学校とは 8
日差しが強くなった最近。
ここは山々に囲まれた国だからか前世の世界の様な暑さはほぼない。
春とあまり変わらない気温差で、過ごせる毎日なのだが…。
今日はちょっとだけ違う。
オレンジを基調とした、可愛らしいドレスに身を包まれている為、少し暑い。
まぁ、こんな粧し込むのには理由がある。
目の前には藍色を基調としたスーツを着ている兄がいる。
その表情は笑顔が広がり、私もつい釣られてしまう程だ。
「ファナメリア!誕生日おめでとう!」
そう、今日は私の五歳の誕生日。
1ヶ月前姉のレミーナが、無事にハロマン家の者となり、幸せな過ごしているであろう今。
私の胃はキリキリ痛くなっています。
なぜって?
それはね…魔力測定まで、もう1年をきった事?
そうではない。
確かにそれもそうだけど。
それよりも、私の胃を確実に痛めつける原因になっているそれに視線を寄越した。
そこには兄と、エレン。
それからもう一人の少年。
その少年は艶やかなブロンド髪を風に靡かせ、黒と青を基調とした貴族らしい服装をして、均整のとれた顔でにこやかに笑っている。
「こんにちは、ファナメリア嬢。初めましてかな?」
ふわりと微笑みながら、私に少し目線を合わせる為膝を折ってくれた。
その時見えた、その人の瞳はどこまでも澄んでいる海色。
ハワイアンブルーって言うのだろうか。
つい、完璧な仕草も相まって一瞬見とれてしまった。
「はい。初めまして。…えと、今日は私の為にお越し頂きありがとうございます。」
「ふふっ、可愛らしいレディだ。名乗り遅れたね、私の名前はユリウス。ユリウス・ベルリア・フォンガード。一応この国の第一王子だよ。」
自分の胸に手を当てながら、その人はそう言ってまたふわりと微笑んだ。
その仕草で周りにいたマダム達が頬を染め、うっとりとした表情で見ている。
だが、私には胃をキリキリさせる原因でしかない。
だって、だってですよ?
ユリウス・ベルリア・フォンガード
この国の第一王子にして、王太子。
まだ八歳でありながら、その聡明さは王太子に相応しく、婚約者になろうとするご令嬢は後を立たず。
ゲームでは我が姉、レミーナが婚約者になっていた筈だ。
普通なら、公爵家から勘当され子爵家になった姉は、到底地位が足りず無理な話であったが、姉の母方の祖父はこの国の宰相であり、侯爵の位を持っていた。
それにより、祖父も姉も己の野心の為、利害の一致という奴で協力し姉は王太子の婚約者となったのだ。
だが、姉は伯爵家のご令嬢で、姉の祖父とは無関係になった。
そして、今。婚約者候補が多数いるこの人は目の前で笑っているのだ。
このユリウス殿下は。
攻略対象じゃんこの人!!
光!話が違うでしょ!
魔力測定まで、会わないと思ってたのに!
ゲームと違い、ファナメリアが攻略対象と関わる時期が分からなかった私も私だが、こんなに急に来るとは思わなかった…。
私が心の中で頭を抱えながらそんな事を考えていると、ユリウス殿下はゆったりと姿勢を正し、私の手を取った。
「誕生日おめでとう。ファナメリア嬢。」
「ありがとうございます。ユリウス殿下。」
「ふふ、お互い長いね。ファナメリア嬢。ユーリでいいよ?」
一瞬私は呆気を取られ、目を見開いて驚いてしまった。
ぐっ……。
殿下は天使の微笑みをしながら、言っていることは私の胃を痛めつけてる。
周りにいる年頃のご令嬢からの視線が痛いです。
まぁ、この誕生日会に来ているご令嬢など、所詮は兄やエレンを目的に来ている筈。
早く優良物件である兄やエレンの許嫁になりたいのだろう。
だから、殿下や兄やエレンの三人に囲まれている私が羨ましいとか、そういう感情を持っても仕方ないとは思う。
だが、人を睨むのはいけないと思うぞう!
「…ではユーリ殿下とお呼びしていいでしょうか…?」
「殿下もいいよ。」
「……ユーリ様、でしょうか…。」
「うん。」
私が殿下の愛称を呼んだ瞬間、ご令嬢からの視線が鋭くなり、私の胃がさらに痛くなっていく。
殿下の私の手を握る力が少し強まり、目の前の彼は頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。
ねぇ、殿下。とりあえず周りの視線に気づいて。
ゲームでは、ユリウスはクール系な王子で、クールなのに時々天然になるからかっこいいよりも、可愛いという意見が多かった。
そっか、天然はこの頃からかー。
そんな事を考え、私はそろそろ諦めた方がいいのだろうかとか思い、心の中で遠い目をした。
また新キャラ登場です。
すみません…説目不足の部分を大きく変えました。




