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書きたくなって衝動で書いたので拙い部分が多いとは思います。
ジュリアは魔導師になって忙しく働いていた。友人関係も仕事も順調だが、ただ一つ
幼馴染で許嫁でAランク魔導師
グラッセルとの関係性に悩んでいた。
グラッセルが魔導師の学園に入ってからというもの常に私以外の女が彼の隣に居る状況であったのだが、5歳の年の差を慮り見て見ぬフリをした父。
私はまだ子供だから仕方ない。と父様は言っていたが、今思えばそれは男側から見た経験談とか言うご都合主義である。
まだ子供の私が父の庇護下にあり、この先成人したあかつきには許嫁としてちゃんと接してくれる筈。男の子だから経験は大事、今はしょうがないよね?的に軽く考えていたのやも知れない。
しかし母の顔は苦々しくて、ゴキでも見るかのような視線で奴を睨んでいたのは、女としての見解を表していたと幼い私からでも見て取れた。だから私って愛されてるな〜と感じられたのは嬉しかった。
父の事はまぁそんなものよ、当時からあまり期待はしてなかった。こんなヤツを婚約者に据える父だし…
かくして私は両親の愛情を受けスクスク成長し、膨大な魔力の発現で7歳の幼さで学園に特例入学した。良き師に出会いマンツーマンで授業を受け12歳で学園を飛び級の実質卒業。
勝手に成人扱いでリクルートされ是非にと請われて宮廷魔導師となった。
所属は変わらず師の元でなので学園で同級生と時たま授業を受け、交流を持ちながら仕事をするダブルワークとなった。
これは大人しか周囲にいないとなると心の成長に影響するからとかの処置らしい。まぁ仕事相手が大人ばかりだからたまには同級生とのバカ話は確かに必要だったかも。
通常は12歳で入学して18歳で卒業式代わりのデビュタントをもって成人のお披露目となるが、私は既に成人扱いで仕事もある。
そちらが忙しくなって来た事もあり王家公認で成人とみなされ我が国初の14歳で自力で(親の急死等での継承ではなく)貴族として大人になったと認められた特例貴族である。
ある功績により叙勲され私個人としても陞爵され爵位持ちになったからな訳なんだけど、実は褒賞もかなり頂いていたし、私の持つ魔道特許により父より金を持っているし、独立した地位を頂く事で出来る仕事が増えるよね?という国の意向?
大人になれとの命令もあって成人しました。
それでもまだ学園に籍があるのは、見た目から病弱で出席日数ギリギリの女の子キャラで
本人の中身は全く違うのだけど隠れ蓑としては利用できるからと結局国の意向?幼い娘に激務をさせるなというツッコミやらを回避するためらしい…面倒くさい。
幼い頃は只の鈍臭いガキだったが、父のお祖母様の血筋に大魔道士と言われた方がいたらしく隔世遺伝?で私が5歳の時に力に目覚め、家庭教師と魔道士団の勧めもあり学園の特別クラスへと7歳で入学。専任講師にみっちり鍛えられた特待生だった。
10歳で学園の授業を全て終えて並行して訓練していた魔道の原理、実習も12歳で修了したが余りに若い卒業は私にとって良く無いとの大人たちの話し合いにより、魔道士団の団長付きになり現場の勉強をしながら学園の師匠の助手として在学していた。12歳迄は何処の娘かも分からないようにしてローブに隠れて。12歳からは普通の生徒として。
なので2年間はグラッセルと同じ学園内で過ごす事となる。
が、実際はがっつりグラッセルと同時期に学園には在籍していたので、奴の素行の悪さは現場を直接見ていた。先生方も見ていた。
私の指導に来ていた魔道士団長も見ていたが、つまり世間は知っているが若いうちは遊びたいもんだとか言う父は知らん顔をしろと言った。
通常年齢より4年も早い表向きの卒業扱いをして現場で仕事をする事になったのは、魔物大発生による魔道士団への早期(表向きの)入団をしなければならなかったからなんだけど、言えば聞こえは良いが只の人手不足と特待生でもあったのだから手伝えというお国の都合だ。
学生の研修扱いだったものが、魔力の大きさからいつの間にやら成人としての責任を持つ立場と看做され重さが違って来てしまった。まだ14歳になったばかりなのに、かなりの覚悟を強いられた事に重圧を感じるがまぁ仕方ない事とは思う。
何せ私クラスの魔力持ちの人がいない…
呑気な父は、これで娘を女として見てもらえるだろうと、普通より早く(権力者により無理やり勝手に)成人した娘を披露する為晩餐に許嫁であるグラッセルを呼んだ。公に出来ないが成人を身内で祝おうと言う事だ。
だが夜は忙しいと昼の茶会に少しだけ参加するとの返事。
それでも十分失礼だったのに、やって来た奴は私に話しかけることも無くお祝いを述べ、多少早い卒業である年齢の事も気がついていない。挙句何の祝いだ?と言って来たので母はキレた。
『とことん私に興味ないのですね』
流石に父もイラついた表情だったのですわ婚約解消か?
