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クマとトラと女 その14



この人影は街中のにぎやかな往来において一つの狩りを行おうとしていた。獲物は異国からの旅人の財布であった。その財布は旅人の懐の奥にしまい込まれている。確認はとってある。この人影はこの異国の旅人に最初に目を付けて以来ずっと彼らを観察してきた。彼らはホテルから出てくるとあてどもなく町を散策しカフェで小休止した。彼らが勘定をすますさいに獲物である財布の姿をしっかりと確認した。彼らはカフェを出ると町の散策を再開した。彼らは公園のグラウンドに行きそこのベンチに座ると長くそこにとどまった。彼らの一人はなにか大きな悩み事でも抱えている様子で何かの策をねろうと思索に没頭していた。日が天頂に達するとようやく彼らはベンチを離れた。そして今彼らは街中の食堂で昼の食事を取っている。男はその食堂の前に立ち食堂の中の様子をうかがっている。彼らが食事を済ませて勘定を行う頃を見計らって店に入り、懐から取り出された財布をかっさらおうというのだ。彼らは追いかけてくるだろうが男は自分の逃げ足には絶対の自信があった。


ーー鹿と競っても一度だって負けたことはねぇから


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