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ユートピア・アラート 〜超能力少年と不可思議少女の世界革命〜  作者: 赤嶺ジュン
ユートピア・アラート8 エゴイズム・フェスティバル(後編)
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第六章 英雄譚-6





 ルーク・エイカー。


 公理評議会特別少年調査班班長にして、元治安維持隊元帥。そして、元――。


「――超越者序列一位!」


「そう呼ばれるのは久しぶりだ」


 手袋の下を片方ずつ引っ張り、両手に嵌めていきながら、ルーク・エイカーは口元に貼り付けた笑みを深いものにした。


「降伏をお勧めするよ。序列五位」


「……ッ! 舐めんな!」


「君のことは高く評価しているとも。だが、君と私では、立っている『次元』が違う」


「な……」


「そうだな。一秒もあれば十分だろう。いや、十二分か。もう一度言おう。降伏するんだ、マイケル・スワロウ。何なら公理評議会に迎い入れてもいい」


「ふざけんな、オラ! 部下の記憶をいじくるような奴に誰が従うか! この詐欺師が!」


「残念だよ」


 白いブーツのつま先が地面を蹴り、そして――



















































0.01秒後に右拳が顔面に突き刺さり、

0.02秒後に左拳が突き刺さり、

0.03秒後に右拳が腹部に埋まり、

0.04秒後に左拳が腹部に埋まり、

0.05秒後に右拳が左胸に当たり、

0.06秒後に左拳が右胸に当たり、

0.07秒後に左手の肘打ちが鼻に刺さり、

0.08秒後に顎に刺さり、

0.09秒後に頸部の真下に刺さり、

0.10秒後にみぞおちに刺さり、

0.11秒後に右足の蹴りがわき腹に当たり、

0.12秒後に再びわき腹に当たり、

0.13秒後に三度わき腹に当たり、

0.14秒後に左ももに当たり、

0.15秒後に左脛に当たり、

0.16秒後に左足の蹴りがわき腹に当たり、

0.17秒後に再びわき腹に当たり、

0.18秒後に三度わき腹に当たり、

0.19秒後に右ももに当たり、

0.20秒後に右脛に当たり、

0.21秒後に右のジャブが胸部へと放たれ、

0.22秒後に胸部へと放たれ、

0.23秒後に胸部へと放たれ、

0.24秒後に左のジャブが胸部へと放たれ、

0.25秒後に胸部へと放たれ、

0.26秒後に胸部へと放たれ、

0.27秒後に右のフックが横腹に突き刺さり、

0.28秒後に再び突き刺さり、

0.29秒後に左のストレートで顔面を殴り、

0.30秒後に左肩を殴り、

0.31秒後に右ハイキックで頬を蹴りつけ、

0.32秒後に靴の裏を胸に叩きつけ、

0.33秒後に左足を踏みつけ、

0.34秒後に左からわき腹を殴り、

0.35秒後に左足を解放してつま先を蹴りつけ、

0.36秒後に反対側のつま先も蹴りつけ、

0.37秒後に右足で左ひざを蹴りつけ、

0.38秒後に太ももを蹴りつけ、

0.39秒後に腹部を蹴りつけ、

0.40秒後に足を振り上げて顎を蹴り、

0.41秒後に振り下ろして頭頂を蹴り、

0.42秒後に左膝蹴りを腹部にかまし、

0.43秒後に再びかまし、

0.44秒後に三度かまし、

0.45秒後に四度かまして、

0.46秒後に右手アッパーで頬を殴り、

0.47秒後に左手アッパーで反対を殴り、

0.48秒後に顔面を右ストレートし、

0.49秒後に再びストレートし、

0.50秒後に正面から体当たりをぶちかまし、

0.51秒後に背中側にまわって肘打ちを打ち込み、

0.52秒後にまた打ち込み、

0.53秒後にさらに打ち込み、

0.54秒後に振りかぶった右拳を背中に放ち、

0.55秒後に腰を回して左拳を放ち、

0.56秒後に右拳を放ち、

0.57秒後に左拳を放ち、

0.58秒後に右靴裏で右足ふくらはぎを蹴りつけ、

0.59秒後に臀部を蹴りつけ、

0.60秒後に背骨を蹴りつけ、

0.61秒後に上からの左拳を左肩へと叩きつけ、

0.62秒後に左わき腹に叩きつけ、

0.63秒後に右拳を右わき腹へと叩きつけ、

0.64秒後に肋骨の右へと掌底を放ち、

0.65秒後に少し下に放ち、

0.66秒後にさらに下に放ち、

0.67秒後に肋骨の左へと掌底を放ち、

0.68秒後に少し上に放ち、

0.69秒後に更に上に放ち、

0.70秒に右肘打ちを右肩甲骨の下に放ち、

0.71秒後少し下に放ち、

0.72秒後にその左に放ち、

0.73秒後に右肩甲骨の下に放ち、

