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その後、エルフがもじもじしているので、
気まずい雰囲気になり、少し焦る。
ここは少し話すべきか?
「もしよろしければ、どうして追われていたのか
教えて頂けますか?」
そう言うと、やはり言いたくて、でも言おうか迷っていたのだろう、
エルフは一気に事情を説明しだした。
「エレナを助けたいのです!」
「エレナさん?」
そこではっとしたような顔をして、説明を始める。
「エレナは私の妹です、ジェネラルゴブリンに
つかまってしまったのです」
「妹さんが・・・」
それで焦っていたのだろうと検討をつける。
「すみませんが、まず、あなたのお名前は・・・」
そう言いかけて、自分も名乗ってなかった事に気づく。
「俺は須藤陽翔といいます」
「スドウハ?ルト?」
「えっとスドウがみよじで、ハルトが名前です」
「名前が二つ?ハイネーム?貴族なのですか?」
ん?日本でも昔そうだったけど、
普通の人は名前だけで、みよじをもっているのは偉い人
みたいな感じなのかな?
とりあえず、ややこしくなったら困ると思って。
「ハルトと呼んで下さい」
と笑顔でごり押しする。
俺の事を精霊王とだと思っているらしきエルフは、
その言葉をそのまま受けて入れた。
「分かりましたハルト様。私はセスティナです」
「様はいりません、よろしくセスティナさん」
「私こそさんはいりません、呼び捨てにして下さい」
セスティナがぶんぶん首を振って焦っているので、
そういや西洋では呼び捨てが普通か、と深く考えず、
呼び捨てで呼ばせてもらう事にする。
「セスティナ、俺も妹を助ける手助けをしたいと思います、
しかし残念ながら、力ではジェネラルゴブリンに
勝てそうもないのです・・・」
そう言いよどむと、セスティナがぽつりと言った。
「せめて眠らせる事ができればいいのですが」
セスティナさんが言うには眠りが弱点で、眠らせる事ができれば、
こちらかも攻撃できるとの事だった。
「眠らせる方法はないのですか?」
「この眠り粉を撒けば眠るのですが、同時に自分も眠ってしまうのです」
そうか、いくら相手を眠らせても、自分も眠ってしまったら、
何にもならないよな・・・
「眠り無効の丸薬があればいいのですが、
眠り粉だけ買って、眠り無効の丸薬は買い忘れたんです・・・」
耳をシュンとして言う。
意外と間抜けな所があるエルフだ。
「他の方法としては、この眠り粉を調合すると
眠り無効の丸薬ができるそうなのですが・・・」
「調合か・・・」
少し迷って提案する。
「その眠りの粉、少しもらえませんか?」
そう言ってセスティナから眠り粉を受け取り、
アイテムボックスに入れる。
パネルを呼び出し、調合の画面にした。
さて、眠り無効の丸薬か・・・
同じ眠りのカテゴリーだけあって、
素材は被る物も多い、後足りない物は・・・
足りない物が表示される場合、何と何を調合すれば、
その足りない素材ができるかも表示されるので、
それを頼りに調合していく。
昨日散々調合しておいて良かった。
慣れた手つきでいくつかの調合をおこなっていく。
最後はラーフィの実か・・・
って、あの酸っぱい実か、何とも言えない味の・・・
確かにあの実なら、目が醒めそうだ。
そんな事を考えながら調合をする。
「できましたよ」
「え?」
セスティナはかなり驚いているようだった。
シュンと垂れ下がっていた耳が、ピンと立ち上がる。
「眠り無効の丸薬です」
アイテムボックスから、丸い薬を二つ取り出した。
エルフは丸薬を手に、今起こった事が信じられないようだった。