母も私も期待したのに、またもや父様ったら奴の父…おじ様の説得に折れたのよね〜。
だいたい女を取っ替え引っ替え連れ歩き、流れてくる噂は下衆以下。女との付き合いは長くて一月程、"ヤリ捨てグラッセル"なんて渾名がつくほどの男だよ?18歳でそんな渾名普通嫌だけどね。
そんなの婿に欲しい?
金にも汚くて、金持ちの未亡人に金をせびり、使い込んだ学園の研究費を女から金を貢がせて補充し査察を逃れたとか?使い込み内容も娼館通いとか博打や数多の女との交際費で散財したらしいとか?
相変わらず見栄っ張りで身分相応の生活が出来ず、女は金持ちかボンキュッボンな女しか興味が無いと言う。
徹底して、“勉強?何それ”な残念な奴なのに。
父様、本当にそんなの婿に欲しい?
幾ら親友の息子でもハズレもハズレ大ハズレだよ。茶会の目的である私の成人祝いと言うこともおじ様もわかってなかったわよ?
更に残念すぎな卒業パーティーのエスコートも忘れるという失態をしても、家の繋がりだけの婚約は現在進行形の黒歴史継続中である。貴族なので歳の差婚は多々あるので10才ぐらいの女の子は流石に無理だが、14才ならば親が同伴するなら参加はOKなのだけど、それすらする気は無いらしい。
おじ様がグラッセルのふりをして贈ってきた花は届いた。
ええ、可愛らしい花束が。
それはそれは可愛らしい小さな花束でした。ケチってるのが丸わかりのね。
親も親だった。もしかして親子揃って私が飛び級卒業するとわかってない?
実質もう卒業はしているが表向きの卒業は今回なのよ。二度とないデビュタントでもあるのだけど…
人生の中での華々しい式典に向けた花ではなかったわね。小瓶に生けるような可愛らしいものでした(高いお花が一本も入っていない)。卒業祝いのカードも無しでショボい。やはり卒業と思われていなかったのか?
一緒に行けないけどごめんね的な花?
にしてもショボかったわ。
デビュタント本番は流石にと思って確認の連絡をしたにもかかわらず梨の礫。
当日他の女をエスコートして自分の卒業とデビュタントだぞとばかりにドヤ顔でグラッセルが現れた時は、さすがにもうコレ婚約はなかった事でよく無い?ドヤってたし…と母の様子を窺えば、母が父に刺すような視線で語っていたな。足も踏んづけていたのを見たわ。
母様の方が話が分かるので、出来ればあちらと話し合いを今直ぐにして破棄して来て欲しいと伝えたが、父としては今までの投資額やら友としての繋がりだとか考えてモゴモゴ誤魔化しながら母様の視線から逃れるしかなかったようだ。
あーこれ私の婚約解消より両親の離縁の方が先か?
母からの冷気しか感じないデビュタントとなったわね。
それに周りは私より当然歳上の人達ばかりで親しい学生はいない。こっちは助手をしていたから顔やら成績は知ってるけどね。当然ながら、ダンスにも誘われず寂しいデビューとなってしまったのだけど、だからこそ奴にエスコートをと父は考えていたらしい。
目論見は大外れとなりましたねー私は予想していたけどね。
父様は母様の視線に耐えられますか?
私は怖くて仕方がありませんけどね。よくそれに耐えようと思いますね?
