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英霊召喚不可能 ―赤い瞳のサイクロプス―

 今、時間は夕暮れ、地平遠くに太陽が沈む中、周囲は荒涼とした風景が広がっている。

 その真っ只中にカリナは佇んでいた。そして、眼前はるかで繰り広げられているのは、鋼の存在がぶつかり合う、壮絶な戦場だった。

 

「行こう! あそこに人間が居る!」

『お待ちください! 危険です!』

「もちろん危険よ! でも、彼らが導いてくれたのは間違いなくここ! ならばあそこに人間がいるのは間違いないわ!」


 そう言い切って、カリナは2つの小さな飛行体を見つめた。彼らは地上で羽を休めるように静止していたが、カリナに見つめられて回転する翼を回すと、軽やかに舞い上がる。そして――『そのとおりだ』――と言わんばかりに自ら戦闘の行われている方へと動き始めたのだ。

 今、空に茜色がさし、地平線には薄っすらと星空がみえる。その夜空の下をカリナは必死に走り始めた。

 そして走り抜いたその先には、異様な物が数え切れぬほどに転がっていた。


「鉄の塊? それにしては生き物っぽい――」

『生物と言うより魔獣に似ていませんか?」

「魔獣? 鉄の魔獣の死骸?」


 それはカリナが魔王軍との戦いで見慣れた魔獣に酷似していた。まさに〝鋼の獣〟――、その死骸の群れを彷彿とさせる。

 二脚歩行の人型、四脚歩行の獣、あるいは馬車などのように大型の車輪を備えたものもある。形状、種別、多種多様だ。


「たしかに――、生きている気配はないけど、姿かたちから見てもすごく似ているわ、〝魔王軍〟の配下の魔獣や兵卒たちに」


 カリナは周囲を警戒しつつ歩いてさらに状況を見回し続ける。夕暮れの暗がりの中で逆光となり、その鋼鉄の遺骸は不気味な沈黙を守っていた。


「四脚歩行が〝重突撃型〟――翼のあるものが〝翼竜〟と同じ空からの〝警戒任務用〟、二脚歩行の人型が巨人や大型のゴーレム――、そう考えると無作為に集まったものではなく、ある意図を持って編成された〝軍勢〟と考えるべきだわ」

『こちらの世界に着たときに初接触で戦った相手ですね?』

「えぇ、その可能性が高いわ」


 そう、今もカリナのそばを漂っているあの小さな飛行体、彼らと接触した時の敵だ。

 カリナの視線は馬車や牛車のような車輪を持ったワゴンのようなものに向いている。


「これらの兵器は元の世界では見たこともない。魔法アカデミーや各国の兵器工廠で作られていた話もない。だとするとここは全く別の文明の世界よ」

『ならば――何が起きるか分かりません。十分にご注意を』

「もちろんよ」


 お互いに注意し合いながら慎重に歩みを進める。そして、砲塔の付いたワゴン型の鉄塊が横転している箇所を通り過ぎる。


――フゥィィイン――


 何かが唸るような音がする。


「えっ?」


 音のする方に視線を向ければそこには――


「赤い瞳? サイクロプス(1つ目巨人)?」


 巨大な赤い隻眼の1つ目のバケモノが横たわっていたのである。


――ヴォオンッ――


 その隻眼はそれまで眠りに付いていたかのように静かだったが、カリナの気配を感じたのか目覚めるように赤い光を放った。そして――


「こいつ、動く?!」


 その赤い瞳の巨体は横たわっていた体を起こし始めた。ただし、人型ではなく四脚歩行で獣のようなシルエット、それも獅子か豹を思わせる攻撃的な肉食獣タイプだ。


「エリュシオ! 戦闘準備!」

『了解、戦闘支援を望める〝英霊〟を探します」


 愛剣である聖剣レギオンブレイドを抜刀して構えつつ、カリナは敵を凝視する。不測の事態に不安を感じていたが、それでも倒すべき敵の状況を冷静に判断する頭は残っていた。


「お願い! 鋼の肉体を撃破可能な魔法か斬撃能力が望める人を探して!」


 そうエリュシオに語りつつ敵の状況を把握する。


「四脚歩行の肉食獣型――、しかし、左の前足と後足を負傷しているため移動力には制限があるわね。ならば頭部を、特に目を潰せば!」


――ブオオオオォオン! ギィィギギギギ――


 敵は負傷した体を軋ませながら立ち上がろうとしている。人間に対する敵意をむき出しにするかのようにだ。


「この敵の手の内がわからない以上、一気に潰すほうが得策だわ!」


 カリナがそうつぶやいたときだ。エリュシオが叫んだ。


『マスター! 大変です。〝英霊召喚〟ができません!』

「えっ? どういう事?」

『英霊が存在する霊的世界が見つかりません! 私が普段行使している〝霊的接続〟が繋がっていないんです! 英霊の存在を探索するのに必要な〝英霊神命簿〟にも接続(アクセス)できません』

「そんな!? どうして?」


( 'ω'o[ 読者様へ ]o

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――勇者は、生まれた時から勇者だったわけではない――
これは、世界を救った勇者の物語ではない
世界を救う勇者が、生まれていくまでの物語である
少女カリナと精霊エリュシオ
二人の絆を軸に描く、本格ビルドゥングスロマン×ハイファンタジー戦記

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▼ 勇者カリナが、未来へ辿り着く直前の物語

AIと戦闘機械の未来世界へ飛ばされる、その直前――。
少女勇者カリナは、仲間たちとともに三百年の戦乱を終わらせる最後の戦いに挑んでいた。

『勇者カリナ/魔王城最終決戦録』を読む

―少女勇者カリナと仲間たちが挑んだ、魔王軍との最後の戦い―

勇者カリナ/魔王城最終決戦録 タイトル画

カリナシリーズ紹介ポータルサイト

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― 新着の感想 ―
タイトルから単純に未来を想像していたのですが、呼び出せないということは別世界の未来なのか、それとも英霊を呼び出せない状況に陥っている未来なのか想定外で楽しみです。
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