第16話:Prologue of 2000
西暦2000年、新しいミレニアムの幕開けと共に、私はこの世界に産声をあげた。
母から聞いた話では、私の誕生は拍子抜けするほどスムーズだったらしい。病院のベッドの上で、母は「本当に手がかからない子だった」とよく笑っていた。私自身、物心ついた頃から、なぜか不思議なほどツキに恵まれていた。
近所の空き地を駆け回り、高い木に登っては落ちて、あちこちに擦り傷や切り傷を作って帰ってくるのは日常茶飯事だった。母には「女の子なんだからもう少しおとなしくして」と呆れられたが、痛みに怯えた記憶があまりない。
なぜなら、どんなに派手に転げ回って血を流しても、翌日には嘘のように傷が塞がり、跡形もなく消えてなくなっていたからだ。「私の肌、新陳代謝が良すぎるのかな」くらいにしか考えていなかったけれど、今思えば少しおかしな話だ。大きな病気もしたことがない。
それだけじゃない。
小さい頃から、数字や計算は特別な勉強をしなくても自然と頭に入ってきた。教科書の隅にある数学のパズルを解くのが好きで、解答のプロセスが頭の中でパズルのピースみたいにカチリとハマる感覚が心地よかった。英語の授業も、初めて聞いた瞬間からどこか懐かしい響きがして、すんなりと頭に馴染んだ。
「結ちゃんって、本当に変わってるよね。でも、なんだか楽しそう」
友達からはよくそう言われた。
授業の合間にノートの端へこっそりレシピのメモ書きを走らせる。新しい料理の組み合わせや、出汁の引き方を考えるのが、私にとっての密かな楽しみだった。
背は中学に上がる頃には150センチでピタリと止まってしまい、それが少しだけコンプレックスだったけれど、それでも毎日が穏やかで、満たされていた。
なぜなら私は、今日も元気に生きているのだから。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
西暦2000年に誕生した結の視点から、その驚異的な治癒力や「運の良さ」、そして数学や英語、料理に対する不思議な才能を描いてみました。
ここから始まる彼女の歩みが、どのように未来へと繋がっていくのか。




