↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お金で殴る彼氏と普通の私  作者: ロミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/9

ホストクラブ

新連載始めました。

この小説に辿り着いて頂きありがとうございます。

基本、一話完結の連載です。よろしくお願いします。

 


 大丈夫かなあの人・・・。


 親に勧められ、市が主催する婚活パーティーに出席すべく、会場近くの地下鉄出口から地上に出た。


 道路わきの街路樹にもたれかかり、少し小太りの男性が、息を切らして座り込んでいる。


 額には大粒の汗、呼吸は荒く、肩で息をしている。

 傍らには、赤いクロスバイクと、ヘルメットが無造作に転がっていた。


 人通りが多い、地下鉄出口だけど、誰も彼に声をかけず通り過ぎていく。


 私も初めは、見て見ぬふりして通り過ぎた。

 でも、30歩ほど歩いて、立ち止まり、スマホを見た。


 12:30分。


 入場開始まで後30分ある。婚活パーティー会場はすぐそこだ。


 後ろを振り返った、小太りの男性は、まだ座っている。


「ん~。声かけるてみるか」


 私は戻った。


「あの、大丈夫ですか」


 決してやさしくない声で、なんなら低めの声、感情を乗せてない口調で。

 世の中何があるかわからない。弱弱しく、心配している声などかけて、縋られたらたまったもんじゃない。


「はぁ、はぁ、大丈夫です」

 小太りの男性は、赤い顔を少し上げて、私を見て答えた。


 疲れただけ?お酒を飲んでる?どこか痛いわけではなさそう。

 本人が大丈夫と言っているのだから、大丈夫だろう。


「これ(緑茶のペッドボトル)ここに置きます。蓋は開けてないので、よければ使って下さい」


 私は、ペットボトルだけ置いて、そそくさと立ち去った。


 ペットボトルを掴んで、顔を真っ赤にした彼が私を見ていたことなど知らずに。








 さて、婚活パーティーは、正直楽しかった。


 男性とマッチングはしなかったが、料理は美味しかったし、仕事関係以外の人と話すのは新鮮だった。



「さあ、帰ろう」


 会場近くの地下鉄入口に差し掛かった時、一台の高級車が止まり、車から出て来た執事みたいな人から声をかけられた。


「おそれいります。少々お時間よろしいでしょうか」


「いえ、間に合ってます」


「是非とも、確認したい事と、お願いしたい事がございます」


「いえ、忙しいので」


 私が、足早に地下鉄階段を降りているが、ぴったり執事風の男性は着いてくる。


ツカツカツカツカ

「本日昼頃、この地下鉄出口付近で、男性にペットボトルを渡されたのは、あなたですか」

ツカツカツカツカ

「いいえ、人違いです」

ツカツカツカツカ、私は階段を勢いよく降る。

 しつこい、どこまでついてくるんだ。


ガクン!


 履きなれないハイヒールの踵が、勢いに耐え切れず折れた。


「あッ!」

 私は、そのまま勢いよく、階段を転げ落ちる・・・と思ったら、執事風の人に支えられ、転落を免れた。


「ありがとうございます」


「いいえ、お怪我がなくてなによりです」


 執事風の人は、踵が折れて、脱げたハイヒールを拾い上げ、手に持っている。

 私に返してくれない。


「改めまして、私、カプセルコーポレーション代表補佐のセバスチャンと申します。

 福井リザ様ですね。先ほどは、我が主を助けて下さり感謝申し上げます。

 我が主がお礼をしたいと申しております。日を改めまして連絡差し上げます。

 こちらが私の名刺です。何かありましたらご連絡下さい」


 執事風のセバスチャンさんは、私に折れたハイヒールと、名刺を渡して立ち去った。


 なぜ私の名前を知っているのか、お礼とは何なのか、気になる事は多いが、私が始めに思ったのは、やっぱり執事はセバスチャンって名前なんだ、ということだった。







 それらセバスチャンさんから、私の携帯に連絡があったのが、3日後。


 内容は、簡単にいうと、お礼とおもてなしがしたいという事。

 日にちと、迎えに来る時間を指定され、仕事だと断れば、仕事場へはすでに連絡済み。有給扱いになっていると返事が返って来た。

 母の調子が悪いと嘘を話すと、母が今日ダンススクールで踊っていたことも知っていた。


 名前も、電話番号も、仕事場も、実家も、両親の事も調べ上げられている。

 怖い。本気で怖い。


 断りきれず押し切られ、当日となった。


 一応、行く場所は、高級なレストランだと聞いていたので、婚活パーティーに着ていった、一着しか持ってないドレスと、新しく買ったハイヒール。朝、美容院で整えてもらった髪で、諭吉もとい渋沢英一が2枚ほど飛んで行った。


