【4-1】シュヴァルツヴァルト魔法学校入学
無事に入学試験を合格し、僕はシュヴァルツヴァルト魔法学校へ入学することができた。異世界に来る前には受験勉強をしていたせいか、比較的苦にならず勉強は継続できた。またア-ノルドとエルマ-が、僕にしっかりと勉強や実技の指導をしてくれた事も大きかった。
僕は魔法学校の寄宿舎で生活することになった。ア-ノルドやエルマ-と離れて暮らすのは、正直不安がないとは言えないが、新しい友人ができるかもしれない未来に希望を持とうとした。
魔法学校は、四年制である。入学時点で座学と実技の魔法の基礎は理解できている、という前提である。最初の二年間は応用を学び、魔法理論に磨きをかける。残りの二年は、それぞれの専門分野に分かれる。例えば生活など広い範囲で便利に暮らせる比較的小さな魔法道具を発明する魔法道具科、逆に飛行船など大きなものを魔法で動かす動力を研究する魔法工学科、宝石などを使った装飾品に防御や攻撃の魔法を組み込む魔法装飾科、魔法で植物の成長を促す技術を研究する魔法農林科など色々な学部がある。
学生は一クラス50人程度だが、三年目に入る前に、半数以上が退学するらしい。ただし留年しても二年間は猶予がもらえるらしいが、そこから進級できるものは稀らしい。
「えらいところにきちゃったなぁ・・・・・・」
というのが、僕の感想だ。
クラスメイトを見ても、皆とても賢そうに見える。
「おい。今年の新入生の中に、エルマ-・ノートンの弟子がいるらしいぞ。」
「俺はアーノルド・シュバイツァーの弟子だと聞いたぞ。」
あれ?エルマ-・ノートンって、あのエルマ-だろうか。もう噂になっているということか?
う~ん、考えたくないが、どこからか話が漏れているのだろうか。用心しなくては。
教室内は学生達の浮かれた会話でざわついていたが、ドアを開ける音が聞こえると一斉に静かになった。
ドアから一人の男性が静かに入ってくると、教壇の前に立った。学生達は男性の話が始まるのを、待ち構えている。
「 諸君。今日から二年間、このクラスを担当するアレックス・エイガ-です。今後、何か相談事があれば、私に言ってください。では早速ですが、プリントを配りますので目を通してください。」
彼はそう言うと、短い杖を軽く一振りするとプリントが風に運ばれるかのように各生徒の元へと飛んで行った。生徒達がプリントを手にしたのを確認すると、エイガ-先生は今後の授業や校則などについて説明を始めた。
途中で休憩をはさみながら、たっぷり一日説明を聞いて終わった。
直ぐに授業が始まるのかと思っていたので、僕はちょっと拍子抜けした。
「 ふぅ~。」
僕は宿舎の自分の部屋に戻り、机に教科書などを置くと一息ついてベットへ寝転んだ。
夕食までに少し時間がある。寮の部屋は個室なので、気兼ねなく落ち着ける。
ベットから起き上がると、部屋でお湯を沸かしてコーヒ-を入れて教科書を何冊か捲ってみた。
軽く予習をするつもりだったが、分かったような分からないような内容に、直ぐにギブアップしてしまった。
そうこうしているうちに、夕食の時間がきたので、食堂へ向かった。
寮の食堂なので大学の食堂くらいのイメ-ジで行けば、イギリスのケンブリッジ大学あたりにありそうな立派な食堂で落ち着かなかった。
席は学年ごとに座る列が決められていて、加えて各自の席も決められていた。どうやら部屋順のようだった。案内されたテーブルの上には、部屋番号と名前が記入された紙が置いてあった。
学生達が席に着くと、給仕達が次々とテーブルの上に大皿を運んできた。
学生達は順番に大皿から自分の食べる分だけ取り分けて、皿を隣の席の学生へと渡す。そうやって順番に皿を回していくので、自然と生徒達の間に会話が始まる。
自己紹介から始まって、出身はどこなのか。どこの学科に入りたいとか。将来は魔法で何をしたいか等々。皆僕と同じ年なのに、随分しっかりしているなぁと感心することばかりだ。
僕はもっぱら聞き役に徹した。この世界の事を、鉱石の国にいた頃に習ってはいるが、詳しい事は分からない。常識外れな事を下手に喋って、ボロがでないか不安だったからだ。
異世界人とばれて、騒がれるのだけは勘弁して欲しい。他人に注目されるのは、僕は嫌だ。
静かに穏やかに、学生生活を送って卒業したい。
「 君、名前変わってるね。ノブユキって言うの? 」
ギクッ。僕の右隣の生徒が、突然話しかけてきた。
「 あぁ、よく言われるよ。」
チラッと彼のテーブルの上にある名前を見ると、″クリフ・オルコット″と書かれていた。
「 僕はクリフ・オルコット。隣の好で、これからも宜しく。僕達、偶然同じクラスなんだ。 」
「 へ、へぇ~。そうなんだ。ごめん。気が付かなかった。」
クリフは柔らかく微笑むと、
「 君は前の方の席だけど、僕は後ろの席だからクラスメイトが良く見えるんだ。」
と言った。そうしてクリフと当たり障りのない世間話をしながら、夕食を食べ終わった。
クリフとは部屋も隣同士なので、一緒に部屋へ戻った。部屋の前まで来ると、
「 食事の時間に遅れると、食堂の中には入れさせてもらえないから、遅刻は厳禁だよ。じゃ、おやすみ。 」
クリフがそう告げると、僕も教えてくれてありがとう、おやすみと返事を返して自室に入った。
クリフとの会話は、緊張した。隠し事をしているというのは、こんなにも落ち着かないもんなんだと実感しつつ、これから続くのかと思うと、ちょっと気が滅入ってきた。
偽名を使った方が、良かったかなぁ・・・・・・。くそ-!考えてもしょうがない。明日も早い。とにかく、寝てしまえ。
僕は簡単にシャワ-で済ませるとベットに入って眠りについた。




