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異世界賛歌~貧乏くじ聖女の異世界革命記~  作者: ArenLowvally
あまりにも、よくある話。
53/86

第五十二話:異世界で改めて講義を受けます。

勉強するにも、体力って必要ですよね。

新しいことを覚えたり、教えてくれる人の話を聞いたり、板書したり。

そう考えると、義務教育ってある種の訓練場なんだなって思います。

話を聞きながらメモを取るとか、集中して話を聞くとか、当たり前に出来るように訓練する場所。

過ぎた今だから、改めて義務教育受けてぇ~って思います。


 週が明けて、新しい講師が来たようです。流石、お仕事が早い。人が変わったからか、私も一緒に講義を受けてもいいようです。またしばらくフラーディアには顔を出せなくなりましたが、みんななら私がいなくても問題ないでしょう。私の持つ知識ありきのコンチータやスヴァンテ様がちょっと困るくらいですかね。だからといって、いない間何もしないなんてことはないでしょうから。お昼に顔を出すことにして、講義の方を優先させてもらいます。快く送り出してくれたみんなには感謝ですね。

 講師の方は前にメリッサを通して参考書づくりをお願いした夫人でした。講師ができるよう、ある程度準備を整えてあったところに、参考書づくりもやっていたので、準備は万全なようです。なんなら、週末って言ってたはずの参考書も一部できているということで、それを使っての講義になりました。


「前の講師よりわかりやすくていいわね」

「うん、参考書がある分、話聞くのもつらくない」

「やっぱり頼んでおいて正解だったね、参考書」


 小休憩中、明香里と成美とお喋りします。私たちの理解度がどれほどかを確認するみたいな講義だったっていうのもあるとは思いますが。でも確かに2人の言う通り、今回の夫人の教え方はすごくわかりやすいです。参考書っていう補助もあるし、何より贔屓しない。彼女の講義を聞いていると美雨たちの講義をしているだろうあの夫人ってめちゃめちゃ贔屓してたんだなぁって思います。

 マジで、お気に入りの相手にだけ講義するんですよ。で、授業の進み方がそこ基準だから、もし躓くと全く進まなくなるんですよね。これは確かに、大勢を相手に講義しなきゃならないアカデミーはクビになるわ……っていう。まぁ、私は早々に手を離されたので、あまり被害には遭いませんでしたけれど。


「わからなかったら後で個別で聞いてっていうスタイルよね、普通は」

「美雨も隼も、自分が贔屓されてるからって遠慮なく授業止めてたもんね」

「関連事項だから黙って聞いてたけれど、雑談も長かったのよ、あの人」

「そうそう。宗士も面白がって聞こうとするしね」

「あー、高校のときいたなぁ、授業に関連した雑談始めたら止まらなくなる先生。で、クラスメイトも雑談させようって煽るんだよね」

「結局は講義が面倒だって思うのはわかるわよ。でもねぇ」

「向こうでやってた時にはあんまり考えてなかったけれど、義務教育作るのに何したらいいだろうって調べてったら、わかんないことだらけだったんだよね。まず、この世界のアカデミー? の制度がよくわかんないから、義務教育をどう作ればいいかがわかんない」

「なるほどね。確かに、この世界の教育制度を先に知らないとならないね。その辺り、やらなかったの? それとも?」

「やったけれど、雑談の方が多くて詳しい制度、結局わからなかったのよね」

「うん。こういう参考書もないから、復習のしようもなかったし」

「侍女とか執事とかに改めて聞くっていう手があったと思うけれど」

「『夫人の仕事を横取りするつもりはない』ですって」

「あー……、そっか、そうなるのか。私、全然気にしないでガンガン聞いてた」

「だからアレン、最初からわかりやすくあの人の目の敵にされてたんじゃない?」

「かもね。仕事は仕事でやってもらうけれど、それと自習で人に聞くのは違うと思ってた。こっちの世界だとあり得ないんだね」

「っていうか、他の人に聞いてなくなる程度の仕事なら、もっとできる人にお願いしたいよね」

「そうね。こんなことならアレンみたいに好きに聞いて回ればよかったわ」


 情報収集はどんな世界だろうと必要でしょう。生きる為に一番利用価値があるのは情報ですから。だから何もわからない世界で色々聞いて回って情報収集するのは当然だと思います。それで仕事取られたとか言われてもなぁ……、って感じです。むしろ、そこから更に情報を乗せていけるかどうかが腕の見せ所だと思うんですが。いや、そういうことを考える人なら贔屓したりはしないか……。2人はよっぽど迷惑してたんですね。離れたから、迷惑だったって今気付いたのかもしれませんが。


「そもそもこの世界、これはこの人の仕事だからっていう固定観念硬すぎない?」

「それが階級制度ってやつなんだよ。決められた枠組みの中で如何に勝負するかっていうのがこの世界の標準」

「だから余計、差別意識が強いのかな?」

「たぶんね」

「少しくらい頭柔らかくしないと可笑しなことになるわよ」

「そうならないように、異邦から人を呼んで歪んだところを直してもらうんだよ。新しい技術を取り入れて、外側から見ておかしいってところを指摘してもらう」

「セカンドオピニオン的な?」

「うーん……、そんな感じかもしれない」


 いや、どうなんだろう、違うかもしれない。先に診察したの誰だよ。……そういう話でもないか。まぁ、内側からじゃわからないことを外側から指摘してもらって直していくっていうのは、どんな世界だろうとどんな業界だろうとある話ですからね。それが今回、世界単位の話であるだけであって。現役が引退する前に次の異邦人を呼んで、交代するのにも理由があるんですね。ただこの世界にないものを仕入れるだけが目的ではない。色々とあるものですね。

 休憩終了だと言われて、改めて正面を向きます。講師の方の態度を見ていると、私のことを良く思っているわけではないようですけれど。でも、美雨たちの相手をしている夫人が匙を投げた相手もちゃんと面倒を見ることで対抗しているのかもしれませんね。家名なしだからといって、異邦人への教育を放り出すような真似はしないとアピールすることに意味があるのかはしりませんが。まぁ、彼女たちには彼女たちの戦いがあるのでしょう。蚊帳の外でいていいならば、それに甘えて私は普通に講義を受けさせてもらいます。


「では、先ほどの続きから」


 夫人の言葉に、改めて参考書を開きます。本当、これ一冊あるだけでかなり違いますね。先月の講義の板書を集めたものと見比べながら復習もできますし。最初からこういうのを作ってもらっていればよかったと思います。次の異邦人が来るのは50年後ですけれど、その時に来る子達が困らないように、スヴァンテ様に参考書の有用性をプレゼンしておきましょう。明香里と成美の意見もあれば通ると思います。何事もこういう有用なものがあって発達していくものですからね。

 自分がやったことがこうやってちゃんと結果として反映されるとちょっと嬉しくなります。何がどうつながってくるかわからないなら、やっぱり私は私のやりたいようにやりましょう。そのためにもまずは、この講義をしっかり聞きましょうか。


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