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開幕
白い壁に囲まれた庭に、春らしく綺麗に並んだ花々が咲いている。
その中で一際目を引く桜が、日を浴びて輝いているようにも見えた。桜に風が吹き付け、花弁が散る。
可憐に舞う花弁の中、佇む彼女の長い髪を揺らす。
彼女はこちらに気付いたようでニコリと笑い、また桜を眺めていた。
そういえば、前にもこんな事があったなと思った。
あの時の彼女には、きっと全てが羨むべきものばかりに見えていたのだと思う。
今は、どう見えているのだろうか。
もしかしたら、変わっているかもしれないし変わっていないかもしれない。一体、どちらなのだろうか。
ふと疑問に思ったが、訊くのを辞めた。
白衣のポケットに手を突っ込み、桜が散るのを眺た。
あの頃から数年、まだ歩みを止めないその姿が僕を前に進めていた。