ハルトムートの料理
レティーツィアがハルトムートに声をかけると、ハルトムートは障子をゆっくりとすすすと開けた。
障子を開けて見えたハルトムートの竜の身体は昨日と変わらず大きいのに、耳をペタリとさせ尻尾も元気がない様子だった。
そしてハルトムートは作った料理とやらを竜の身体で器用に手で大事そうに持って入ってきた。
ハルトムートが作ったというその手に持っている料理をチラリと見てみた。
それにレティーツィアの目は釘付けになった。
ハルトムートが大事そうに持って入ってきた料理は、お皿にただ桃を乗せただけのものだった。
(いや、予想はしてたんだけど。 してたけど、やっぱりそうなるよね…。)
レティーツィアは昨日ハルトムートが調理器具がないと言ったときに思ったことを思い出した。
「もしかしたらハルトムートがいう料理ってお皿に乗せただけの桃かもしれないな…」と半分冗談で思ったけど、やっぱりそうなのか。
それでも黄金竜のハルトムートがすまなさそうに耳をペタリとさせて、お詫びの品として料理(お皿に乗せただけの桃)を大事そうに持ってきてくれたのだ。
動物好きというか、もふもふ好きなレティーツィアは、ハルトムートのその姿を見ただけで昨日のハルトムートのことを許してあげようと思った。
まぁたしかに昨日ハルトムートのしたことは良くないことだ。
もしここがハルトムートのお宅ではなくカシノニア王国のお城の中であれば、王族に魔力持ちが攻撃の威圧をかける効果のある「制圧」をしたのならタダではすまないだろう。
ましてや黄金竜ハルトムートほどの魔力持ちなら、ただの「制圧」で微量の魔力を漏らすといっても、そもそも魔力の全体量が多いので受ける相手も弱い魔力持ちなら命を落としたかもしれないのだ。
だがそこはカシノニア王国の王位継承者のレティーツィア。
だてに王位継承者として魔力属性も魔力量も多いわけではないのだ。
やはりハルトムートが制圧を途中でやめたことも大きいが、レティーツィアだからこそ助かったのだ。
そしてレティーツィアは何より懐が大きいのだ。
(ハルトムートをこんな簡単に許すなんて私ってほんとにお人好しよね)と、我ながらレティーツィアは思ったが、レティーツィアの気持ちはハルトムートのことをもうすっかり許していたのだから、いいのだ。
「桃を私のために取ってきてくれたのね、ありがとう。
昨日のことはこの桃で許したから、もう謝らなくていいです。
さぁ、一緒に朝ご飯を食べましょう?
私、お腹がすいたわ。」
「ありがとう、レティーツィア。
……そうだな、私もお腹がすいたぞ!
婚約者の其方と一緒に食べたくて美味しそうな桃を選んで取ってきたのだ。
どうだ! 美味しそうだろう?」
たしかにそうだ。
ハルトムートと仲直りして気まずい雰囲気がなくなったら、さっきより食欲が湧いてきて桃が美味しそうに見えてきた。
(ハルトムートと仲直りしただけですぐに食欲が増すなんて、私の食欲も案外現金なものね。)とふふふと微笑みながらレティーツィアは思った。
ハルトムートを机に案内して、レティーツィアとハルトムートは昨日と同じように揃って座って穏やかな雰囲気で一緒に朝ごはんを食べ始めた。
桃を食べながら、「そういえば!」とレティーツィアは朝のお風呂のことを思い出した。
お風呂を出たあとの服のことである。
「ねぇ、お風呂を出たあとに服が綺麗に畳んであったんだけど、あれってハルトムートがしてくれたの?」
「む? 私は何もしておらんが…。」
「えっ……。」
レティーツィアはハルトムートが何もしていないと聞いて驚いた。
(……ってことは、誰が私の服を綺麗にして畳んだのよー!)
レティーツィアの心の中は混乱の嵐だった。
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ハルトムートはレティーツィアと仲直りがしたくて、早起きしてせっせ、せっせ、と桃を取って、ハルトムートなりの料理を作ったんです。




