冒険者になるはずが、王立研究所でお抱えになりました
俺の名前は秋葉 カイト。しがないアラサーサラリーマンだった。
ある日テンプレ通りトラックに跳ねられ、テンプレ通り異世界に転移して、テンプレ通り冒険者になろうとした。
「よし、次! 転移者のスキル確認を行う。訓練場へ来い」
歴戦の戦士を思わせる筋骨隆々のギルドマスターに呼ばれ、俺はギルド裏手にある訓練場へと向かった。
この世界では、転移者は強力なチートスキルを持っていることが多く、国家の安全保障上、冒険者ギルドでの厳密なスキル確認が義務付けられているらしい。
しかも今日は運が悪いことに、この国の第一王子(金髪イケメン)が視察に来ていた。
「さあ、見せてもらおうか。異世界からの転移者よ。君の力がいかほどのものか」
王子の言葉に、周囲のベテラン冒険者やギルド職員たちがゴクリと息を呑む。
ハードルが上がりきっている。
どうしよう、俺のスキル正真正銘のゴミスキルだぞ。
「ええいままよ! それじゃあ……いきます! 【ゴミ召喚】!」
【ゴミ召喚】
一日に一回、地球の『ゴミ』をこの世界にランダム呼び出すことができるという、文字通りのポンコツスキルだ。
俺がスキルを発動した瞬間、目の前に巨大な魔法陣が展開された。
そして、ドォォォォン!! という凄まじい地響きとともに、もうもうと土煙が舞い上がった。
「な、なんだ!?」
「魔獣か!?」
ざわつく訓練場。
土煙が晴れた後に姿を現したのは、フロントガラスが割れ、見事に前方が凹んだ『2トン・トラック』だった。
ぐちゃぐちゃに壊れているとはいえ、その圧倒的な質量と異質な鉄の塊は、ファンタジー世界の住人を威圧するには十分すぎた。
「あー、その、これはですね……お、俺じゃなくて、私の故郷の鉄くずでして……」
(このトラック……俺を跳ねたトラックじゃないよな……)
言い訳をしようとした俺を遮り、第一王子が目を輝かせてトラックに歩み寄った。
「素晴らしい……!」
王子は凹んだボディーを撫で、壊れたヘッドライトを熱心に覗き込んでいる。
「これが、転移者たちがよく語っている『ジドウシャ』というものか……! 鉄の塊でありながら、馬を持たずに大地を駆けるというアーティファクト!」
いや、それもう多分動かない廃車なんですけど。
「面白い、実に面白そうなスキルだ! 異界の遺物を好きなだけ呼び出せるというのか?」
「い、いえ。一日一回、私がいた世界のゴミを召喚することしか出来ませんし、何が出てくるかも分かりません」
「構わん! 未知の構造、未知の素材……これは我が国の技術を飛躍的に進歩させる可能性を秘めている」
王子はバッと振り返り、背後に控えていた初老の執事に命じた。
「クラウス! 直ちに異界の召喚物を研究するための専門機関を手配せよ! 予算は引っ張ってくる!」
「はっ。畏まりました、殿下」
そして、王子は俺に向かって満面の笑みを向けた。
「というわけで、君。冒険者などという危険な真似はやめたまえ。今日から君は、その研究所の特別職員だ。待遇は保証しよう」
「……え?」
こうして俺は、憧れの冒険者になる前に研究所職員(公務員?)としての安定した地位を手に入れてしまったのだった。
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次話19:00に公開予定。




