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播磨熱風隊―Passion, Innocence, and the Sky War―  作者: かがみひこ
第三章 雛鳥(ホープ)
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第三章 雛鳥 ♯04

荒れ狂う熱風の吹き荒れる中、撃墜された定期便の乗組員救助並びに物資回収活動に追われるゼロ基地関係者一同。

「いいか、作業はグループごとにやれ。拾った物資をちょろまかすなよ、帰りには男女関係なくボディチェックするからな!」

如月が滝のような汗を流しながら声を張り上げる。

夕暮れとはいえ未だ摂氏46度、この地獄の中の肉体労働は強烈を極めエアコンスーツだけでは足りず耐熱日傘、

災害時の補水ボトルの携帯して隊員は作業に当たる。

その大人子供関係なく苦渋に顔をゆがませて作業をする中、それを涼しい顔して眺める褐色の肌の少年。

「これだから貧乏人は、これが意味のない行為だとわかっていても何の疑問もわかず体を動かすんだからな。

情けのかけようもない」

カラスのカゲロウ機がウインチにかけられ地下格納庫に搬入される作業の中、当の褐色の少年は機体の真ん中で

胡坐をかき、水を飲んでいる。

「なんだあいつっ!手が空いてんなら手伝えっつーの!!てかなんであんな涼しい顔してるんだ、あいつも俺たち同様

売られた人間だろう?」

作業しながら、神谷に愚痴を漏らす三宅。

だが神谷からは意外な言葉が口から出た。

「次世代カゲロウ機のテストパイロットだってよ。あいつは俺らとは待遇も境遇も違う、仲間だと思うな」

「テストパイロット・・・」

そこに綾瀬や柊たちが作業をひと段落させ、合流してきた。

その中には整備長境とひよりも混じっている。

「隊長聞いた?例のテストパイロットのこと」

綾瀬も事情を聴いたらしく隊長に確認を問う。

「ああ、如月教官と司令官に触りだけな。

米国ハーフの白鷺特別区のエリート生、少年少女の操る戦闘機カゲロウの実地テストのため訪れた元空軍・現開発部長の御曹司。レオン・ヴァルクマン十七歳だとさ」

「わざわざパイロットの年齢を合わせてテストなんざ中々気が利くじゃないか」

境がレオンを細い眼で眺める。

「でも、素敵だわぁ・・・褐色の肌に金髪。ここの芋とは大違い」

「ケッよく言うぜ、散々俺にあれやこれやーーー」

三宅が卑しい笑みを浮かべながら柊に囁くと柊から凄まじい肘鉄が入った。

「ってーーーーーー!!なにすんだおらぁ!」

「黙って仕事しなよ。秒殺絶頂野郎」

柊は目を合わせることもなく拾った物資を台車に置き始めた。

「あ、み、見てください・・・あの人こっちに向かってきまよっどうしましょうかっ!」

こちらに気付くやおもむろに立ち上がってこちらに向かってくるレオンを見て

春野が挙動不審になりながら綾瀬の後ろに隠れた。

「こら、全く・・・何用かしらね彼」

レオンは熱風隊一同が鋭い目つきで睨みつけても何ら臆することなく悠然と歩いて近づいてきた。

「君らが熱風隊か?隊長は?」

「俺だ、播磨地区前哨基地・第零区。通称ゼロ基地の熱風隊、隊長神谷だ。お前は誰だ?」

神谷は相手に負けずと胸を張っては気のある声で答えた。

「ああ、何も聞いてない?ま、当然か。俺はレオン・ヴァルクマン、白鷺特別区から来たテストパイロットだ。

この隊のことは聞いてる、暫くこの隊厄介になるのでそのつもりで。ああ、そう、それといきなり”今日から俺が隊長だ”

とか言うつもりはないから安心してくれ神谷隊長」

何かと鼻につくような物の言い方に一同の空気は一気に重くなる。

「・・・俺は足を引っ張るような真似をしないから俺の足も引っ張らないでくれよ?じゃ」

それだけ言うとレオンは踵を返して帰りだしたので神谷は思わず唖然とした。

「・・・ちょ、ちょっとなんだよそれ?!仮にも一緒に戦場に出るんだろ、そんなんでいいと思ってるのか?!」

神谷が叱責するとレオンは明らかにイラついた顔で神谷をにらみ返す。

「”いいと思っている”から言っているんだよ。わかるだろそれぐらい、そもそも俺は売られてここに来たわけじゃない。

テストが終われば俺は白鷺の親父のところに戻るんだ。つまり根本的に関係ないんだよ、わかるだろ?」

「なっ!?」

神谷が思わず怒りで拳を握りしめるがそれを綾瀬が制した。

「ああそうだ。そういえば綾瀬って奴がいるだろう、副隊長の?」

レオンが綾瀬の姿を見てあえて思い出したかのように尋ねる。

「ええ、わたし。何か用?下手に関わり合い持たないんじゃないの」

綾瀬は敵意をむき出しにしてレオンに言い放つ。

「まあそう言うな。敵対するんじゃない、”事情はくみ取ろう”というだけの話だ。それより、聞いた。

君の活躍は白鷺の防衛本部でも有名だ、しかもこんなところにいるには勿体ないぐらいきれいな顔だ。

どうだ?俺の仕事が終わったら一緒に白鷺に来ないか?俺が特別に上に掛け合ってみてもーーー」

ゴスンッ!

