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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第四章 処罰(ショバツ)
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第四章 処罰 ♯01

第四章 処罰 ♯01


「これでようやく20人目・・・いったい何時までかかるって言うのやら」

小紫は若い隊員の退出を見届けると大きく伸びをした。

そこに入れ替わるように榊原が入ってくる。

「お疲れ小紫監査官」

「入れ替わりとはいえノックぐらいしたらどうです?ここは尋問室ですよ」

しかし榊原は特に気にすることもなく、へらへらしながらメモを捲りながら何かを確認する。

「こちらの17人と加えて37人・・・残り三分の一程度にはなりましたね」

「でも今までは整備員や工員ばかり。今からは隊員達が相手になりますから、体力が持つかどうか」

小紫は肩を回してリラックスを取る。

「まあ元々こういった仕事が我々の本来の仕事というべきものですからね。疑いを持って、恨みを買う」

榊原はせせら笑いながら何やらメモを取っている。

「・・・そういえば、前々から気になっていたのですがそのメモには何を書かれているのですか?

仕事の合間に時より何かを書き込んでいますがさほどメモすることなどないでしょうに」

小紫は榊原の持つヨレヨレのメモ帳を怪訝な顔をして見た。

「これですか?そんなに気になるなら・・・ほれどうぞ」

榊原は案外あっけなくそのメモ帳を開いて小紫の目の前にずいっと向けた。

「・・・なんですこれ?数字と・・・アルファベッド?なにやらデタラメに書いているようにしか見えませんが、何の意味が」

「いや、実は私ね。ストレスをためやすい性格でどうにも困ったもんで。で、ある日医者に聞いたんですよ、何か落ち着く方法はありませんかって?するとこういうんです

”貴方が日々、行動するうえで最も落ち着いて取り組めるものは何ですか?”って」

榊原はひらひらとメモ帳を振る。

「ああ、”物を書くこと”ですか。物の本で読んだことあります、何と言いましたかね・・・」

「コーピング、対処行動と言います。まあ私のような行動はまれだと思うのですがね」

「へえ・・・」

小紫は意外だと思った。

これまで榊原とは2~3年仕事を共にすることがあるがとてもストレスと溜めるような人間とは思えない。

そうして定期訓練行動の終了時刻になるころ基地に放送がかかる。

”パイロット及び訓練生、予備性に連絡する。夕食終了後、1800に速やかに格納庫へ集合するように”

