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13 なんだかんだで味方な執事(お目付け役)



 お目付け役を前面に出すことで兄に言い訳を作るやり手なスレイヤー。

 帯剣はしていなくても戦闘能力が低くないのは知っている。

 だからこそ、頼ったのだ。

 ロリ様は弱くはないけれど王子なので不審者と戦ってくれとはいえない。

 本当に不審者がいるかもわからないので兄を動かすのもむずかしい。

 私の言葉で動いてくれる上に戦う力があるのはスレイヤーだ。

 頼って正解だった。

 下着の件は忘れるに限る。あれは仕事だったのだ。

 

 

 自分を忘れるなというようにりゅーりゅーがガルルと鳴く。

 りゅーりゅーはかわいいのが仕事だ。

 留守番をさせるか悩んで結局、抱き上げて持っていくことにする。

 見た目のずっしりとした重量感に反してりゅーりゅーは軽い。

 ぬいぐるみ感覚で持ち運びができる。

 

 竜の危険性について両親から散々言われたのでりゅーりゅーの強さは知っている。

 小竜とはいえりゅーりゅーはあごの力は人の指など噛みきれるらしい。

 輝く指輪を手に入れるためにバクッと指ごと食べることもある。

 竜を見たら指輪を投げつけ、竜の関心が指輪にいっている内に逃げろと言われている。

 

 私のりゅーりゅーに限ってはそんなことはない。

 とても温厚で獰猛さの欠片もない。

 

 事故だとしても人に噛みついて犬が保健所に連れて行かれたという悲しい事例を聞いたことがある。

 人間に噛みついてしまったり、人間をかみ殺してしまったら犬は殺されてしまう。

 警察犬が犯人を捕まえる際も首や皮膚なんかを噛まずに服を引っ張るように指導されている。

 そういう話をニュースで見たことがある。

 そのため私はりゅーりゅーに徹底的に人には何もしないようにと躾けた。

 私が目の前で死んでも何もできないのはりゅーりゅーからすると悔しいかもしれない。

 でも、私は生き返れる。

 生き返ることができる私のためにりゅーりゅーが死んでしまったら悲しいなんてもんじゃない。

 生きている私のためにりゅーりゅーにも生きていてもらわないといけない。

 

 私を殺した人間を私が見ていなかったり思い出せない場合、りゅーりゅーはとても頼もしい。

 

 

「りゅーりゅーりゅーりゅーりゅりゅりゅー」

 

 

 りゅーりゅーを撫でて心を落ち着ける。

 スレイヤーから緊迫感がないと苦情をもらった。

 

 誰かに危害を加えるのは胃が痛い。

 誰かから危害を加えられるのも気持ちが落ち込む。

 

 私が過去に戻る状況は二種類考えられる。

 

 殺され続けてその状況から逃げられないか、精神的に生き続けることが困難になったか。

 

 身体はいくらでも治る。

 不死だから肉体の欠損を補ったり、肉体の時間を巻き戻して対応できる。

 心はそうじゃない。

 どれほど身体が死ななくても私の心が死ぬことだってある。

 

 私の不死は肉体だけの話じゃない。

 

 心も死なないようにできている。

 狂ったり、私が私でなくなったりしないようになっている。「このままでは生き続けられない」と心の底から私が思った場合、その状態にならないように過去に戻れる。

 

 今回のりゅーりゅーの鱗の数のような違和感がなければ過去に戻ったことに気づけない。

 それが一筋縄ではいかないところだ。

 精神的に負担がかかったからこそ私は「このままでは生き続けられない」という判断をした。

 

 全然覚えていないというか意図的に忘れている誘拐事件がある。

 六歳ぐらいのときに一人で探検として歩き回り、中年男性に連れ去られ拷問された。

 何度も何度も同じ曲がり角を見ることになって不審に思って自室に引き返した。

 ちょうど兄がいたので出歩いていることを叱られながら変なことはないか聞いた。

 すると目を離したすきに妹が消えて探しているという。

 私が進めなかった曲がり角に兄とともに行くと貴族ではない中年男性がいた。

 

 初めて会ったのに恐ろしくて私は怯えた。

 

 それを見たからか兄の判断は早くためらいもなかった。

 男性の手足を切り付け無力化して荷物を検査する。男性の持っていた袋の中に妹がいた。

 

 たぶん、私は探検中に男性と遭遇して妹ともに連れ去られた。

 兄から聞いた話だと男性の家には女の子の拷問された死体がいくつもあったという。

 

 妄想かもしれないけれど、私は誘拐され拷問された。

 思い出そうとすると気持ちの悪さと指先の痛みがある。

 爪をはがされたのかもしれない。

 

 そして、ここからは推測になるが、目の前で妹が殺されたから過去に戻ってやり直した。

 妹が死ぬ未来をなかったことにしないと私が生き続けられなかったからだ。

 これはもちろん推測で妄想だ。

 妹の誘拐事件は未然に防がれ、私の誘拐はそもそもなかった。

 

 私は私の力を把握しきっていない。

 私の心も体も死なないために起きる現象を完全に理解していない。


 でも、たしかなことはいくつかある。

 

 初対面の人間に見覚えがあったら私の死に関わっている可能性がある。

 過去に戻らなければならなくなった出来事に関して、記憶が全くないわけではない。

 手探りでも引っ掛かりを追っていけば私にとっての最悪な展開は回避される。




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