おじ様と母様を天秤にかけたら母に軍配が上がる筈なのに…だからあんな事を。
「あの様に息子を御しきれない人とは縁を切ったらいかが?何年待っても変わらないわよ。貴方の友の選び方という災害?事故かしら?それに払ったと思えばあの家に渡した資金も安いものですわ」
ええ、お母様ごもっともです。もっと父様を抉って引き裂いて決心させて!
まぁ王族が居るデビュタント会場で夫婦喧嘩は出来ないので、淡々と小声で諭す母様ったら、怒鳴るより本当に怖かったです。
一言も返せなかった父様は帰宅後溜まっていたものを吐き出し、夫婦の言い争いが聞こえたのは防音魔法を掛けて知らないふりをしたけど、多分母様の勝ちですね。口で敵うわけがないもの。
実家の資金力でもね。そろそろ折れた方が宜しいのではないかしらお父様?
「もうお金なんて要らないから存在を消してってちょうだい!」
時折聞こえる苛立ちの咆哮で防音魔法が揺らぐ程の本音出まくりですねお母様、突き破って聞こえてきちゃった。聞きたかった言葉だからかな?
もっと言って良いですよ。既に男の友情なんて挟める状況では無いですからね。
「可愛い娘を泣かせて迄続ける婚約はもう友情とは言わない。ただの金の無心では無いかしら?虫程の価値もない男を何故可愛い娘が養わなければならないのかしら?」
母様、正論すぎて父様が絶句してます。
そんなピリピリしたデビュタントから一年後我が家の諍いの元である男、グラッセルがいきなり私の仕事場に飛び込んで来て
「お前の処女蜜をくれ」
何年か振りに直接私に話しかけてきた言葉がキモくて失神しそうになりました。
どうやら奴は現在、珍しくも魔道士の仕事をしていて、魔獣を眠らせる薬を研究中らしい。
前髪で目を隠し櫛を通さず化粧っ気無し、顔の半分もメガネで隠し更に魔道士の長いローブで顔、体型を隠している典型的な【イケてない魔導師の容姿】である私に声を掛かけたのは、こんな容姿で男がいるわけ無いと思っての処女云々だわね。
元々研究所にいる女子の魔道士はリアルな男女交際を敬遠する連中が多い。幼少時からの対人恐怖症の子が多いし(ここに居る人は魔力が比較的高く威圧で怖がられ、幼いと感情のコントロールが上手く出来ないと暴発した経験ありで引きこもり)何より一番は交際する時間があるなら研究したいオタクが殆どだから、魔道士の女なら処女!
という該当者はかなりいるのになんで私に?と聞けば
「だってお前絶対処女だろう?デブいキモブスに勃つ男なんて居ない!魔道士の中でダントツイケてない!だからA級魔導師の俺様がお前の一生使われない分泌物を有効活用してやるって言ってんだ感謝しろよ」
あぁ他の皆様は拘りが強いから相手にさえされず最終的に私が居ることを思い出し来た感じでしょうか?
グラッセルの服や髪が焦げてるから絶対私の所に来る前に誰かにファイヤーボムを飛ばされたわね。
しかし仮にもまだ許嫁である年下の私に対してあまりに酷い言いように耳を疑った。更には、実用化したら専属の分泌液係にしてやるとかほざいた。
だから、私は許嫁だろうが!
何その恥ずかしい係。その言い方、扱いおかしいだろうが!一生使われないって‥結婚しても子作りする気無いでしょ?私もその気は無いけど。
仕事をしているかと思ったらその暴言かよ。陰で魔道士の面汚しとまで言われる程仕事しない奴が珍しく真面目にやっているかと思えばコレか!
あら?でもなんで急に仕事してるのかな?
一般の人は魔力の無い人の方が多いから、旅や仕事中に街道や森で魔獣に出会った一般人は、現状やられるか死にものぐるいで逃げるしか無い状態だ。その魔獣の動きがここの所また活発になって居る。
うまく警ら中の兵に出会えれば助かる道はあるが神出鬼没なのが魔獣である。運が悪かったですねで命をかけるのは中々辛いものがある。
一番魔獣被害が多いのは森や田畑で働く農民と街道を行き来する商人達で、穀物を作る農民は国の肝。作られた作物を流通させるのが血である商人だ。
だけど農民は護衛に払う金が無い。
商品より高い護衛代を払う商人は品物の値に跳ね返すし、小さい商いをする者は護衛代金も払えない者が多く、兵団も全ては目が届かない。民はやられ損が多いからこそ、国として民が安全に暮らす為の研究をすると言う事は魔導師のお仕事の一つとなるわけで‥現在の最優先案件になっている。
被害が増大しているから各街道や、見回りの兵に魔道士が同行して迄被害を止めようと国を挙げて取り組んでいる案件なのは確かだけど、あっ!