「何かしら?珍しいわね、まさかまたこの間のような・・・」

「ハハ、さすがに司令官の号令でそれはないでしょう。まあ、つい先ほど追加で到着した定期便関係ですね」

榊原はそういうとまた何かメモに書き込んで部屋を出ようとドアを開いた矢先、思い出したかのように小紫に振り替える。

「そうだ忘れてた。例の先生、防衛局の鷹取さんから無線が来てましたよ、では」

「ええっ、それ早く言いなさいよっ!」

小紫は血相をかいて部屋を飛び出していった。


夕食後、地下格納庫。

例のカラスのカゲロウ機を隊員たちが取り囲み、如月が機体の上で仁王立ちをしていた。

何人かは整備員や工員の姿も見え、少し控えたところにレオンの姿も見える。

「おいおい教官殿、あんまり足跡をつけないでくれよ。俺の機体は女性と同じでデリケートなんだ」

レオンは仁王立ちする如月教官が気になって仕方がないようだ。

「しかたがないだろう、ここから撮影しないと詳細を伝えることができん」

如月の手にはビデオカメラが収められていた。

周りを見渡し、いつもの面子がそろったのを確認すると如月はマイクがないにもかかわらず格納庫に響くほどのボリュームで

皆に号令をかける。

「よし、全員そろったな。では各モニターに注目せよ。全員知っての通り、このゼロ基地に来たテスト機カゲロウは新型だ。

では何が新しいのか?その答えはここだ」

如月が渦中の部分をモニターに出す。

「・・・複座か?いったい何故」

神谷がモニターを見て疑問を抱く。

なぜならカゲロウはパイロットの補佐をすべて機体に搭載したAIカゲロウシステムとリンクさせそれを補う。

しかもカゲロウはこれまでの戦闘機と比べ一回りも二回りも小さく両翼を折り畳めば8トントラックで運搬できるぐらい小さい。

そこに複座など余計な”ウエイト”をつけるとせっかくの小柄な利便性が失われかねない。

「みればわかる通り新型は複座搭載わかりやすく言えば二人乗りだ。

他にも出力が上がったり、各性能の向上が図られているらしいが問題はこの複座の意味だ」

如月は一通り移し終えると機体から飛び降りた。

「なんとなくわかったかも・・・複座を増設した意味」

「もしかしてこれからは二人で操縦するとか?」

綾瀬のつぶやきを春野がここぞとばかりに拾い上げる。

「まあ当たらずしも遠からず・・・というところか?ここは綾瀬氏の考えを聞いてみようじゃないか」

いつの間にか傍に歩み寄っていたレオンが綾瀬に殴られたにも関わらず何ら気にすることもなく綾瀬に尋ねる。

「ゲッいつの間に・・・」

「やっぽーレオーン」

三宅や柊がそれぞれわかりやすいような反応を見せた。

「これ、後ろにホープや砲手担当を乗せる気ね。そしてやることは一つ・・・地上掃討担当」

「地上掃討?!どういうことだよ!」

三宅が素っ頓狂な声を上げた。

「さすが並みいる戦場を潜り抜けた副隊長殿は違うな。そうだ、これは地上への攻撃のための砲座みたいなもんだ」

レオンがさすがと言わんばかりの笑顔を見せる。

「そこ、うるさいぞ。ああ、こその白鷺パイロットが言ったのが聞こえたものもいるだろうがまあその通りだ。

この複座は地上への脅威の対処の為に増設されたものだ」

その場にいた面々が騒めき出し、その声は次第に大きくなっていった。

すると事態の収拾を収めるため、隊長の神谷が大きく返事をして挙手した。

「如月教官、質問がございます」

「いいぞ隊長、話してみろ」

「これまでの脅威は全て空からによるものばかりでした。するとこの新型機から察するに、これからは地上からの

脅威も現れるということに成るのでしょうか?」

神谷の質問に全員が静まり返る。

これまでゼロ基地並びに白鷺に地上からの脅威が迫るということは前例がなかった。

だがこの新型カゲロウ機から察するに今後地上の脅威に対応するという意図があるのは神谷には明白だった。

「・・・現時点では私から伝えられるのはこれだけだ。”備えあれば患いなし”、全員に簡単だが資料データを渡しておく。

明日の昼には消えるから全員今日のうちに目を通しておけよ。必要なら今から新型機を見学しておけ、では解散」

如月はそういうと足早に去っていく。

残された者の顔は実に暗かった。

何故なら、今後は空だけでなく陸からも脅威が迫る危険性が高いからだ。

「まあ心配無用だ。教官も言ったように、これは”備え”によるものだ」

「どうだか・・・大方、もうそんな情報を掴んでいるんじゃないか?」

三宅はイヤミったらしくレオンに愚痴を垂れる。

「まあそう腐るな、当面はこの一機で試験的に運用する。で、だ。その複座に指名するのは実は俺がデータを参考に指名することになっているんだが・・・」

「まさか・・・」

神谷が何かを察してまずそうな顔をする。

「綾瀬副隊長、君にお願いしたい」

「何あんた、殴られたりないっての?」

綾瀬は目も合わせずに捨て吐いた。

「俺は気の強い女が好きなんだ・・・てのは冗談。ただデータに基づき考慮し、司令官と相談した結果だ。下心はないさ」

レオンはワザとらしく綾瀬の前で紳士のように振舞って見せる。

「なら私は別に春野を推薦するわ。彼女の方がデータ上は射撃能力は上よ」

「え、え、え、え、えええええええええぇぇぇぇぇ!?私ですか?!」

春野はいきなりの指名に慌てふためいたが、レオンは少し考えたのち春野を見て軽くうなずいた。

「・・・まあいいだろう。実戦経験の乏しさは俺がフォローするとして、当面は動かない的にめがけて射的ゴッコするだけだ」

「そ、そんなぁ。今もう決めちゃうんですか?!」

春野は信じられないといった様子で周りに助けを乞うが皆厄介ごとは嫌なのか涼しい顔するだけだった。


「ええぇええええ・・・そんなぁ」

「まあお嬢ちゃんに俺の相手が務まるとは思えんが、やさしくエスコートしてやるからな」

レオンはそういうとその金髪を掻き揚げて春野に笑顔を見せるのだった。

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