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淡々三国演義  作者: ンバ
第十一回 劉皇叔北海に孔融を救い、呂温侯濮陽に曹操を破る
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二、義人北海に集う

 明くる日、孔融が城に登り、賊の軍勢が余りに強大である事を望見し、ますます暗澹たる思いに駆られていた折の事、忽ちに城外から一人の男が現れて、槍を扱いて馬を躍らせ賊の布陣を切り崩し、左手を衝き右手を突き、無人の野を行くが如くに突き進むと、あっという間に門前へと至った。


 男は大声で「開門!」と叫んだが、孔融の知った顔ではなく、門を開ける事を躊躇っているうちに、賊の軍勢が堀のすぐ側まで迫って来てしまっていた。


 男は身を翻して十数人を立て続けに馬上から吹き飛ばしてしまい、恐れをなした賊徒たちが逃げ出す間に、孔融は急ぎ命を出して門を開かせ、この豪傑を城中へと引き入れた。


 男は馬を下りて槍を納めると、城の上へとやって来て、孔融に拝見した。孔融が姓名を問うと、


「それがしは東萊《とうらい》黄《こう》県の太史慈《たいしじ》、字を子義《しぎ》と申します。老母が従来より足下から重い恩顧を蒙っておる身です。それがしが昨日に遼東より実家へと帰省しようとした折、賊がかの城を脅かしていると聞き知り、母から『私はたびたび府君から深い恩を受けておりますから、お前から御恩返しを、北海の救援に向かって欲しいのです』と言われまして、単騎でこうして参ったのでございます」


 孔融は大いに喜んだ。本来、孔融と太史慈に面識はなかったが、孔融はかねてよりその武勇のほどを聞き知っていたため、太史慈が遠出した事に因んで、城から二十里程離れた老母のもとへ常に人を遣わして、粟や帛を与え続けていたのである。母親は孔融の徳に感じ入り、今こうして、愛息を助太刀に差し向けたのであった。


 孔融は太史慈を厚遇し、鎧衣服や鞍馬を賜ると、太史慈は言った。


「それがしに精兵一千をお貸しいただければ、城を出て賊を蹴散らしてご覧に入れましょう」


 孔融、


「君の武勇は確かにすば抜けているが、賊の勢いはなお盛んだ。軽々しく出撃してはならんぞ」


「老母は府君の厚恩にいたく感謝してそれがしを遣わされましたのに、囲みを解く事が出来ないようでは、それがし、母に合わせる顔がありませぬ。どうか、ここ一たび、死闘を演じさせていただきたい」


「待ちなさい。わしは劉玄徳どのが当世の英雄と聞いておる。もし彼に救援を要請できれば、この囲みも自ずから解けようというものだが……、ただ、使者として遣わす人員に適役がおらぬのよ」


「府君がご書状を認められたならば、それがしが急ぎ行って参りましょう」


 孔融は喜び、書状を太史慈に付託した。太史慈は鎧を着て馬に跨ると、腰には弓矢を帯び、手には鉄槍を持ち、十分な腹拵え、厳重なる武装を済ませると、城門の開かれたる所から、ただの一騎で飛び出して行った。


 堀の側では賊将が兵を率いて待ち受けていたが、太史慈は立て続けに数人を突き殺し、囲みを破って脱出した。


 管亥は城から出てきた者がいると分かると、間違いなく救援の要請に向かったものだと悟り、すぐさま自ら数百騎を引き連れて追撃に出、八方に囲みが敷かれた。


 太史慈が槍を突き立て、弓箭を八方へ射掛けると、弦のしなる音に応じて落馬せぬ者はなく、賊徒は敢えて追ってこようとはしなかった。


 囲みから脱出した太史慈は、当夜のうちに平原《へいげん》へと辿り着き、劉備との会見を果たした。拝礼を終えると、孔北海が攻囲を受けており、救援を求めにやって来たとの旨を具に告げ、書状を差し出した。


 劉備は書状を読み終えると、太史慈に訊ねた。


「足下は何者なのです」


「それがしは太史慈、東海の田舎者です。孔融との間に骨肉の親しさがあるわけでも、同郷の誼があるわけでもございませぬが、彼と意気投合し、憂いを共に分かち合いたいと考えておるのです。今、管亥《かんがい》が乱暴を働き、北海は囲みを受けて孤立無援であり、危険は旦夕に迫っております。聞けば、貴君の仁義はもとより顕著で、人の危急を救う事の出来る御仁であるとか。故にそれがしは敵の鋭鋒に立ち入り、囲みを突破して、こうして救援の要請に参った次第にございます」


 劉備は顔色を変えて、


「孔北海どのが、世に劉備ありとご存知であったとは」


 かくて劉備は関羽《かんう》・張飛《ちょうひ》とともに精鋭三千を率い、北海郡目指して進発したのである。


 管亥は援軍の到着を望見すると、自ら兵を率いて迎撃に出て来たが、劉備の兵が少ないと見て慢心していた。


 劉備・関羽・張飛・太史慈が馬に鞭を入れ陣頭へ躍り出すと、忿怒した管亥は直接向かってきた。


 迎え出ようと前へ出た太史慈よりも、関羽が更に早く反応しており、管亥と相対した。


 交錯する両馬を双方の喊声が包んだが、推量するに管亥はもとより関羽の敵ではなかった。数十合打ち合う間に青龍偃月刀が閃き、管亥をあな一刀両断、数瞬のちには、分かたれた半身が地に叩きつけられていた。


 太史慈と張飛の二騎はここで揃って出た。掲げられた二つの槍が賊の陣営に躍りかかり、劉備は兵を駆動させて余勢を掩殺してゆく。


 城の上から孔融が目にしたものは、太史慈と関羽、そして張飛が賊徒に追撃を掛け、さながら羊の群れに立ち入った虎の如く、縦横無尽に駆け回っている様であった。


 孔融がすぐ様城から打って出ると、双方から追い立てられた賊は総崩れとなり、投降を願い出る者は数えきれない程の数にのぼり、余勢は散り散りに逃げ去って行った。


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