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64・シンの事情 その一

ちょっと短いです。

 とりあえず話をする為に宿屋に行くことに。

 シンの顔見知りの宿屋があるらしいが、そこは今団体客で満員状態らしく、別の宿屋を探すことにした。

 スラム近くの宿屋は安全面で不安がある為、街の中心に近い場所で探す。




 運良く直ぐに見つけることが出来たが、一泊一人金貨三枚の超高級宿だった。シンの話では、今この街の宿泊施設はほぼ埋まってる状態らしいので、手当たり次第に探したら高級宿になってしまった。部屋が広くて使っている布団などや調度品も高級で、シンは部屋に入った時から緊張しっぱなしだった。


 瑠華とシンは椅子に対面に座り、テトとリトはそれぞれの足下に、瑠華のフードから出たマリアとムツキはテーブルの上で瑠華に撫でられている。





 果実酒(成人したての者向けの飲み物、酒成分一パーセント)を飲みながら一息ついてから、シンとリトからマレッティの街に行く街道での出来事を聞いて、瑠華は気になったことを問いかける。


 「まず先になんでスラムなんかに?一時的にでもその顔見知りの宿屋にいさせてもらえば良かったんじゃないか?」

 「一日は泊まれたのですが、最近サランヴィーネの街への街道に強力な魔物が現れたみたいで、商隊などが立ち往生しているらしく、レカさんのところも宿泊客が一杯で…………」

 「頼みづらかった、と?」

 「……………はい」


 はぁっと思わずため息が出てしまう。



 スラムにはスラムの秩序がある。スラムの住人になるのならまだしも、普通の一般人がおいそれと入っていい場所ではない。

 カモられても文句も言えない。



 「あのですね、俺もスラムがどういう場所かぐらいかは知ってます。でもあそこに知り合いが居て(かくま)ってくれるというので…………」

 「知り合い?この街の?」

 「いえ、元々マレッティにいたんですが、半年程前にこちらに移り住んだ人です。小さい頃から家族ぐるみの付き合いをしていたので、信用できる人なんです」


 まぁ、リトが居たから危険は無かったと思うけど。


 「今度から逃げ込む先にスラムは選ばないように」

 「……………はい」

 「分かればよろしい。では君の事情を聞かせてもらえる?」

 「はい。事の始まりなんですが、マレッティの街はここ二年程前から廃れ始めたんです」


 話の初めから凄く重い。

 シン個人の話なのに、マレッティの街そのものが関係しているの?


 「廃れるって穏やかじゃないね。二年前ってことは、まさか邪神のせいで?」


 邪神の眷属の破壊活動のせいで、復興が絶望的になってしまった街や村がある。

 けれどそこに住む者達は諦めずに“希望”を持って生きていた。


 でもそのまま人が離れてしまった地があってもおかしくはない。邪神を倒す前はそんな話は聞かなかったが。


 でも確かこの辺りは、さほど邪神の眷属の被害は受けていなかったような……………



 「いえ、違います。ここら辺は、あまり邪神の眷属の被害はありませんでしたから。街が廃れ始めたのは領主のせいです」


 すごいキッパリ言い切った。その言葉には怒りと(さげす)みがあった。


 「領主のせい?」

 「はい。マレッティの領主であるトリロ伯爵が国王陛下と、ジルトニア皇国の皇帝と勇者様のご不興を買ったらしいんです」

 「………………国王と皇帝陛下と勇者のご不興を買った?」

 「はい、そういう話です」


 えぇ、エヴァン様のご不興を買うとかなにしてんの?ついでに勇者も。


 「それと獣王と魔王と精霊王様のご不興もだそうです」


 買い過ぎじゃね⁉


 ねぇ、本当に何したの?

 言っちゃ悪いけど、獣王と魔王と精霊王って一貴族が逢えるような存在じゃないからね?

 逢えても簡単に話なんて出来ないだろうに。


 どうやって不興を買えるんだよ?


 「理由は知ってる?」

 「………………英雄様を侮辱したらしいです」


 えぇ⁉まさかの僕絡み⁉っと、おぉ⁉テト達が一斉に反応したぞ!…………話の内容によっては、伯爵の命はないな……………


 「英雄…………様を侮辱したってなんで?」

 「詳しい情報は伝わってないんです。でも伯爵が英雄様を侮辱したのは事実だって。だから伯爵は国王陛下から見限られたし、他の貴族からも縁を切られて、マレッティの住人からも見放されました」


 …………なんか僕のことですごい大事(おおごと)になってるんですけど?僕、トリロ伯爵なんて逢ったことあったっけ?もしかしたら貴族主催のパーティーか、勇者との旅…………はないな。

 逢ってても覚えてないかも。


 それにしても侮辱ってなに?“欠陥色(けっかんしょく)”のことかな?でも今更言われたって、エヴァン様達が怒るとは思えないけど。


 というか獣王達も同じ理由?


 「獣王達も英雄………………様を侮辱したから?」

 「そうですよ。それぞれの王にとって、英雄様は特別な存在らしいですから」


 うん、それは知ってる。だって僕にとっても、彼等は大切な存在だからね。


 「英雄様は勇者様と同じ、この世界の救世主です。皆尊敬しています。そんな方を、ましてや亡くなった直後に侮辱するなんてあり得ません。俺も領主のことは嫌いです。でもマレッティの街は心から愛していました。だから周りの人達がマレッティを離れても、家族で頑張ってきたんです」


 …………身体がむず痒い。


 それにしてもここからシンの事情にどうやって繋がるのか。






読んでいただいてありがとうございました。


見直しする時間がない…………



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