「よし、何をしても回避できない。女は度胸!」

 緊張と恐怖の中、気合で、セバスチャンさんにエスコートされ、迎えの高級車に乗り込んだ。


 高級車の中には、地下鉄出口で気分悪そうにしていた小太りの男性が座っていた。


「この前は、ありがとうございました」


「いいえ、いいえ」


「「‥‥。」」


 その後、男性は何も話さない。私も緊張と何を話して良いかわからないので話さない。

 車内は沈黙。


 高級車の重低音と、ゆっくりしたクラシック音楽がかかる車内。花のやさいい香りがする。


 男性をちらりと見る。


 今日は、汗をかいていない、気分も悪そうではない、でも少し顔が赤い。

 服装は、高級そうな紺のスーツに、小さい柄のネクタイ。髪をオールバックにしているので、今日は顔が見える。

 まじましと見た。

 緊張と恐怖は、一周回ると好奇心に変わるらしい。

 年齢は私と同じか少し上、醤油顔、切れ長の目、顔立ちは悪くない、小太りでなければ男前だろう。無理して組んでいるように見える足、身長は私と同じくらいかな。



 沈黙の社内。することがないので、窓の外を眺めていたら、ネオン街に入った。

 看板に歌舞伎町と書いてある。高級レストランが歌舞伎町?イメージにない。歌舞伎町には行ったことがないのでよくわからない。深く考えなかった。


 高級車が、ビルの前に止まった。


「え!?ここですか」


 ビルにはデカデカと看板が掲げてある。顔の整った男性の看板もドドーンとある。


「そうです、ここです」

 小太りの男性は初めてしゃべった。


 車から降り、小太りの男性が歩き出したので、その後についていく。


「「「いらっしゃいませ」」」

 店の入り口で、顔が整ったお兄さん達が、ずらりと並びお出迎え。


「え!?はい、どうも」

 腰が引ける、ここはホストクラブという所ではないだろうか‥‥。


 小太りの男性は、ホストさんに案内され、どんどん中へ入っ行く。

 私、大丈夫?売られたりしないよね。こわごわと後を付いて行く私。


 ViPルームと呼ばれる場所に案内され、席に着いた。

 周りには、4人のイケメン?男性が接客。

 何やら、話しかけられるが、混乱していてよくわからない。

「あ、は~あ」「そうなんですね」「すごいですね」の三段活用。

 お酒を勧められたが、口を付けるだけで、何も飲まなかった。


 そのうち、お酒に酔った小太りの男性が、何本もシャンパンを注文。

 大勢のホストさんが集まり、大声で叫んでいるが、私は呆気にとられるだけだった。


 小太りの男性が、私に「楽しいですか」と聞いてきた。

 私は、曖昧に微笑んでおいた。


 そのうち立たされ、シャンパンタワーの前へ、

 確かシャンパンタワーて何百万もするんじゃなかったっけ?


 ここでも大勢のホストさん達が、大声で何か叫んでいる。

 それに合わせて、何本も注がれるシャンパン。


 私はその光景を見ながら、もったいないな~。これすべて誰が飲むのかな~、全部飲んだら肝臓悪くなるよな~。などと現実逃避していた。


 シャンパンタワーのイベントが終わり、帰り支度。

 顔が真っ赤で、足元が少しふらつく小太りの男性。

 ホストさんに支えられながら会計をせず外へ。


 慌てた私。

 レジにいる男性に会計は?と聞くと、すでに支払われているそう。

 ほっと胸をなでおろし外へ。

 小太りの男性と一緒に、高級車へ乗り込んだ。


 車内ではやっぱり沈黙。

 でも、真っ赤な顔の小太りの男性は私を凝視している。


 視線に耐え切れなくなった私。

「な、なんですか」


「今日は、楽しめましたか?あなたに楽しんでほしくて、女性の扱いのプロに頼みました。俺では女性を楽しませる事なんてできないから‥‥。」

 赤い顔をした小太りの男性は、急にしょんぼりしてしまった。


「ん~。どうでしょ。初めての体験ばかりだったのでいい経験になったな~とは思います」


「楽しめなかったですか…。ホストの中で、気に入った人はいなかったんですか?気に入った方がいるならお金は出すので通って下さい」

 慌てたように付けたす男性。


「綺麗な顔の人ばかりでした。まるで作られたお人形のようで、現実味がないです。それにうるさい所は苦手です。ん~。もういいかな。次はないです」


「そうですか・・・」

 男性は、しょんぼり肩を落とし、うつむいてしまった。


 あっちゃー。おごられたのにまずかったかな。


「え~と、楽しくなかったとは言ってませんよ」


 小太りの男性は、勢いよく顔を上げたと思ったら、涙と鼻水の顔で、私の両手を取って、

「リベンジさせて下さい。リベンジ!このままでは俺の印象が…。お礼になってません。また日を改めて誘わせて下さい」


 私は顔を引きつらせながら

「いいえ、もう結構です。お礼は十分に頂きました」


 小太りの男性の手に力が入る。

「いいえ、まだです。あなたにお礼がしたいのです。あの時私は救われました。お願いします」


 家に到着するまで、いいえの押し問答を繰り返し、結果的に私が折れる形で、次の誘いを待つことになった。


 家に帰って来た私は、ぽつりと。

「小太りの男性の名前聞いてないな~」












挿絵(By みてみん)

 白河・DG・夜舟様から頂きました

ヒーローの小太り男性

これはラブコメディーでいいのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ロミさん、こんにちは。 「お金で殴る彼氏と普通の私 ホストクラブ」拝読致しました。  昔は、親から勧められたのは、お見合い。  今は、親から勧められるのは、市が主催する婚活パーティ―。  時代…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。