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復活する英霊召喚 ―恩師レイモンド―

 それから夜も更けて深夜に入ってからだった。

 エリュシオがカリナを急に起こそうとしたのだ。


『マスター、マスター起きてください』

「ん……」

『おやすみ中に、申し訳ありません。ひどくうなされていたようでしたので』


 寝起きに目をこすりながらベッドから体を起こす。


「ありがとう――、流石に辛い夢だったから」

『夢――、どのような?』

「――ネルガルの訓練所時代」


 カリナの沈んだ表情に、その心の負担をエリュシオは察する。


『過去は過去です。今は、前へと進みましょう』

「うん、そうよね。ありがとう。エリュシオ」


 カリナは笑みを浮かべる。そんな彼女にエリュシオは告げた。


『実は、急ぎお話したいことがあります』

「え? 何があったの?」


 まだ半分ぼーっとした頭のカリナだったが、次にエリュシオが語った言葉は彼女の頭を目覚めさせるには十分なショックだった。


『元の世界との間で英霊召喚が可能になりました』

「えっ!? 本当?」

『はい、元の世界との間のつながる空間位相を探索し続けてようやく正確に把握が可能になりました』

「ではソルスター世界の英霊たちと会話できるの?」

『はい、ただし以前のように大量や長時間の召喚は不可能です。異なる世界を無理やりにつないで呼び出しているので一度に2人までが限界。また接続に維持する理力が必要になるので時間にして数分から三十分、その程度が限界です』

「でも英霊たちの知恵や助言を求めることはできるわよね?」

『はい、十分に可能です』


 カリナが勇者として活躍していたソルスター、その英霊たちを呼び出せるとなればカリナにとってもこれほど心強いものはなかった。


『早速やりますか?』

「ええ、是非呼び出したい人がいるの」

『どなたを召喚いたしますか?』


 そう問われてカリナは真剣な表情で答える。


「グレインリーフ国防兵軍のレイモンド将軍を!」

『承知いたしました、名将のレイモンド卿ですね? ただちに英霊召喚、実行いたします』


 カリナはレギオンブレイドを手にして両手で垂直に構える。


『ソウルサモンズゲート開放します』

英霊(エイドロン)召喚(・イヴォーク)!」

『英霊、グレインリーフ国防兵軍・作戦参謀将軍レイモンド・ハーベスト――召喚いたします』


 部屋の空間の中、光が沸き起こり、扉の形をなす。そして、その扉が開き、その向こう側から上半身に甲冑を身に着けた金髪に無精髭の中年男性が現れる。

 どこか飄々として食えない雰囲気の無精髭男――、左腰に剣を下げてけだるげに歩いてくる。


『よう』

「レイモンドさん!」


 いかにも軽い口調でレイモンドは語りだした。カリナとの付き合いは長いのかその振る舞いによそよそしさはなかった。

 ただ、彼は生者ではない。その姿はどこか幻のようにほのかに輝いている。


『久しぶりだな、カリナ――』

「はい、お久しぶりです!」

『よもや俺が英霊として呼び出されるとはな』

「お休みのところ、申し訳ありません」

『いや気にするな』


 レイモンドは近くにあった椅子を見つけて腰を下ろす。そして、カリナの目を見つめてこう告げる。


『俺が〝向こう側〟へ渡ってどれくらい立つか――、いや、それは言うまい。それより、あとに残した連中はどうしてる?』


 彼はソルスター世界で今もなお生きている人々の事を知りたがっていた。


「魔王軍との戦いは無事勝利、魔王討伐にも成功して最終決着を見ました」


 その言葉にレイモンドの顔がほころぶ。


『そうか、ついにやったか』

「はい! あなたが牙狼騎士団を継承させたゲオルグさんも、立派に騎士団長と、狼樹人種族の族長を努めてらっしゃいます」

『ほう? あいつがか――、モノになったようだな』

「えぇ、大戦が集結した今では、諸国の治安維持のために奔走しています」

『そうか――、まぁ、あいつなら大丈夫だろう』


 レイモンドは過去を懐かしむように微笑む。そこにカリナが続けた。


「ただ、女性問題で苦労していますけど」

『あいつが?』

「はい、騎士団長で族長、モテるのは当然なんですが、押しかけの奥さんが4人も現れて途方に暮れているようです」

『そいつぁ、意外だな。まぁ、戦いに長けていても、異性はからっきしってのはよくあるからな。仲良くやれてればそれでいい』


 だが、そこでレイモンドは笑みを消して、冷静に問いかけてきた。


『カリナ――、随分と遠いところまで飛ばされてきたんだな』


 レイモンドは鋭く指摘した。瞬間、カリナの表情が張り詰める。


『ソルスターではない別な世界。それも文明まで根本から違う――、どえらいところにまで連れて来られたようだな』

「えぇ、突然のことでまだ戸惑うことばかりです」


 レイモンドはそんなカリナを優しく見守るのだった。


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