〜参〜
それは…
「あ!柊木君!」
廊下の向こう側で、大声で僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。そして内心来たか、と身構える。僕に近づいて来たのは一人の髪の長い少女だ。
『椎名 蓮華』(シイナ レンカ)
彼女こそが、僕の平和な学校生活を妨げる元凶。
僕が絶望と言う言葉で、今の状況を表現する羽目になった原因。言うならば、天敵である。
殆どの生徒は家に帰ったり、部活をしていたりで校舎内にはいない。何故彼女は、この校舎に残っているのだろうか。それに、さっき迄桜と戯れていたはずだ。
だから、僕は人と会わない時間と、彼女の様子を確認して今見に来たと言うのに。
「今度は、同じクラスだね」
そうニコニコ笑う彼女の顔を見ていると、逃げられない運命なのだと悟った。
一応言っておくが、彼女はどんな人間も振り向く美少女だ。
クラスの人気者で、頻繁に告白されるような人。
さぁ、ここで問題だ。
何故、そんな彼女がこんな僕に笑いかけているのか。
ただ単に彼女が善良な心の持ち主、と言うだけではない。
答えはすぐに彼女の口から述べられた。
「これで、大好きな柊木君を毎日見られる!」
まるで恋する乙女、とでも言うようなその態度を見て、僕の視界は歪んだ。驚きと困惑で、かけていた眼鏡がズレたのだ。
話を戻すが、彼女は僕のことが好きらしい。勿論、恋愛的な意味で。
嬉しそうな雰囲気を彼女は出しているが、僕はその雰囲気を壊す為に言った。
「椎名さん。言葉は、回数を重ねる程に重みを失っていくものなんだよ」
「でも、私は誰よりも好きな自信があるから重みは変わりません!」
言っている事が、何の根拠もなくめちゃくちゃだ。が、自信満々にそう答える彼女の姿を見て突っ込むのをやめた。
それに、今は何を言っても効果が無さそうだ。
「あ、でも今のはノーカンね」
「はいはい」
簡単に彼女の言葉を流すと、僕の胸の内には今後に対する憂鬱な感情が再び出てきた。僕の顔を覗き込む様に見ていた彼女が言った。
「今、同じクラスが嫌だって事が顔に物凄く出てるよ」
「出てるんじゃない、出してるんだ」
僕は彼女の忠告に当然のようにそう返した。かなりご立腹な様子だった彼女は、急に黙った。




