62・護衛依頼
このまま素通りしてもいいだろうか?
結果的に冒険者達を助けた形になったわけだけど、僕が放った魔法で魔物達は消し炭になって素材すら残っていない。
報酬を貰ってもいい結果ではあるけれど、僕は進む道のりの障害物を排除しただけだから。
少女に助けてと言われたといっても、直接言われた訳ではないし、僕の勘違いかもしれない。
だからこのまま素通りしても、何の問題もない。
何が言いたいかって?
今のこの状況に対する逃げ道かな?
今現在、瑠華は面倒くさい状況に陥っていた。
魔物も逃げたので馬車に近付いて行った。
別に報酬を貰うつもりはなかった(あわよくば魔物がボア種だったから肉でも貰おうかと思ってはいた)が、後十メートル程の所でその気持ちは霧散した。
少女の父親?は放心していたが、瑠華に気付くと勢いよく顔を向けてその顔つきを変えた。
目が爛々と輝いていた。
なんというか数日何も食べずにいた状況で、目の前に肉が現れたようなそんな目だ。
嫌な予感がするというものだろう。
思わずテトに、馬車を避けて行こうと言おうと視線をテトに向けた。
だがそれを逸速く察した父親はがばりっと立ち上がり、瑠華達に近付いて通せんぼするように、前に仁王立ちになって頭を下げて、また勢いよく上げた。
「冒険者殿!助けて頂きありがとうございました‼」
「………………いや」
「つきましては何かお礼をしたいと思います‼」
「……………気にしな「なので是非とも‼わたくし達と共にコッシュトーへ行きましょう‼」
なんか言葉がおかしくないか?
「……………僕達はサランヴィーネに行くから、コッシュトーの街には行かないんだ。悪いんだ「是非!是非ともわたくし達にお礼をさせて頂きたく‼」
「……………」
誰か助けて?
「だからコッシュトーへは行かないと…………」
「お願いします‼コッシュトーへ‼わたくし達と一緒に‼」
「うわっ」
いきなり男は瑠華の足にしがみついた。未だテトに乗ったままの瑠華の足に。
「ちょっ!離せ!」
「いいえ!離しません!どうかわたくし達を守って下され!冒険者殿‼」
話が変わってる⁉
「だから!コッシュトーには行かないんだよ!」
「ならば行くと言って頂けるまで離しません!」
自分勝手だな‼流石にドン引きだよ⁉
流石商人‼
「……………どうするのだ、主よ?無視して行くか?」
「おお‼こちらの魔物殿は話すのですか⁉これはなんとしても逃してなるものか‼」
心の声が漏れてますよっ⁉
「はあ、もういい。疲れた。話は聞いてやるから離して。テト、魔物の警戒よろしくね」
「ああ」
「離した途端に逃げませんか?」
「そんなことはしない」
とりあえずテトから降りて、男と向き合う。
馬車では残っていた冒険者達が傷の手当てをしたり、死んだ仲間の後処理(装備を外して火の魔法で遺体を焼く)をしたり、少女が散乱した荷物を片付けていた。
「……………娘を手伝った方がいいんじゃないのか?」
「……………逃げないで下さいね?」
瑠華に念を押し、男は娘に向かって走って行った。その後ろ姿を少し離れた位置から、瑠華はテトと共に見ていた。
「コッシュトーの街に行くのか?」
「リトと合流する為と思えば」
「無理矢理な納得だな」
テトの言葉にため息が出てしまう。
それから少しして男は戻ってきた。娘を連れて。
「先程は本当にありがとうございました。お陰で助かりました」
娘の言葉に二人が頭を下げる。
「気にするな。偶々通りかかっただけだ。で?僕にどうしてほしいと?」
先程のやり取りで、敬語で話す礼儀は失せた。若干ぞんざいな態度で話をする。
「改めまして、わたくしの名はソロウ、こちらは娘のスフィールです。わたくし達はサランヴィーネで商業を営んでる者でして、今コッシュトーの街に商品を届けに行くところなのです」
「サランヴィーネからコッシュトーに行くにしては、道が外れていないか?」
「冒険者殿はご存じないのですか?サランヴィーネからコッシュトーに行く街道に強力な魔物が現れ、通る者達を襲っているのです。ですからコッシュトーへ行くにはこうして大回りしなければなりません」
成る程ね。
「というわけですので、冒険者殿、是非ともわたくし達を護衛していただけませんか?」
「護衛ならいるだろう?確かに数は減ってしまったようだが」
「あれ等では頼りありません。現に冒険者殿が来てくれなければ、わたくし達はこの場で死んでいたでしょう。ですからお願いしているのです‼」
近い近い!顔を近付けるな!
はあ、本当に面倒だな。“あれ等”呼ばわりされた護衛達がこちらを睨んでいるし、ここでぐだぐだやってたらそれこそ時間の無駄だ。
コッシュトーまでリトを迎えに行こう。
「分かった。コッシュトーまで護衛をしてやる。報酬は金貨五枚で引き受ける。異論がなければさっさと出発するぞ」
「は?い、いえ、異論はありませんが本当にそんな少なくてよろしいので?」
「距離を考えればそれくらいだろう?」
ここからコッシュトーまで二日と少し、Dランクならこれくらいが普通だろう。
「それはそうですが…………」
「テト、そういうわけだからコッシュトーの街に行くよ」
「やれやれ…………」
テトが呆れながらため息を吐いている。瑠華も苦笑を禁じ得ない。それに護衛達がずっと瑠華を睨み付けている。
何事もなくコッシュトーの街まで辿り着けることを祈るよ。
読んでいただいてありがとうございました。
早くリト達と合流したい……………




