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英雄記  作者: つー
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2/2

スタンピード

村に入り宿をとった俺はまずはこの村の状態を確かめることにした。

明らかにおかしい森の様子。

村も常に門番が見張っている。

いや門番が見張っているのは普通かもしれないがおかしいのはこの村に入る前に会った巡回してたエルフたちだ。警戒が強すぎる。

なにかに襲撃でもされたのか?


「で、どうなんですか?」


「ああ、お前の予想は当たっている。」


意外にも村長への許可は軽い感じでもらえたため直接聞いてみることにした。


「数ヶ月前、この村の付近にダンジョンができた。」


「魔力の満ちているこの地帯では不思議じゃなくないか?」


「ああ、普段ならな。しかし原因はわからないがあのダンジョンは異常だった。異常に魔力を空気中、そして地中から吸い出しどんどん肥大化している。」


「俺は見なかったが?」


「ポール王国との間のところにあるんだ。だからポール王国からの増援も受け付けられない。」


「ああ、なるほど。それじゃあ俺はポール王国にはとりあえず行けないってことだな。」


「ああ、すまない。」


「いや、いい。」


大和は基本的に他国との交流をしない。

それはこのエルフの村も同じでおそらくこのエルフたちは大和との連絡網を持っていない。

だから大和からの支援も基本的になし考えた方が良さそうだな。


「それと話の続きなんだが村の木々にある爪痕について。」


「ああ、そうそう。あれは何なんだ?」


「あれはダンジョンから溢れ出た魔物と戦った跡だ。」


「!溢れ出る?そんなことあるのか?」


「何百年も前、一度だけあったそうだ。言い伝えでは一度溢れ出た魔物は段々と数を増やしていき、やがて村、そして国をも滅ぼすと。昔、【スタンピード】と呼ばれていたそうだ。」


「…。」


ポール王国に向かう上でその道が塞がれたのならば仕方ない。おそらく戦うしかないだろう。

しかし国を滅ぼすレベルならば俺1人では無理だ。

出て行った手前絶対にやりたくないが…。


「…俺が、大和に行って助けを呼ぼうか?」


これが最善の選択だろう。

非常に悔しいが俺個人の事情で国を滅ぼすわけにはいかない。


「いや、残念ながらそれは不可能だ。」


「何故?」


「ここの森は今、ポール王国からも大和からも支援を受け付けられない。ポール王国は物理的にだが大和は違う。ここには大聖霊様が封印されているからだ。」


「それと大和に何の関係が…いや、そうか。九条家が灸尾と契約しているからだな。」


「その通りだ。」


灸尾と霜月狼は世界に2体しかいない大聖霊だ。

言い伝えではどちらもある1人の天才が生み出した聖霊だと言われている。

この二体は仲が良くないとされており灸尾が契約時に霜月狼と関わるのは灸尾の許可が出た時のみだと条件をつけたそうだ。

そんなこと言ってないで助けて欲しい。


「霜月狼と契約…は、できないよな。」


「ああ。試練を突破できたエルフなど歴代で1人もいない。」


試練とは、大聖霊と契約するために存在する前段階だ。

九条家の灸尾は特殊な例…というか2つしか例はないのだが灸尾は九条家という代々受け継がれる血と契約しているため本人との相性が良ければ基本的に九条家の人間は契約できる。

最も、俺はできなかったが。


「なるほどわかった。俺もできる限り協力しよう。」


まずはスタンピードがどれだけの期間ごとに来るのかだが…。


「村長!ダンジョンから魔物が出てきました!第3波がきます!」


「!」


「!もうか…!すまないが倒すのを手伝って欲しい。ええと…」


「九条凪だ。どこに行けばいい?」


「外にいるエルフと合流してくれ。」


「了解。」


俺は刀を持って駆け出した。


◇◆◇


外に出て、俺は魔物たちの駆除にあたっていたが…それはもう地獄だった。

圧倒的な数の多さでゴリ押してくる。

俺達も負けじと応戦はしているがここまでの数がまだ出続けるなら流石に負ける。


「死傷者は後ろに下がらせて治療を受けろ!盾を持った奴らは前へ!非戦闘員は弓の矢を渡して援助してくれ!」


五感が鋭いエルフにはこの雑音の中でも俺の声はしっかりと聞こえているらしい。

指示通りに動いてくれる。

あとは問題なのは…やはり後ろに控えているあのデカブツだろう。

オークの進化系なのだろうか。

オークの1.5倍ほどの身体を持ち、右手に棍棒を持っている。


「!」


するとオークがゆっくりと動き出し、こちらに向かってくる。

コイツを倒したらスタンピードは止まるんだろうか。


「いいぜこいよ。」


俺は刀を構えて前に集中する。


俺とオークは、同時に駆け出した。


(ガタイの割に速いじゃねーかっ)


俺は迫り来るオークの巨体の足と足の間に入り、足首の部分を抉り切る。


「グオオオオッ」


(次に足の腱も…!)


ゾワッ


右側から棍棒が振り下ろされていることに気づく。

俺は自分に迫る棍棒をいなし、カウンターを入れ…ようとしたが、


「ガッ…!」


俺は気付けば吹き飛ばされて木にめり込んでいた。


(くそッ!いなしたと思ったが馬鹿力に押し込まれたか!)


めり込んだ身体を無理矢理起こし、刀を構える。


「フウッフウッ」


肋は何本か逝ってる感じがするな。

問題は腕だな。

左腕が変な折れ方したせいで痙攣が止まらない。

筋肉に刺さったのか?

ただ、オークも手負いだ。

足首をやったからもう最初のような突進はできないはず…。


ただあの馬鹿力の大振りをもう一度受けたら流石にまずいな。

威力が高すぎる。


「グォオォッ」


オークは俺が突っ込んでくるのを待っているのか。

手負いだからな。


「フゥーッいくぞ。」


覚悟を決め、駆け出した。


全身を神経を研ぎ澄ませて全力で回避しながら所々で攻撃を入れ込む。


「オオオッ!」


この大振りは下からくるっ!


「フンッ!」


高々と跳び、そのまま斬撃を入れる。


少しずつ癖がわかってきたな。

これなら勝機もある。


そう思い、距離をとった。


すると、オークが今までにない動きをし始めた。


「!おいっ、待て!」


オークが突然エルフの方に駆け出した。


「グオオオオッ!」


「うわっ!やめっ!」


エルフが1人、捕まった。


「おい!射撃しろ!」


「い、いやだ!誰かっ!」


必死に叫んでいる。

まさか、おい、やめろ、


左手が徐々にオークの口に近づいていく。

エルフが何か叫んでいる。

何を言っているんだ。

いや、何を考えてるんだ。

エルフを助けなければ。

ああ、なんだか遅く感じる。

いろいろと


「誰かっ、たっ助けて!いやだ、やめっ」


食べられそうなエルフと、目が合った。




グチャっといやな音が鳴った。




「嘘だろ…。」


同時に切った部分や弓に射抜かれた部位が再生していく。


それからはもうめちゃくちゃだ。

俺もエルフも果敢に挑んだがオーク一体にたくさんの犠牲者を払った。

最終的におそらく失血でオークは倒れてくれた。

スタンピードの第3波は乗り越えた。

いや、乗り越えたというにはあまりに多くのエルフが死んだ。

生き残った二十名ほどのエルフはもう誰も声を上げない。



俺はこの旅に出る時、苦しいことも悲しいことも覚悟していた。

しかし、少し想定が甘かったかもしれない。


俺は生まれて、初めて絶望というものを実感した。

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