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兄弟とは 8



エレンはそれから度々我が家を訪れるようになった。


あの後、兄に聞いたが彼の家は伯爵家で彼の父と公爵である我が父との交流が学生時代からあったらしく、それから息子達も同い年という事もあって社交界で出会ってから彼は兄と仲良くなっていたらしい。


兄が砕けた口調で話しているのをよく見かけているので多分親友と呼べるのでは無いだろうか。


まぁ親友なら度々来て遊ぶというのは分かるがせめて………



「ミカエル!ダウト!」


「ふ…!お前の負けだエレン!」



一応言っておこう。ここは私の部屋である。


2人はカードゲームに夢中なのか、年相応に遊んでいるようだが、何故か私の部屋で遊んでいる。



……兄よ。自分の部屋で遊んでくれよ。



一度や二度なら分かる、が、もう4回以上だ。


その度に私はピアノの練習に集中が出来なくなり、視線で出てけと訴えても伝わる筈もなく、そろそろ諦めてスルースキルでも身につけようかと思う。



ただ最近気づいたのだが、時々エレンの視線がピアノへいっている事。

彼は気づいていないようだが、私が休憩の最中談笑をしているとお茶を飲みながらピアノを見ているのだ。

今日もまだカードゲームをしながら気になっているようで、はっきりいってうざい。



ハッキリしろよ!男だろ!



と言いたくなってしまうが、そんな自分を抑えてピアノを弾く私を誰か褒めて。



なんて思いながら弾き終わると兄が「今日はなんか迫力があったね。」なんて言ってきたので、いつの間にか怒りが感情移入していたのだと自分に対して白い目を向けたくなった。


私がピアノから離れると、またエレンがピアノをチラチラと見始めた。


前回までならなんとか見過ごしたが、今回はそうではない。



「…エレン様、不躾ですがピアノをお弾きになりますか?」



「え。」



私の言葉に驚いたのか兄とエレンは、目を見開いて口をあんぐりと開けていた。


何とも可愛らしい顔のあほ面である。



「ファナ、それは…。」



はっと我に帰ったのか、眉を顰めて複雑そうな顔をしていたが、家で反対されている事やあまり賛成して頂けない事など男なら考えられる事情だ。


だが、ここでそれに気にされていたら私の怒りがピアノにどんどん移る。




「良ければ私の我儘を聞いてくれませんか?」




我ながらあざといと思う。


さぁと彼を促せば、兄も仕方ないだろと苦笑しながら私と一緒に彼を促す。


彼は複雑そうな顔をしながら、ピアノの前に座りこちらを恐る恐る伺うが私は黙って大きく頷いた。



早く弾いて視線を黙らせろと…



エレンは意を決したのか兄と演奏してもいいかと聞く。


兄は兄で顔を伺うと、呆れた顔ではいはいと答えていたので多分2人は学校で何回か弾いたことがあるのだろう。



「…ファナ、何の曲がいいとかあるかい?」



エレンの横に座り鍵盤に手をおいた兄が、こちらを伺うが私は2人で弾きやすいものでと断りを入れた。


ソファーへと靴を脱ぎ腰を降ろすと、横にいたルディがお茶を出してくれたのでエレンへの怒りが幾らか収まった。



恐るべし紅茶マジック。



紅茶で癒されていると2人の連弾が始まる。


音楽が始まった時空間が割かれたようだった。

情熱的なメロディーと、それに合わせる伴奏のハーモニーが部屋中に響き渡り急に耳に来た衝撃を受け、今度は私が呆然とする番だった。



音一つ一つに空気が震え、私のカップを持っていた手が腕が震える。


演奏中思わず息を飲んでしまうぐらい圧倒され、最初にメロディーを弾いていたのがエレンで、伴奏を弾いていたのが兄なんだとわかった時にはもう曲が終わりだった為、2人は椅子を降りていた。



「…すごい…。」



と呟いたのは誰か、私か。


無意識に口に出してしまい手を叩いていた。


2人とも満足そうな顔をして笑うから、2人の傍に寄り賛辞を述べると満更でも無さそうにありがとうと各々言ってくるので、こちらも押し付けがましかっただろうかという不安が無くなった。


特にエレンの演奏はびっくりで、あんなにも綺麗に弾けるメロディーはこの生に生まれるよりも前から知らなくて。


エレンの方に視線を向き変えると彼は少し驚いたがすぐに「なぁに」と聞いてきた。




「…また、弾いてくれますか…?」


「え?いいの?」




恐る恐る聞いたら予想外にも、彼もまた弾きたいと満面の笑みで言ってくれた。

兄も力強くうなづいていたので彼が来るたび2人に弾いてもらおうと決した私だったが、そんな時だった。




「ファナメリア様!」



強いノックが部屋に響いたのは


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