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淡々三国演義  作者: ンバ
第四回 漢帝廃され陳留皇と為り、董賊を謀りて孟徳刀を献ず
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二、少帝廃位

 九月朔日、とうとう廃立の儀式が行われる運びとなり、少帝は嘉徳殿かとくでんへと連れ出され、文武百官が一同に会した。董卓は抜剣して各人に言い放つ。


「天子は暗愚にして惰弱であり、天下の君としては不相応である。今から策文を読み上げるので、諸君は心して聞くように」


 かくて、李儒が策文を読み上げた。


孝霊こうれい皇帝は早くに臣民を棄てられ、海内の仰望に従って新帝が立てられたが、帝は生来軽佻(けいちょう)にして、その威儀恭しからず、喪中にありても身を慎まず、有徳の人物でない事はもはや明らかにして、大いなる天子の位を辱めようとしている。皇太后は国母として教誨を与える事もなく、国家の政を乱した。永楽《董》太后は突如としてお隠れになり、衆論は惑乱した。三綱の道とは天地の規範であり、闕失けっしつが生じてよいものであろうか? 陳留王の劉協りゅうきょうは聖なる徳を大いに備えられ、立ち振る舞いは模範的であり、喪中に在りては哀惜し、間違った事は仰らず、立派な名声と美しき評判が天下に聞こえ渡り、まさに大業を継承して萬世の王者となるに相応しき御方である。ここに皇帝を廃立して弘農こうのう王とし、皇太后の政所へ還さん。陳留王を奉じて皇帝位に即かせ、天と人の意思に応え、先帝の御遺志に報いん」


 李儒が策文を読み終えると、董卓は側近に命じて少帝を玉座から引き摺り下ろし、その璽綬じじゅを取り上げた上で北面して跪かせた。一方で何太后を呼びつけ、「新帝の詔勅」と称して満座の前で衣服を引き剥がしてしまった。泣き崩れる何太后と少帝の姿に、群臣らは哀憐の情を禁じ得なかった。


 その時、殿の下にて待機していた一人の大臣が、董卓の非道にとうとう怒りを露わにして叫んだ。


「おのれ、賊臣董卓! 天をも恐れぬその所業、貴様の血によって贖わせてくれる!!」


 かの者、たちまちに殿を駆け上って董卓に素手で直接殴りかかる。董卓が衛士に命じて召し捕らせてみれば、尚書しょうしょ丁管ていかんであった。


 董卓は即座に外へ引きずり出して斬罪に処すように命じたが、丁管は最期まで董卓を罵り続け、死に至ってもその激しき顔色が変わる事は無かった。


 後世の人がこの事件を歎いた詩にこうある。


 董賊密かに廃立の謀を抱き、

 漢家の宗社、丘墟にてられん。


 朝の臣宰満つるも皆囊括(じょうかつ)し、

 惟丁公有りて是丈夫ならん。


 董卓は陳留王に昇殿を請い、群臣への朝賀が行われた。廃立と即位の儀式が終わると、何太后と弘農こうのう王(廃位された少帝)、そして帝の妃のとう氏は永安えいあん宮に幽閉されてしまい、群臣の立ち入りも固く禁じられた。四月に即位したばかりの少帝は、憐れにも九月には廃立を被る事になってしまったのである。


 董卓が擁立した陳留王の劉協りゅうきょうは、字を伯和はくわといい、霊帝の中子に当たる。これがすなわち、献帝けんていである。この時わずか九歳、元号は「初平しょへい」と改められた。


 董卓は相国しょうこくとなり、入朝時の名乗りや拝趨の礼を除かれ、剣を佩いての登殿をも許される程の絶大な権限を手中にした。


 李儒は名望のある人物を抜擢して用いるように董卓に進言し、蔡邕さいようを賢才として推薦した。董卓はかくて蔡邕を徴したが、彼が応じなかったために、


「もし来なければ、貴様の一族郎党皆殺しだ」


 との通達を出した。このため、恐懼した蔡邕はただちに命に応じて出仕したのである。


 董卓は蔡邕と直接見えると彼をいたく気に入り、一ヶ月のうちに三度も昇進させて侍中を拝命させる程に信頼を置くようになった。


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