格闘戦闘指導 ―ルーカスとジェイの違い―
だが、カリナには同時に疑問も湧く。ルーカスに問いかけた。
「でも――ジェイさんの指導ってなんであんなに厳しいんですか?」
「あぁ、それか」
ルーカスはカリナのグリーンドワーフに適切なAIユニットを情報端末で調べながら呟いた。
「あいつ、陸軍歩兵あがりなんだよ」
「歩兵?」
そう言われてカリナは思わず膝を打った。
「あぁ! そう言うことか!」
「わかるか?」
「はい、歩兵は基本、何でも屋ですから。才能が身についてからそれぞれの役割に分化します。逆に訓練中はなんでもやらされますから」
「心当たりがありそうだね」
「あまり、思い出したくないですけど」
そう苦笑しつつ二人は笑いあう。カリナとルーカスの教習は穏やかな空気の中、進んでいったのだった。
その後、グリーンドワーフに射撃管制補助AIを追加し、射撃プロセスと、照準補正の機能をAIに任せた。そうすることで、射撃スコアは急上昇――
「3姿勢、総数60発中59発命中、残り一発も命中ギリギリ、これなら合格レベルだろう。このペースで次の工程も進めるぞ」
「はい!」
そして、標準射撃訓練――移動射撃訓練――と順調に駒を進め、ダガーナイフ型の片手武装や、戦棍タイプのコンバットシャフトを用いる格闘武装訓練を明日に控えた。
「それじゃ、今日はここまで。明日また、始めよう」
「はい!」
決して怒らないルーカスの指導方法――、それはある意味カリナには相性が良かったのだ。
翌日になり、格闘武装訓練が始まった。そうなると相手となる機体が必要となる。それを持ち出してきたのがルーカスだ。
「格闘武装訓練は俺が相手をする。模擬的な攻撃対象となるアクションを行うので、基本的な攻撃動作を行い、これを習得、そして、次の段階で、こちらからの攻撃を回避しつつ攻撃する訓練につなげる。ここまでで質問は有るか?」
「いえ、ありません」
「よし、訓練を開始する」
「はい」
そのルーカスが持ち出したヴァンガードは、彼専用の愛機で六脚の蜘蛛形の機体にサブアームや銃座やミサイルユニットなどが付けられた多脚型のヴァンガードだ。中央の胴体部分はジェット戦闘機の機体のようにスリムであり直接視界のキャノピー型コックピットが特徴的だった。
「これがルーカスさんの機体ですか?」
「そうだ、機体名は〝ギャリソン・ヘクスブレード〟と言う」
「操縦席がガラス張りのむき出しなんですけど――」
「ミサイルの直撃にも耐えられる強化ガラスと、鋼鉄並みの強度のエンジニアリングプラスチックで構成している。今までにも3度直接被弾しているけど何ともないさ」
「すごい――」
2人のやり取りを近くでエレナが見ている。満足げな表情からこの機体が彼女のお手製であることは明らかだった。こうして格闘武装訓練が始まる。それはカリナのこの世界における〝適正〟が明らかになる瞬間だった。




