持って逃げたんじゃないですか?」

「ああ、そうみたいだな。そこらじゅうにグリム鉱石が散らばってる。ったく気持ち悪い虫だ。帰るぞ、情報はガセだ」

「了解です!」


死体のせいでよく見えないけど帰ったみたいだ。助かった・・・・・・のかな。でも気になることを言ってた。セラ。俺達が探してる幻想体。逃げてるならどっかで合流したいな。無理だろうけどさ。


「どうする? グリム鉱石そこらじゅうにあるらしいけど」

「レヴィ、少し持ってる。だから、次、行く」

「分かった。あの人たちに見つかると面倒だもんな」


次は、龍の逆鱗だ。・・・・・・ってこれ、採れるのか?


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