2、ライバルの公爵令嬢は、男?
鏡に映るのは、こげ茶の髪と瞳を持つ、ほぼモブみたいなヒロイン。
(いや、モブではないか……)
基礎はヒロインだから普通に可愛い。
ただし――この状況になるって知ってたら、ピンクブロンド一択だった。
気を取り直して、教室へと移動する。
奴が『親親設計』と評したオートナビのおかげで、すれ違う生徒たちのデータ(名前・好感度)が丸見えなのは便利。
ただ、二つの記憶が頭の中でシャッフルされている感覚は、お世辞にも気持ち良いとは言えない。
(……うう、ぐるぐるする。授業なんて聞いてる余裕ないんだけど……)
そんな私の初登校は、誰にも声を掛けられないまま。
淡々と午前の授業が終わる。
友人ゼロ。切ない。
ため息を吐きながら、お昼休みを告げるチャイムとともに教室のドアへと手を伸ばした――その時。
――美少女と出逢った。
(うっわぁ……シャルロッテ様だ……)
金髪碧眼の美少女。これぞ、ゲームって感じだ。
さっきまで教室にいなかったから、何か事情があったのだろう。
なにせ彼女は、ヒロインのライバルで王太子の婚約者。
――公爵令嬢のシャルロッテ様。
ほんと美しい……と見つめて、見つめあって。
――え?
「サイラス??」
思わず呟く。
シャルロッテ様の情報が表示されるはずの空間に浮かんだ文字は、
【サイラス/男】
いやいや待って?
何言ってんの?男?男って?
百歩譲って、この美少女がシャルロッテ嬢じゃなかったとしても、男はないでしょう?
こんな美少女が男なんて――
あぁ~そうか。
みっちり授業受けたから疲れたんだ。目の疲れで文字がぼやけて見えたんだな。
そう思って目を瞑り、もう一度開く。
バチリと合った視線。
絶対零度の眼差し。
射すようなそれに、動けなくる。
白いほっそりとした手が伸びてきた。
随分と強い力で、手首を引っ張られた。
「お話があります。エレノア様」
めったに表情を変えないシャルロッテ様が、
それはそれは美しい笑みを浮かべた。




