プリンセス久美の誕生
久美もさすがに正体を隠しきれないことになる。独裁者との立ち回りは、実況中継されていたらしい。
「あの。ただ、悪乗りしただけ。調査員は、いつも地味な仕事なの」
久美に綾香が悟ったように言う。
「月乃から、詳しく説明してもらったし。久美のやりかたはそれでいいか」
確かに、久美の長い話を解釈して要約するのはいつも月乃。
「久美はさあ。あれが普通なの。だから、特別に騒ぐことじゃない、と」
「それよりkizunaタウンよ。面白かったね」
それなら久美はいくらでも話せる。
いつものテラスで同級生と会話するひととき。そこへジャンヌが声をかける。わざわざ、なんだ、と久美は怪訝そうな顔で、一応あいさつする。
「直接に渡したいから来たけれど。やはりここか」
ジャンヌは予想していたように言う。月乃が、訪問を知っているように答える。
「みんなの前で、話してくれないかしら。久美は秘密主義で話し下手だから」
ジャンヌも杏樹も、まわりから攻めて、久美のことを把握しようとしているらしい。これでは誤魔化せない久美。
「あの。仕事ですか」
「それ以上かも。マザーコンピューターが発行したネームプレートよ」
vwxwとは違う読み取りコードが付くらしい。
「わかった。それをつければ良いんだね。仕事じゃないと」
久美は渡された新しい名札を見る。
「princess久美。タウン名と番号がないけれど」
「マザーコンピューターしか詳細は知らないみたい。アクセスする権限が与えられているらしいから。詳しいことはマザーコンピューターに聞いてね」
久美は迷わない、テーブルに置かれた端末でアクセスする。princess久美、それで顔と指紋認証がなされている。
「あなたの名前を確認。言語は音声で良いですか」
最後に音声認識でボディーランゲージも考慮しているようだ。
「princess久美。今日取得」
「了解」
何を確認したいか膨大な項目が並ぶが、検索で「卵子提供者」を打ち込む。これも膨大だ。 久美が夢中になると周りをみない。
「母親だよね。卵子提供者って」
「知りたいような。怖いような」
みんなも興味はあるが、何故、との疑問もある。
「名前と番号を覚えている人もいるらしい。それで、母親と名乗らないのは事情もあると思う」
情が差別や格差を生むと考えるのがタウンの常識だ。亜由美はなだめる。
「よく見たらさ。なにか雰囲気で分かるらしいよ。それで良いんじゃない」
たまには顔が似ているとかも母子にはある。情も隠し切れないこと。
久美はすぐに調べたいが、さすがにみんなの前で控える。あんがい状況を理解はしている。
ジャンヌは近くのテーブル席で、このやり取りを眺める。
(先駆者か。久美はそれに気づいてないのかな)
立ち上がる久美を頼もしくみつめた。
久美は部屋で、もう一度マザーコンピューターへアクセスする。
「なるほど。それで。杏樹だな」
awt杏樹の情報を開示する。
「やはりヒューマノイド。えっ。人間がいた」
模擬惑星移住計画のことだった。火星で試験的に実行される。人間もいて、全天候性ヒューマノイドの性能も試される。それは、より人間に近い。
「運動能力が高い。そして」
唖然とする久美。
「女性なんだ」
そのままの機能がすべて、杏樹に備わっていた。
princess久美といわれても、やることは大きく変わらない。
「杏樹と対等に戦えるよね」
大自然で自由に行動できるらしいが、先ずは身近から広げていくと思い知らされている。だから、最初に出会った、稲作計画エリアはタウンエリアだ、と今も思う久美。
「今度こそ決着をつけよう。来るだろうか」
杏樹が行動をどこかで監視していると気づいている。第4環状線の雑草が切り開かれた場所へ行くことにする。
カタバミの広場へ着くと、久美は懐かしく感じる。あのときは、ただタウンの外へ行きたい思いだけだった。
「自然界で生きるって大変だよね。でもそれをしないと、人間に未来はないんだから」
呟き空を見上げる。流れる雲と太陽。小川のせせらぎがここからでも聞こえる。
「こないのかな。忙しいんだ」
杏樹は全世界を監視しているらしい。要注意な生物へ特にちょっかいを出す。
「もうこないの。杏樹」
大きな声で、広がる雑草の茂みへ叫ぶ。
「うるさいな。昼寝してるのに」
ススキの間から杏樹の声がすると、立ち上がる。
「ほほう。昼寝だと。杏樹は暇しているね」
「久美こそ。何をたそがれているの」
ひと跳びで近くへ来る。
「これから、忙しくなるから、たまにはね」
「だから。一人でやろうと、未だ思っているの」
「別に。なんだっけ。ここへ来た理由」
和かすぎて忘れた久美。二人でカタバミに座り、しばらく自然の音を聴く。
「そうだ。アホタレ。全滅したよね」
「また似たようなことは起こる」
「治療しなくてよかったのかなー」
「それが戦争なの。生き残ってたら、仕返しにくるでしょ」
「それでもねー」
食べたり、何かに利用もしないで、生命を奪うのは間違っていると思う久美。
杏樹も同じ意見ではあるが、全知全能でも完全や完璧でもないのが人間。
「たまには、放置するのが相手のためよ」
「それにしては、ちょっかい出しすぎたでしょ」
久美は立ち上がる。
「跳ねっ返り娘だからよ」
杏樹も立ち上がる。
「跳ねっ返りじゃないもん」
「どこが。まだ分かってないよね」
「そうだ。決着をつけに来たんだ」
睨みあう二人。魔進は雑木林を前に脚を畳んで座るような恰好。その前でハニャーが足を伸ばして日向ぼっこ。
「そろそろ決めようか。princessでは私が先輩。お姉さんとお呼び」
「杏樹の弱点は知っているから」
今度は杏樹が、言葉も終わらない間に跳ぶと久美の背後へ回る。
「弱点か。一緒でしょ」
同じ考えらしい。
杏樹は久美のブラウスを引き開き、胸の膨らみを、ぎゅっ、と掴む。
「ばれたか。くっ」
久美は痛さを我慢して、後ろへ倒れる。
足腰の弱い杏樹が倒れる。
反転する久美。
「当たりみたいね。弱いんだ」
杏樹のレオタードへ直接指を潜り込ませる。
大きなふくらみを取り出す。人間のように柔らかい。
久美は先端へ思い切り吸いつく。
「ぅわっ」
杏樹が驚くが、さわさわ、と指を久美の足へ持っていく。
「ここは、どうだ。それっそれっ」
背後から杏樹の指が久美の太腿の間に潜り込む。
「そこはっ。やるのね」
久美も杏樹のレオタードの食い込みから指を指し入れる。太腿も柔らかく人間のようだ。
「あっ。駄目っ直接は」
「降参してね。お姉さま」
「もっと。尊敬を。込めな、さい。よ」
杏樹が久美のスカートを捲り上げて、正面から股間へ指を這わす。
何をしているのでしょうか。
ハニャーと魔進の間に雑木林から飛び出すような百合の茎。白い花が咲いて、良い匂いを風が漂わせる。惑星メタフォーに地球の常識は通用しない。