有益な物には王より報奨金が出るんだった。
それか!
魔獣から逃げる時間を稼ぐため一時的に魔獣を静止するとか、防壁を繰り出す術などを魔道士が居なくても発動出来て確実で安価なものが出来ないかという国からのオーダーがあったのだ。
国中の魔道士をあげて研究を行っているし、私も勿論携わっている。
うちの領地もかなり被害があって父様からも早めに頼むと圧力が掛かっている最重要課題だった。
グラッセルはどうやら薬剤散布型を研究しているらしいが、"処女の蜜液"って何故其処に行き着くかな?胡散臭いだけじゃないのよ。
それに香り系は余計に魔獣を煽りかねない。
特に人の体液を使ったものは魔獣をより呼び出す誘引剤に成りかねないので十分注意する事と云う重要通告があったのは、確か先月だった気がするけど?まさか見て無い?
月初めに騎士が重死傷を負った事件がかの体液を基にした薬剤散布で起こったのだ。
あれは確か汗を‥元はお父さんの臭い靴下を投げつけたら魔獣が逃げたと言う何処ぞの村の噂から、魔獣の嫌いな匂いを散布する方法が有効じゃないかと、更なる悪臭を濃縮する事で効き目があるかもと期待され、即実用実験となった。
ところが兵団の使用済み靴下から抽出した散布液は悪臭を撒き散らすだけでなく、怪我人多数を出し周辺の町にまで魔獣が多数出てしまうという大惨事となったのだ。加えてこの散布は3箇所で行なったがために被害は3倍で済まなくて終息させる為に魔道士団まで出張る大ごとだったんだけどなぁ〜
魔導師内でもかなりざわついたのよね。薬剤を作った魔道士と使用許可を出した貴族は拘束された筈‥まぁ通常なら研究は失敗してなんぼでまた頑張ろうってなるのだけど、かなりの人数の兵団の方を犠牲にした事がまずかったよね。事前実験を省いたのは貴族様の方で功を焦った為に、魔道士は実証実験を出来ず脅されて無理やり薬剤を作らされて、即本番で大惨事。とばっちりなのに拘束されて可哀想だった。
なんていう大事件だったのに体液由来の液剤散布の結末を知らないの?
人間の体液臭は極小魔獣の一部には有効であるらしいが、現在頻発している中型、大型魔獣には逆に興奮させてしまうと同時に他の個体を惹き付ける呼び水となる事がわかって、人の体液は危険とのレポート出たでしょ?
頭でかいのに隙間空いてんじゃ無いの?全魔道士に重要通達したはずなのになー。
実は私の研究の一つが対魔獣に成果が出せる事がわかって先週討伐隊に配備して効果があったとの報告が来た。
今は其れを安価に庶民にも使える物にしようと陣の調整をしている所なの。
だから体液はあげない。いやあげたく無いしあげる意味がわからない。
なんで処女のあいえ…口にするのも嫌よったく、もう。
マジでそれ許可なんて出ないからね。ニヤニヤしている奴を見ると、どうやって採取しようと思っていたのか片手に透明な採取瓶を持ち(袋に入れるとかの考慮無し)私を城の人気の無いところに誘い込もうと腕を掴み引きずり込まれそうになった。
いつ人に見られるか判らん物陰で愛液摂取とか無いよね?
絶対無い!唾液でもヤダ!
裸瓶に体液入れて‥なんて考えただけで身震いものよ。まして愛液って。
服めくって肌晒して‥そんなの何処でやろうとしてんのよ。変態!
いやー考えただけで怒りが込み上げる。
デリカシーの無さと、幼馴染であり許嫁としての親愛とか配慮とか無さすぎて心が痛い。痛すぎる。
女として見てない‥からの今更感…
もう良いよね?