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第十一話 1937-1937 孤立化する日本

日本は孤立化の一途をたどり、中国情勢はますます混迷化を深めます。





昭和十二年九月



政府が一連の中国の事件に関して、支那事変と改称したと発表した。

もはや、中国の一部での局地紛争に収まらなくなったのだろう。



九月五日、帝国海軍は全中国沿岸の封鎖を宣言。

こんな事をしたら他国の反感を買わないだろうか?



九月十三日、国民党政府が日本軍の行為を国際連盟に提訴。

無理やり戦争に引き込んでおいて、自分たちの行為を棚に上げて国際連盟に提訴。

なんとも納得がいかないが、これが彼らのやり方なのだろう。



九月二十八日、国際連盟総会で日本軍による中国での都市空爆に対する非難決議。

日本の言い分は殆ど通らず日本の孤立化は進んでいく。


日本陸軍は先月末の上陸以来、九月の末に至るまでの一月で、二千五百名を超える戦死者を出し八千名近い負傷者を出したのだ。


虐殺された数百名の邦人の報復にそれに十倍する戦死者を出してまで、中国で戦争を遂行することの意味にふと疑問を感じた。



今月、審査中であった十試艦上攻撃機であるが三菱との競作の結果、中島の案が九七艦攻として採用が決まった。

支那事変の悪化に伴い軍備増強が加速しているように思う。





昭和十二年十月



ドイツ人技師のリヒトが同じ出向組のドイツ人で好評の店が出来たと一緒に行くことになった。

場所は銀座で店の名はローマイヤ。

日本でこんな本格的なドイツ料理が食べられる店があるなんてと喜んでいるそうだ。


聞けばこの店をやっているローマイヤは先の大戦で捕虜として日本に来て、日本人と結婚してそのまま日本に残って店をやっているらしい。

ドイツで修行した本格的な料理人らしく、確かに食べた料理は本場の味だった。


私もロシア料理のいい店を探そうかな。

日本で白ロシア人と呼ばれている亡命ロシア人が居るのだが、彼らがやっている店が美味しいらしいのだ。


リヒトとドイツ料理を食べた翌週、神戸に家族旅行に行っていたフランツが神戸土産を買ってきた。

なんでもすごく美味しいパン屋にケーキ屋があったとかで、バームクーヘンを買ってきたのだ。

一つ貰ったので家で妻と食べたが実に美味しかった。

今度の休暇に職場仲間でフランツお勧めの店に行きに神戸まで行くそうだ。


ちなみに、フランツは再び今度は熱田の温泉宿に暫く旅行に行くらしい。


旅行ばかりで仕事してるのかと思ったが、旅先で仕事してるそうだ。

どこかの文豪みたいなやつだな。

しかもそれが日本に来た条件だっていうんだからなんともはやだ。

しかし、リヒトがいうには彼はかなり優秀なやつらしい。


今月、ルーズベルトが日独の様な紛争国を隔離すべきだという演説を行った。

ドイツのナチが行っている政策と日本はまるで異なると思うのだが、米大統領閣下には同じに見えるらしい。

私が渡米した時に感じた限り、米国人の多くは特に日本に悪い印象は持っていなくて、レンチェラーを見ても戦争を望んでいるとは思えない。

しかし、レンチェラーが資本提携の時に危惧していたが、私の知る歴史では日本は米国と戦争しているのだ。

だが、それを知っていたところで一人の技師に過ぎない私にできることなどなにもない。




陸軍は新たに採用した96式戦闘機に試験的に搭載しているM2重機の制式採用を取り決め、中央工業にライセンスを取得させ少量から生産を始めることになった。





昭和十二年十一月



妻が妊娠していることが解った。

これで無事出産すればやっと親に孫が見せられる訳だが、このまま行くと戦時下に産まれることになりそうで不安を感じる。


今月、日独伊防共協定が成立した。

日本もめでたくナチのお仲間ということなのだろうか。


最近、ユンカースの連中の周辺にドイツ大使館のナチがうろついているらしく、前社長経由でドイツ大使館に抗議を入れいているとの事。


今月十五日にはブリュッセルの国際会議で日本に対する非難宣言が採択された。


本当に上海に居る外国人は何を見ているのだろうか。

英字新聞では結構客観的な記事も見られるというのに、全く理解できない。



中国で最近ソビエト製の戦闘機が見られるようになってきたらしい。


機種はやはりI-14戦闘機、それにSB爆撃機。I-14は頑丈で7.7ミリ機銃二挺しか装備していない91式戦闘機や95式戦闘機では中々撃墜できないらしい。

幸い被撃墜も少ないようではあるが、新しい97式戦闘機の実戦配備が求められていると聞いた。

しかし、97式戦闘機も武装は似たようなものなのだが…。





昭和十二年十二月



熱田の家族旅行から帰ってきたフランツが新しい図面を提出する。

それを元に試作エンジンが作られ、試した所1340馬力だった。

1400馬力には到達しなかったが、最初のモデルが1000馬力だった事を考えると、十分な性能だと思える。

フランツ曰く、ここは仕事を邪魔する人が居ないし自由に仕事が出来るから仕事が捗るそうな。

ただ、1400馬力まではまだ時間がかかりそうだとのことで、今の時点の新しいエンジンの試験が終わったらそれを96式戦闘機とキ31に搭載しよう。



96式戦闘機がそろそろ必要とされてくる頃です。

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