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第91話
「メンクロス様は魚がお好きでしたよね?」
「ケイティ、私には嫌いな食べ物はありませんので。お肉も好きです」
「本当ですか? 以前、メンクロス様のディスライクなフードが話題になっていましたよ」
「どうか、ご内聞に」
「いえ、だからトピックになるほど広がっていますよ」
そんなことを言われてはぐうの音も出ない。メンクロスは沈黙し、沈思黙考を繰り返した。自分の評価を下げないよう自分自身に指示をとばす。平たく言えばネガティブという陥穽に陥るなということだ。王子たるもの人々の規範でなければならない。父の教えだった。それに背くことは厭われた。立派な父を見て育ったメンクロス。ああなりたい。ああならなければならない。そのためにあらゆることに興味を示し、敢行し、グローを継続してきたのだ。リンゴの木にたわわな実を鈴なりにつけるように自分はありたいのだとメンクロスは内心、強烈に思った。




