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淡々三国演義  作者: ンバ
第五回 矯詔發され諸鎮曹公に応じ、関兵を破り三英呂布と戦う
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四、関西の華雄と孫堅四天王

 一方、洛陽の董卓は絶大な権力を得てからというもの、毎日飲めや歌えやの馬鹿騒ぎをしていたが、李儒から危急を告げる注進がもたらされると、慌てて諸将を集めて協議した。


 温侯・呂布が身を乗り出して進言する。


「義父上、案ずる事はございませぬ。関外の諸侯なぞ、この呂布から見れば塵芥のようなもの。私に師団をお預けくだされば、悉くやつらの首を斬り、都の門に懸けてご覧に入れます」


 董卓大いに喜んで、


「わしには奉先ほうせんがおる! 枕を高くして眠る事に何の憂いも──」


 言い終わらぬうち、呂布の背後に控えていた男が声高らかに進み出た。


「鶏を殺すのに牛刀を用いる必要がありますか? わざわざ温侯の手を煩わす程ではございませぬ。のこのこ集まってきた諸侯の首を斬ることは、私にとってはふくろの中の物を探すようなものです」


 董卓が見やれば、かの者は身長九尺、虎の体に狼の腰、豹の頭に猿のひじ──関西かんせいの人、華雄かゆうである。


 華雄の言をよみした董卓は、彼に驍騎ぎょうき校尉を加官して歩兵・騎兵五万を与えた。帯同の将は李粛りしゅく胡軫こしん趙岑ちょうしん。当夜のうちに敵を迎撃する為、※虎牢関ころうかんに打ち立ったのである。


(※汜水関と虎牢関は本来同一。三国演義では別々の場所にあるものとして扱っている)


 諸侯の一角、済北せいほくの相・鮑信ほうしんは、孫堅が先鋒に命じられた事を快く思っておらず、手柄を横取りせんと密かに弟の鮑忠ほうちゅうに三千の兵を預けて進発させていた。


 かくて小路を抜けて汜水関へと到達、意気揚々と戦に挑んだ鮑忠であったが、その時華雄が鉄騎五百を引き連れ、


「賊を逃がすな!!」


 という大音声とともに、関から飛ぶように押し寄せてきた。尋常ならざる勢いに鮑忠は慌てて反転しようとしたが、華雄は手ずから刀を振るってこれを斬り落とし、極めて多くの将校を生け捕りとした。


 華雄は鮑忠の首級を捷報代わりに相国府へ届けさせ、董卓は華雄に都督を加増した。


 さて一方の孫堅、こちらは四人の部将を引き連れて汜水関の目の前にまで迫っていた。


 四将とはすなわち──

 第一は鉄脊てっせき蛇矛だぼうを操る北平ほくへい土垠どぎん程普ていふ、字は徳謀とくぼう

 第二は鉄鞭てつべんの使い手、けい零陵(れいりょう)黄蓋こうがい、字は公覆こうふく

 第三は一口の大刀を携える遼西りょうせい令支れいし韓当かんとう、字は義公ぎこう

 第四は双刀使い、富春(ふしゅん)祖茂そも、字は大栄だいえい


 大将孫堅は白雪の如き銀の鎧を身に付け、赤い頭巾を被り、古錠刀こていとうを横に差し、花の如きたてがみの駿馬に跨っており、関を指して大罵する。


「悪に加わる匹夫ども! どうして早く降らぬ!」


 華雄の副将の胡軫こしんが五千を率いて迎撃に出ると、孫堅側は程普ていふが馬を飛ばし、矛を躍らせて直接これを相手取る。数合と打たずして程普はその咽喉いんこうを一突き、絶命した胡軫はどさりと馬から崩れ落ちた。


 大いに士気の上がった孫堅軍団は大将の指揮に従って関へと殺到したが、こちらの守りも硬い。逆落としの矢石が雨の如くに降り注ぐと、孫堅はそこでいったん退却、梁東へ兵を留めて袁紹へ捷報を献じた。

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