〜伍〜
「というか、多分いつも思っている事なんだけど」
彼女が僕にそう切り出してくる。
何の話をするつもりだろうか、と僕は身構える。
「告白された回数なんて、よく覚えているよね」
「…はぁ。そりゃ、そう言う能力だからね」
僕はそう返す。彼女はその言葉に納得したらしくそうだったね、と言った。
僕は生まれつき、物事を画像の様にひて記憶して決して忘れない『瞬間記憶能力』を持っている。
この能力のお蔭で、僕は成績優秀な優等生と言うレッテルを貼られる事になった。
便利な能力だと思うだろうが、大変な事の方が多い。トラウマは忘れられないし、妙な期待はされる。
例えば、クラス内のレクリエーションでジェスチャーだけで誕生日順に並ぶゲームがある。このゲームの本質は、コミュニケーション能力を高める事にある。
こんなよくあるゲームをしたのだが。一人ひとりに丁寧に誕生日を教えて貰うと、僕は一人でクラスメイトを誕生日順に並べた。こうして、場がしらけたのであった。
神経衰弱の様に記憶力を問うゲームは、僕が圧勝してしまうお蔭で誰からも誘われる事がなくなった。
つまり、この能力の所為で人が僕に寄り付かなくなった、と言っても過言ではない。
しかし、僕にはもっと苦痛があった。忘れられない、それが感じる最もの苦痛であった。
「便利な能力だよね」
「そうでもないよ。持ってみれば分かるだろうけど、面倒な能力である事に変わりはない」
僕の反応に、彼女はうーんと唸る。
「それでも、私は素敵な能力だと思うよ」
僕はその言葉に違和感を持った。だが、その違和感は直ぐに消えた。
彼女は少し目を細めて続ける。
「だって、逆や考えれば大切な事も忘れないって事でしょ?忘れたくない事も私は忘れちゃうから、そんな柊木君が羨ましいよ」
彼女のその言葉と表情が、本心である事を語っていた。その前向きな思考は僕が見習うべき点、であると思う。
僕はそんな彼女の姿を見ながら、こう言った。
「言っておくけど、隣の芝生は青く見えるものだよ」
「でも、我が仏尊しって言うよ。それに、君は自分にもっと自信を持つべきだよ」
いつもより真面目な返答をしている彼女。だが、その諺の使い方は違うのではないかと問いかけたくなった。直接言う事はやめた。
それよりも、僕は言いたい事を言う事にした。