0.74秒後に背中の中心へと放たれ、

0.75秒後に後ろからの体当たりをぶちかまし、

0.76秒後に前に回ってサングラスを奪い、

0.77秒後に眼鏡をはずしてサングラスをかけ、

0.78秒後に眼鏡を上に放り投げ、

0.79秒後に左から殴りつけ、

0.80秒後に右から殴りつけ、

0.81秒後に右から殴りつけ、

0.82秒後に左から殴りつけ、

0.83秒後に右の掌底を顎に放ち、

0.84秒後に再び放ち、

0.85秒後に三度放ち、

0.86秒後にサングラスを外し、

0.87秒後にサングラスをスワロウにかけなおし、

0.88秒後に両の拳を胸部へと同時に叩きつけ、

0.89秒後に胸ポケットから白いハンカチを取り出し、

0.90秒後に額の汗をハンカチで拭い、

0.91秒後にハンカチをしまい、

0.92秒後にスワロウへと笑いかけ、

0.93秒後に大きく息を吸い込み、

0.94秒後に右の拳を構え、

0.95秒後に両目を大きく見開き、

0.96秒後に腹の底から叫びを上げ、

0.97秒後に左足を踏み出し、

0.98秒後に腰を回していき、

0.99秒後、右拳を強く強く握りしめて――


















































――1.00秒後に、渾身の右ストレートが炸裂した。





         !


         ?


                   」




 一言も発することなく、マイケル・スワロウは仰向けに倒れる。


 全身が燃え上がるように、熱い。朦朧とする視界の中、ルークが落ちてきた眼鏡をキャッチしてかけなおし、こちらを見下ろしてきた。


「超能力者と戦うのは七年ぶりでね。年甲斐もなくはしゃいでしまった。やりすぎたことは許して欲しい」


「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」


 完全に遊ばれていた。


 そのことがわかっても、怒りなど微塵にも湧いてこなかった。


 それほどまでに絶対的な力の差が、存在していた。


「さて。もう一度交渉と行こうかマイケル・スワロウ。私は君を、高く買っている。一般人が独力で賢人の領域に到達するのは、能力世界史上初の快挙と言っていいだろう」


「……」


 もう一度御影の方へと歩み寄りながら、彼は背中越しに淡々と続けた。


「それ故に惜しい。あまりにも惜しい。治安維持隊に引き渡せば、君は尋問を受けることになるだろう。ジゼル・カスタニエのことだ。超越者に対する私怨もあるだろうし、手酷い扱いをされるに間違いない。そしてAGEだ」


「…………ああ…………あの、馬鹿共ね…………」


「君の言う通り、賢人よりも愚者という呼び名がふさわしい集団だよ。だが人類を操る力は本物だ。シェイクスピアはどんな手段を使ってでも、君の記憶を覗き見ようとするだろう」


「問題ねえよ……精神系の能力は繊細過ぎて使えねえが……アイツらの能力も、知っている」


「流石は『全知』の賢人、と言ったところか。知っている物には抵抗できると」


「ああ……だが、お前の能力はわからねえ。きっと、絶対にわからないようになっている。そうなんだろ?」


 饒舌だったルーク・エイカーの動きが、ピタリと止まる。


 彼はこちらを振り返ると、今にも意識が無くなりそうな状態で、それでもなお立ち上がってみせたマイケル・スワロウの姿に眉をひそめた。


「まだやるのかい?」


「……ああ」


「ここから君が勝つ可能性など、万に一つも存在しないというのに?」


「勝ち負けなんて関係ねえんだよ。知ってるか、詐欺師? 勝者だから英雄なんじゃねえ。最後まで戦う奴のことを、英雄って言うんだよ」


 二人の間に、長い、長い沈黙が訪れる。


 ルーク・エイカーは無言で頷くと、赤く染まった両の拳を構えた。


 無理矢理に戦意の笑みを浮かべて、マイケル・スワロウはルークの元へと歩いていく。


 ルークは一度目を瞑り、そして開くと、ゆっくりと首を振った。


「マイケル・スワロウ。君の手は、私には届かない。だが――」


 かすれた叫び声を上げて、ふらつきながらも拳を振り上げる。そんなスワロウに対し、ルークは柔らかい微笑を浮かべた。




「――君の言葉は、確かに私へ届いたようだ」




 ルーク・エイカーの渾身の右ストレートが、再び腹部へと突き刺さり。


 超越者序列五位、マイケル・スワロウは、今度こそ意識を刈り取られて、元序列一位の足元へと崩れ落ちた。



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