カリナ、エンジン始動する
素直にハイと答えるカリナに対してジェイは機体の操作をやって見せた。
「まずカードが2つ、機体イグニッションカードと戦闘用のコマンドIDカード、つまり機体のカードと、操縦する人間のカードだ」
ジェイは2枚のカードをそれぞれのスロットに差し込む。
「カードを認識したことをランプの点滅で確認してカードスロットのすぐそばにあるリアクター始動スイッチを入れる」
少し目立つ大きさのレバースイッチを上へとあげる。胴体中央部分から低くくぐもった音が聞こえてくる。
――ウィィィイイイ――
「これがこの機体の力の源であるクォークエンジンが予備作動を始めた音だ。言い換えれば炉の中で火をくべ始めたようなものだ。温度が上昇して一定数以上の力がたまらないとエンジンがかからないんだ」
「やかんの中でお湯を沸かして蒸気が出るようなものですね?」
「面白い例えだが間違ってはいない。リアクタースイッチを入れてから10カウントで臨界状態に達する。そしてリアクタースイッチの隣のこのカバー付きの大きなボタン。これがイグニッションボタンだ」
誤操作防止用の透明なカバーがついた押しボタン。そのカバーを指で跳ね上げて親指の先で強く押し込む。
――ガチッ!――
――キュゥウウウウッ――
――ゴオオンッ!!――
リアクターから甲高い金属のような音が響いたと思ったら軽い照明と共に機体が爆発するような重い音が響いた。
「ヒャッ! びっくりした! これ何ですか?」
「これがほぼ全てのヴァンガードに共通で備わっているメイン動力・クォークエンジンの作動開始音だ。こっちの世界には車にしろ船にしろ空を飛ぶ乗り物にしろ、こうしたエンジンというのは何かしらがついている。冷えて何も燃えてない状態から、火を灯して内圧を上げて一気に爆発させる。そしてそのエンジンが順調に動いて機体そのものを動かせるようになるんだ。このエンジン始動までの部分がファーストインプレッションの最初の部分だ」
そしてカリナの反応を見る前にジェイは機体を停止させる。2枚のカードも抜いてそれをカリナに渡す。
「失敗してもいい自分でやってみろ」
「はい」
2人で機体から離れてコックピットを閉じる。そしてすぐにカリナは操作を始める。
コクピットのすぐ脇に立ちまずはハッチの開閉から始める。
「カードは2枚、人のカードと、機械のカード、機械のカードで鍵を開ける」
ハッチ開閉スイッチのすぐ脇にイグニッションカードをタッチして認識させる。
――ピッ!――
「そして押しボタンを押す――っと、固い!」
女の子であるカリナの指の力では押せそうにないくらい固かった。なので拳を握って人差し指の第一関節をボタンに押し当てる。
「確かこうやってやれば――」
――ガチッ!――
押しボタンの操作と共にコックピットのハッチが上に跳ね上がる。カリナはメインシートに滑り込む。そしてカードの認識だ。
「人のカードと機体のカード、これをそれぞれの場所に入れて」
イグニッションカードと、人物識別IDカード――今回は練習用だが、これをそれぞれの場所に差し込む。スロットすぐそばの赤いランプが点滅してカードを認識したことを告げる。
「よしうまくいった。そして次に――これだっけ」
メインリアクタースイッチを入れる。機体がかすかな音を立てて動き始めたことを教えてくれた。
「これで〝かまど〟に火を入れ――、10数えて待って――中に力が溜まって――よし! なんか表示された。カバーを開けてメインスイッチを押して――」
――ガチッ!――
――キュゥウウウウッ――
――ゴオオンッ!!――
カリナは見事に一発で、機体を立ち上げて見せた。慌てず騒がす落ち着き払い教えられた通りに操作してみせる。少し離れた位置で見守っていたジェイは、ガレージの床の上に立つ見上げて見守っているエレナに告げた。
「やりましたよ、彼ら一発で成功です」
「そいつはいいね。〝初めをしくじらなければ、戦場でもしくじらない〟――しくじりのジンクス乗り越えたのは何よりだ」
2人のやり取りにカリナが声を返した。
「しくじりのジンクスって何ですか?」
「ああ、それか――練習の一番最初、機体立ち上げのファーストインプレッション――これの一番最初で初めてやらせた時にしくじしたりつまずいたりするやつは、戦場でうまくいかないっていうジンクスがあるのさ」
1階からエレナを声を掛けてきた。
「一発目成功おめでとう! ここから先は何度も繰り返す練習地獄だよ。ジェイにしっかり教えてもらいな!」
「はいっ!」
カリナのいかにも嬉しそうな弾ける声が聞こえた。
「それじゃファーストインプレッションの次は、機体の制御情報の認識と操作だ、一番丸暗記しなければならない場所だがお前ならできる!」
「はい頑張ります」
一番最初の成功でカリナは大きな勇気をもらった。ヴァンガードと言う未知なる存在を使っての戦場での戦い――、知らないものは怖いという当たり前の原則の前でカリナはその最初の壁を超えたのだ。
( 'ω'o[ 読者様へ ]o
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