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第三章 雛鳥 ♯03

「嘘でしょ?!本当にやるの?!」

「やるっきゃないでしょうに。こっちの腕じゃ悔しいけどあのスゴイ動きの奴相手にドッグファイトは絶対無理」

春野が懐疑的に柊機に尋ねるが柊は聞く耳も持つ様子では無かった。

「カゲロウモード発動すれば・・・座学では二機以上であれば効果がより期待できるって言ってたし」

「確かに、現在の環境条件でもマッチはしてるけど・・・せめて隊長に」

「駄目よ!あいつら臆病だから絶対に到着するまで余計なことするなっていう筈」

”聞こえてるぞ柊機!無断行動は慎め”

「なっ?!」

柊機は春野と双方向通信をしていたが、管制室からは常にモニタリングされているため筒抜けであった。

”いいだろう、やらせてやれ。柊、出来るんだな?!”

だが、それを聞いていた海堂は意に反して柊の提案に賛同した。

”司令官、よろしいので?”

「いいじゃん、司令官解ってる~。春野、やるわよ。司令官のお墨付きよ」

「ええぇええ!?わ、私出来るかなぁ、シミュレーションでしかやった事ないのに」

「いいの、誰でもみんな最初は”初めて”よ」

そういうと柊機は基地上空から急速旋回し、Su—57に向かって速度を上げ、春野も続く。

「いいホープ達、貴方達は私達よりも後方に、そして上に上にと上がりなさい。上昇するのよ。

大丈夫、カゲロウリンクが手伝ってくれるわ!」

柊の指示通り、多少おぼつかない動きではあるが上昇し配置についた。

Su-57は既に目前にまで迫っておりそれはわずかな形に視認できるまでに至っていた。

「いい?行くわよ春野!」

「いいぃいぃぃいいい!いきますぅ!」

出力を全開にしてSu-57の正面へと一気に迫る。

両機のカゲロウの尾翼が展開して尾を引くように空気が瞬く間に淀み、基地上空の青空にカゲロウモードが発動した。

敵機と交錯し、両機の放ったカゲロウモードの淀んだ空へと包まれたSu-57はその動きを鈍らせ、急速に速度を落とした、が。

「ミサイルアラート?!」

”春野機、ミサイル接近!回避せよ!”

柊は敵機は電子機器をも狂わせるカゲロウモードに包まれながら何故撃てたのかと疑問を感じHMDをくまなく見る。

「・・・嘘」

Su-57のうち一機が高度を落として下部に位置している、うちの一機が直前に高度を落として回避行動をとったのである。

基地の対空砲火を搔い潜りながらこちらにミサイルを放ってきたのである。

「どうしようっ、ダメ、早すぎるっ!!」

春野の悲鳴が無線から伝わってくる。

「くそっヤバい、春野機体を捨ててっ!」

”駄目だ!カゲロウモード発動時には機体が一時的にセーフモードに入る、暫く緊急脱出はできない”

オペレータが焦る声で警告を発する。

「あ、こっちへ来ちゃダメ!逃げて!」

逃げる春野機の近くに、既に到達したUAVに追われるホープ機が迫ってきた。

その時である。

「なっ?!」

ミサイルはその挙動を変え、すぐ近くのホープ機にターゲットを変更した。

「?!!」

悲鳴も上げる暇もなかった。

ミサイルはホープ機を直撃、UAVすら巻き込んで爆炎を起こし断末魔を上げながら堕ちていった。

”あの動きはなんだ?!”

「あのミサイル、AI実装モデルAI—SAMとかいうやつよ。境さんに教えてもらった」

海堂の疑問に答えたのは綾瀬だった。

既に綾瀬ほか三機も基地近くまで引き返しておりUAVと戦闘に入っている。

「も、もう戻ってきたの?!」

「いただく!」

綾瀬機は既に動きの制限されたSu-57にターゲットマーカーを合わせている。

ダダダッ!、ダダダッ!!!

