カテリーナ
最後はやっぱり幸せな2人でしめたい!
「あ、動いたわ」
カンナさまの小さな呟きに、ウィリアムさまは「どれどれ」と言いながらそっとその膨らんだお腹に手を当てました。
「うーん、わかんないな」
「きっと恥ずかしがり屋なんだわ。おーい、お父さまが呼んでますよ?」
カンナさまは自分のお腹に語り掛けていらっしゃいます。すると、タイミング良くポこんっと小さく蹴り返す感覚があったようです。
「あ、いま動いたね」
ウィリアムさまにも分かったようで、口元を緩めてそれはそれは嬉しそうに微笑んでいらっしゃいます。カンナさまがウィリアムさまとの子供をその身に授かって早数ヶ月、お医者様は元気に育っていると言っていますわ。
「元気そうな子でよかった」とウィリアムさまが目を細めると、カンナさまも嬉しそうに微笑みます。
「ええ。もう私、こんなに幸せでいいのかしら。だって、私の中にウィルの子がいるのよ?絶対可愛いわ。だって、大好きなウィルの子よ?ウィルが隣に居るだけじゃなくて、その子供が私の中にいるのよ??」
カンナさまは感動のあまりに思わず熱弁を振るってらっしゃいます。ええ、これぞ生命の神秘ですわね。こんなすばらしいことはありません。
「ねえ、ウィル。そう思うでしょう!?」
カンナさまがウィリアムさまに同意を求めます。おやおや、ウィリアムさまは手で顔を覆ったまま項垂れるようなポーズをしています。良く見るとお耳が赤いですね。これは、今日も奥さまにやられてしまいましたわね。
カンナさまはウィリアムさまの様子にオロオロとして心配し出しましたわ。
「カテリーナ、大変よ!!ウィルの顔が赤いの。熱があるのかも」
カンナさまはすぐに控えていた私に助けを求めてきます。でも、これはいかんともし難いですわ。
「奥さま、大丈夫です。旦那さまは今悶え死にそうになっていますけれど命には別状ありません」
「悶え死にそう??まあ、ウィルが死んだら私は生きていけないわ!」
私の言葉に驚いたカンナさまはウィリアムさまに縋り付いています。カンナさま、もうその辺でやめてあげて下さませ。本当にウィリアムさまが悶え死んでしまいますわ。
私は恋などしない、結婚などしない、と仰られていたあのお嬢さまが今やこの様子とは。
時々、「ウィルって時々真っ赤になって様子がおかしくなるのよ。病気じゃ無いか心配なの」と大真面目に言ってらっしゃいます。これは、ウィリアムさまの受難はまだまだ続きますわね。
それにしても、お二人を見ていると本当に幸せそうでカテリーナは心から嬉しく思いますわ。お子さまのお世話をする日が楽しみです。
ご愛読ありがとうございました!