21-5. 三角関数Ⅲ
●三角関数(その2)
では、ここからは三角関数の第2回目。
『そもそも三角関数とは何ぞや?』という基礎を学んだ第1回目の続きだ。
今回は、その三角関数を用いてどんな出題がされるのか、そういった応用問題を学んでいくぞ。
Point⑦~⑫の全6ポイント構成だ。それでは見て行こう!
Point⑦
『三角関数、どんな問題が出るか?』
では、最初からいきなりラスボスに登場してもらおう。
本単元ではこのラスボスを倒せば(=解けば)ゴールだ。
===ラスボス================
次の方程式を満たすθ(0°≦θ<360°)を求めよ。
-cos²θ - ½sin2θ + 1 = 0
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……とはいっても、こんな問題をパッと見で解けはしないよな。そもそもドコから手をつければ良いかさえ分からないだろう。
θに0°、30°、45°、…と繰り返し代入して計算すれば解けなくもないけど、流石にソレをやるのは時間と労力の無駄だ。
ということで、今回は打倒ラスボスのために『道』を用意した。
次の6問が解けるようになれば、完ペキとは言わずともある程度三角関数の知識を身に着けることができるぞ。
ラスボス打倒も夢じゃないし、そうでなくともある程度歯が立つようにはなるハズだ。
===ラスボスへの道================
次の各問において、方程式を満たすθおよびφを求めよ。
但し、0°≦θ、φ<360°とする。
例1)sinθ = 0、sinφ = ½
例2)sin²θ - ½sinθ = 0
例3)-cos²θ - ½sinθ +1 = 0
例4)sin(θ+30°) = 0
例5)cos²θ - cos2θ = ½
例6)√3sinθ + cosθ = 0
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Point⑧
『ぶっちゃけ三角関数なんて"文字"と同じ』
では、まず『道』の例題1から行ってみよう。
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例1)sinθ = 0、sinφ = ½
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コレは単純な三角関数だな。前回の『三角関数(その1)』の知識でも十分に解ける内容だけど、復習ついでにもう一度解いてみよう。
θやφは右を0°でスタートして上・左・下と円を描き、360°一周して右に戻ってくるとしよう。
その時、『sinθ=0』は『円の中心から見て、上に向かって0だけ進んだ時のθ』という意味。勿論、それは丁度真右と真左に居る時だから θ=0°、180°だ。
同様に『sinφ=½』の意味は『円の中心から見て、上に向かって½だけ進んだ時のφ』となる。φ=30°、150° が正解だ。
まぁ、コレくらいならばどうってことないという人も多いんじゃないかな。
では、次に例題2を解いてみよう。
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例2)sin²θ - ½sinθ = 0
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三角関数が2個も入っている上に、謎な位置に²がくっ付いた式。急に難しくなった感が満載だ。
……ということで、まずは新たな記号の意味から。sin²θ、読み方はサイン・にじょう・シータ。意味は (sinθ)² と同じだ。
例えば sin30°=½ の時なら、sin²30° = (sin30°)² = ¼ となる。
あくまでも(30°)の2乗にはならないから注意だ。
で、例題の解き方に戻ろう。
sin²θ やら sinθ やら三角関数が沢山出てきて大変ではあるんだけど……実はコレ、さっきの例題1と次の2次方程式を両方解ける人なら全く問題ない。
x² -½x =0
この程度の方程式、もはや計算用紙を使わずとも暗算でいけちゃう人も結構居るだろう。左辺をxで因数分解すれば、 x(x-½)=0 。よって答えは『x=0、½』だ。
実は例題の方も、xと同様に sinθ で因数分解をしてしまえば良い。まずは sinθ 自体の値を求めてから、対応するθの値を求める2段ステップだな。
sin²θ - ½sinθ
=(sinθ - ½)sinθ = 0
よって sinθ = 0, ½
あとはさっきの例題1と同様にθの角度を求めれば、つまり例題2の答えが出る。
『θ = 0°, 30°, 150°, 180°』だ。
このように、三角関数は一見難しそうに見えるけど……実は方程式を解く上では、三角関数なんてxと同じ『文字』扱い。因数分解も展開も、2乗3乗もルートだってちょちょいのちょいなのだ。
Point⑨
『"互換性"あります』
では、次の『道』の例題へと進もう。
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例3)-cos²θ - ½sinθ +1 = 0
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パッと見た感じ、例題2とまあまあ似た感じの式だ。
違う所といえば sin²θ が cos²θ に、しかもマイナスが付いており、そして +1 が新たに追加。……って結構変わってるじゃねえか。
というのは良いとして、だ。
この問題、さっきと違って sinθ と cosθ が入り組んでいるんだけど、このままではさっきのようなxの方程式風の解き方は出来ない。
sinθ をxに例えれば、cosθ はy。θは共通していても、全く別の文字扱いなのだ。
で、こんな時にどうすれば良いかというと……『三角関数どうしを繋ぐ公式』を使おう。
有名なのは以下の3つだ。
(ⅰ)tanθ = sinθ/cosθ
(ⅱ)sin²θ + cos²θ = 1
(ⅲ)tan²θ + 1 = 1/cos²θ
(ⅰ)は、sin、cos、tanの全部が登場する公式だ。詳細は省くけど、sin、cos、tanのそれぞれを直角三角形の『高さ・底辺・斜辺』に書き換えてみればこの式が得られる。ピンとくるんじゃないかな。
続いて(ⅱ)だけど……もしかしたら、この公式こそが三角関数単元で一っ番重要かもしれないと思っている。θがどんなの値をとろうが、sinとcosの二乗和は必ず1になるって意味だ。
式が割とシンプルなのでそのまま覚えちゃっても良いけど、詳しく知りたい時は類似項目の『三平方の定理』や『円の方程式』を調べてみよう。
(ⅲ)は上2式を組合せた公式なので、最悪2式を覚えていれば忘れても問題ない。(ⅱ)の両辺をcos²θで割って(ⅰ)を使えば、パパッとその場調理で作れちゃうからな。
では、以上を踏まえて例題3に戻ろう。
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例3)-cos²θ - ½sinθ +1 = 0
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この問題を解くには、まず入り乱れたcosとsinをどちらかに揃えるのが常套手段。ソレが出来れば例題2と同じくxの2次方程式風に解けるぞ。
今回は、上の式の(ⅱ)を使ってcosをsinに書き換えちゃおう。
(ⅱ) sin²θ + cos²θ = 1
⇔ 1 - cos²θ = sin²θ
これを例題3の左辺に代入しよう。
-cos²θ - ½sinθ +1
=(1 - cos²θ) - ½sinθ
= sin²θ - ½sinθ = 0
こうして無事sinのみの式に書き換えられたワケだ。
あとは例題2と全く同じ方法で解けば、例題3の答えも『θ = 0°, 30°, 150°, 180°』と得られるぞ。
という事で、ラスボス打倒への道もコレで半分。折返し後半戦では、味方となる新たな『定理』も待っているぞ。
打倒ラスボスだ!




