第23話:Wonderful Days
「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
静まり返った現代のLDRルームに、高く、力強い産声が響き渡った。
それは、新しい命がこの世界に生まれ落ちた瞬間だった。
助産師さんが、あたたかいお湯できれいに拭かれた小さな赤ん坊を、そっと結の胸元へと抱かせる。
「元気な女の子ですよ、お母さん。お疲れ様、本当に頑張りましたね」
「ああ……」
結の目から、熱い涙がポロポロと溢れ落ちた。
差し出された小さな手のひらは、驚くほどあたたかく、結の指をぎゅっと力強く握り返してくる。その確かな温もりを感じながら、結は愛おしそうに娘の顔を見つめ、静かにその名を呼んだ。
「あなたの名前は……『愛』よ」
その瞬間、結の脳裏に、まるで遠い記憶の彼方から届いたような、けれどどこまでも懐かしく優しい声が響いた気がした。
――今まで、ありがとう。
――そして、これからもよろしくね。
気のせいなんかじゃない。この子は、この世界は、最初からずっと自分たちを愛してくれていたのだ。
バタン、と勢いよく扉が開き、廊下でずっと祈り続けていた旦那さんが飛び込んできた。185センチの大きな体をさらに丸くし、眼鏡の奥の目を真っ赤に腫らしながら、結と赤ちゃんの前に崩れ落ちるようにして泣きじゃくっている。
「結、ありがとう……! 本当に、本当によく頑張ってくれた……!」
「ええ、あなた……。見て、とっても可愛い女の子よ」
窓の外を見上げれば、日付はすでに12月25日、クリスマスの朝を迎えていた。
いつの間にか夜通しの雪は止み、雲の隙間からあたたかな冬の太陽の光が、差し込む光の帯となって3人を優しく包み込んでいた。遠くの街並みでは、聖夜の余韻を乗せた穏やかな鐘の音がどこからか響いてくる。
世界は、なんて優しくて、美しいのだろう。
愛する夫がいて、腕の中には小さな愛がいて。
そしてこれからも続く日常がある。
これ以上ないほどの幸福感に包まれながら、結は
心から、静かにそう呟いた。
「なんて素晴らしい日々だ」
長い道のりを経て、ようやく結と、そして小さな愛がこの世界に誕生しました。
そしてここからが、すべての物語の「答え合わせ」の始まりです。