綾瀬のストレートがレオンの顎に直撃した。

レオンは不意を突かれ大の字になって大地に引っ張られ気を失った。

「そうね、考えとくわ、ナンパ野郎」

一同はそれを見て呆然として、やがて境が高笑いした。

「う、痛そう・・・」

「俺あんなの喰らってたのかよ・・・」

「さすが健康診断で握力50越え・・・」

口々にドン引きの声を上げる中、神谷が呆れて綾瀬に声をかける。

「いや、俺を止めるのはいいんだけど・・・自分がやっちゃダメだろ」

「フンっ、いい気味。私イキったやつ嫌いなの」

やがて騒ぎを聞きつけた司令官以下管理職の人間が状況を見て絶句するのであった。


翌日、早朝よりブリーフィングルームへ全隊員を招集しての全体ミーティングが執り行われた。

まだ年端のいかない少年少女からヨボヨボにやつれた整備班の老人まで制服や作業着であることを除けば

さしずめ田舎の寄り合いの様でもあった。

「諸君らに集まってもらったのは他でもない、それはーーー」

「綾瀬のストレートについての」

「三宅ぇ!」

海堂の話を遮り、三宅のボケに壮絶な怒号で答える綾乃。

三宅は一気にシュンと静まり周りの取り巻きが口々にせせら笑った。

「真面目な話だ、私語は慎め。いいか先の一軒、例の定期便・オスプレイが撃墜されたことについてだ。

Su-57の目的は明らかに基地に輸送中のカゲロウ新型機だった。これがどういうことかわかるか?」

海堂はルームのモニターに次々とSu-57の残骸やコンテナの残骸を映し出す。

問題はオスプレイの残骸である。

そこには例のカゲロウ機のオプション品や整備関係の部品のみで明らかに補給物資の類はなかったのである。

「実は補給品に関しては既に追加で輸送される手筈になっていたのだが、

本来情報ではこの”撃墜機”に搭載されるものだった、つまりだ」

「これはヤバい・・・」

海堂の険しい顔つきから事態を察した神谷がつぶやく。

「ヤバいって何が?」

柊があまり事態を飲み込めず間抜けな問いかけをし、仕方ないといった様子で綾瀬が答えた。

「つまり身内しか知らないような情報を敵が知っていた・・・ということはつまりは」

「スパイって奴ですね!!」

綾瀬の言葉に春野が興奮気味に答える。

「そこっ!私語をするなと言っておろうが!いいか、情報漏洩があったのは周知の事実だ。

ゆえに本日より白鷺シェルター防衛本部・そして本ゼロ基地各隊員に聞き取り調査・面談を行う。

それに伴い本来今日帰る予定であった小紫監査官、榊原監査官に滞在期間を延ばしていただき調査に当たってもらうので

全員感謝するように!」

「疑いのまなざしを向ける人間に感謝しろって・・・」

柊は呆れたように笑ってどこから手に入れたのか淡い色のマニュキュアを塗り始めた。

「いい色ね、境から買ったの?」

「さすが副隊長、境さんてなんでも手に入れてきますね。あの人っていったい何なんですか?」

「さぁ?私も知らないわ、私が来た時には既にくたびれた顔でここにいたもの。司令官よりも長いらしいわよあの人」

「え、嘘でしょ・・・?」

綾瀬から出た台詞に思わず目を丸くする柊や春野。

三宅にも知らない事実だったのか神谷に小声で確認を取っていた。

「聞き取りスケジュールについては追って伝える。後だ、皆もすでに分かっていると思うがゼロ基地に件の一軒により

新型カゲロウ機とそれに伴う専属テストパイロットが昨日より配属されている。

名前はレオン・ヴァルクマン、彼の所属は白鷺だ、監査官同様あまり”失礼の”無いようにな」

意味ありげな”失礼の”の口調の高さに隊員一同は思わず爆笑して綾瀬を見た。

海堂の後ろの方で控えていた鼻にばんそうこうを張ったレオンも流石に苦笑いをして両手を降参させた。

綾瀬は特別反応することもなく、両手を組んで我関せずといった感じで目を閉じていた。


「やれやれ、心得とくか。ここでは俺も”ホープ”らしい」


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