”綾瀬機、Balkan掃射開始!”

綾瀬機は弾薬を節約するようにSu-57の片翼に線を引くように弾を打ち込んだ。

Su-57の翼からは血しぶきの如く火柱が上がり、その巨体を崩御させた。

”Su-57バンディット・ダウン、よくやった綾瀬機”

「横取りずるいですよ綾瀬副隊!」

「初めてのカゲロウモードにしては上等じゃない、金一封は出るかもね」

「話を逸らすな!」

柊は自身が仕留めようとした獲物を横取り、しかもライバル視する綾瀬に取られたことに憤慨する。

「二人とも、気を抜くな。まだ一機いる、あいつの動きはかなりヤバいっ!」

神谷が警告するように、残ったもう一機のSu-57は三宅の放ったミサイルもひらりと交わし、

ホープの陽動もものともせず、一直線に飛翔する。

その眼前のとらえた先へと。

「なんだあいつっ!舐めやがって!」

”マズいっ!定期便はもう目と鼻の先だ!”

海堂の目線の先はまさに荒れ果てた滑走路を見据えた大きなコンテナを吊り下げたオスプレイ二機が目前へと迫っていた。

”定期便、岸本聞こえるか?!コンテナを切り離して高度を限界まで下げろ!敵の射程に入るな!”

しかし、オスプレイが回避行動を取る間もなくSu-57はその一機へと狙いを定めた。

ダダダダダダッ!

Su-57から機関砲が掃射されオスプレイは爆炎を上げて飛散した。

”定期便U01撃墜。熱風隊!急げ!”

オペレータが張り詰めたような声を上げる。

「くそっ、岸本さん回避行動を!」

綾瀬がそう叫んだとき、岸本から全機に向けて応答があった。

”海堂司令官、あいつがここで出せって言ってる!!いいか、さっきからペラペラもううるさくて叶わん!”

「ここで出せってなにを?」

神谷が何事かと目視確認できる定期便を見るとコンテナについているパトランプが一斉に点滅した。

”・・・・わかった。無茶な奴だとは聞いてるがもう好きにやれと伝えろ!”

「・・・誰?」

”グラシャス!”

綾瀬が言った時、コンテナの底部が一斉にパラバラに砕け、一機のカゲロウが現れた。

滞空ジェットを噴出させるVTOLを搭載した最新鋭。

黒きカラスのマークを尾翼に刻んだそのシルエットは他のカゲロウを凌駕していた。

「カゲロウの新型?!しかもだれか乗ってるの?」

カラスのカゲロウは滞空モードを解除し、一気に出力を全開にして旋回するSu-57へと向かってゆく。

「・・・聞こえるかゼロ基地の熱風隊、俺が手本を見せてやる」

無線から一方的に少しイントネーションの変わったしゃべり方で熱風隊に無線が伝わる。

「なんだぁ?!なんか片言のしゃべり方、どこの国の人間?」

「でもきれいな声・・・もしかしてカッコいい人かも」

「ちょ、春野、抜け駆けは無しよ!」

三宅や柊たちが沸き立つ中、カラスのカゲロウはその小柄な機体には似合わず強烈なスピードでSu-57へ距離を詰める。

Su-57は急速旋回し、カラスのカゲロウの後ろを取ろうとするが逆にスピードを急速に落として後ろを取られてしまう。

「?!!!」

「同情するぜあんた、こんな死に方!」

ダーーーーンッ!!

カラスのカゲロウは両翼についたレールガンを発射する。

Su-57は両翼をもがれ、悲鳴のような墜落音を上げながら堕ちていった。

”・・・カラスのカゲロウ機、て、敵機撃墜っバンディット・ダウン、ターゲット・ニュートラライズド。状況終了だ”

一時呆然となるが直ぐに己を取り戻してコールをかけるオペレータ。


「すごい、何あれ・・・」

「ようやくわかった・・・Su-57の目的はあの機体なんだわ」


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